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いわくつき。  作者: 山手みなと
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「いわくつき。」 カットマネキン

[第4話] カットマネキン


私の仕事は美容師。

気付けば勤続15年で、

もはやベテランの域に辿り着こうとしている。

そんな私でもカット練習は欠かせない。

時代と共にスタイルも変化しているから、毎日が勉強だと意気込んでいる。

カット練習にはウィッグが付いたマネキンを利用する。

たまに友達を練習台にする事はあるが、ほぼマネキンの利用だ。

ウィッグは人毛と人工毛から作られており、人工毛は化学繊維。

人毛は名前の通り人間の毛だ。

よくカット後に床を掃いている毛はほぼ再利用される。一部はウィッグとして加工される。

カットマネキンというと、生首のマネキンにウィッグを被した容姿だけに怖がられる。

顔は描かなくてもカット練習できるんじゃないか疑問は抱くが、怖がられるのは何か嫌な感じがする。

そんなカットマネキンには、何かと都市伝説がある。

人毛を使用しているだけあって

何かの念がつく事はよくあるそうだ。

そんな念に翻弄される彼女の話である。

美容師といえば、月曜に研修を行うため忙しい。

その夕方、ウィッグを片付けていたら他と比べてやたら髪の伸びが早い物が目に入る。

「先週見た時よりなんか長いな...」

人毛の場合、糊の成分で多少伸びるのは聞いた事がある。

「それにしても長い...」

翌週、見直すと、床に到達するほどに伸びていた。

長い人毛にはヘアーバンクと言って綺麗に揃った髪は寄付されて、カツラ用途として再利用される意図があるのだ。

しかし、中にはこの世を去ってしまった人の髪を知らずして利用している物もあるそうで...。

「この伸びる現象はそれに当てはまるな...」

気になった彼女は、髪の出処を探ることにした。

よく考えると、髪には人間学的にDNA情報が含まれている。だから念があった場合は現象について反映されてもおかしくないと思った。

しかし、その探る行為によって

彼女は危険な扉を開けてしまったのだ。

彼女はどれが怪しい人毛なのか、美容室の備品棚を調べる。

見分けるのはニオイ。

生きた髪は体臭とまではいかないが人のフェロモン的なニオイ。

加工時に洗浄しても香りは残るらしい...。

生きてない人の髪は、妙なニオイが残る...。

だから洗浄して無臭になった髪は大丈夫だということになる...。

妙なニオイを嗅ぎ分ければいいんだと答えが出た。

よく嗅ぎ分けると、怪しい2個が見つかった。

ウィッグのみを取り外そうとすると、なにやら女の叫び声のようなものが微かに聞こえてきた。

1個目を更に力を入れて外そうとしたらマネキンの首が落下した。

拾おうとしたら、マネキンの目が動いてこちらを睨む。

2個目は外れたが、外した拍子に床に落としてしまい、汚れてしまった。ホコリを払おうとしたら急に顔に向かって飛んできた。

目の前は真っ暗で息苦しい。

髪の毛で口元を塞がれている。

「やめて!」と叫ぶと髪の動きは止まった。

やはり思った通り2個とも、念が宿っていると確信した。

その髪は番号で管理されているのを知っていた彼女は箱の印字をメモした。

ネットで番号を照会すると、髪の出処が明らかに。

1個目は等身自殺したOLの髪。

2個目は医療ミスにより去ってしまった女子大生の髪。

そんな裏がある事を知らずに世に出ているのは良くないな。

これをそのまま放置していたら、知らない従業員は必ず危険な目に合うことが目に見える。

明日、お祓いとお焚き上げをしてもらおう。

翌日、無事に儀式を済ませると、美容室では無事に皆んなが働いている姿を確認。

ホッと胸を撫で下ろした。

しかし、2個の髪が不足した事になり、自動的に補充されることに。

実態を知らない業者は、どんな髪を送ってくるのか?

いわくつき。の髪ではない事を祈りたい。


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