「いわくつき。」 酷道
[第18話] 酷道
私の仕事はフォトグラファー。
小さい頃から景色を撮影するのが大好きで、気付けば趣味が職業になっていた。
私が担当している撮影の仕事は、史跡や産業遺産など温故知新を感じられる景色が対象になっている。
最近では山岳地域に存在する廃線になった旧国道を撮影する仕事が舞い込んできた...。
廃線だけに道は荒れ果ていて、人の手が及んでないため雑草が生い茂り、車ではとても入れないような状況...。
仕方なく歩いて入るしかないような場所だ...。
そんな場所になってしまった道を " 国道 " ではなく私は " 酷道 " と名付けている。
そして、人が寄り付かなくなった場所は幽霊の目撃談などの都市伝説が広がっている...。
廃墟と同じで誰にも利用されなくなった場所というのは霊の溜まり場や通り道になると言われているのは本当らしい...。
それを知らずに足を踏み入れたら最後、無事に帰れるかどうかは保証出来ないようだ...。
私自身、霊感が無いから都市伝説はあまり信じてはいない...。
しかしある日、運命的にそんな幽霊の噂がある場所で仕事することになってしまうとは...。
その日、私は同僚の女の子と一緒に撮影スポットに訪れた。
私がカメラマンで、同僚はサポート役として同行する形。
仕事内容は、昔あった国道の痕跡と歴史を辿るという記事に掲載するための撮影業務だ。
初めての場所だけに迷わないよう現在の地図と古地図の2つを手に私達は山奥へと歩を進めた...。
そこは脇道になっていて、現在の国道とは離れていくように昔の道らしき跡が続いている...。
しかし、なぜか途中で行き止まりになっていて、その先は断崖絶壁だった...。
とりあえず撮影をしたんだが、あまり撮れ高的に弱い感じがしたのでもっとインパクトの強そうな場所に移動しようと考えた。
仕方なく引き返すか...。
他のルートを探すため、来た道を引き返そうとした瞬間、一緒にいたはずの同僚の姿が無い........。
辺りを見回すと、なぜか同僚が岩壁に立っている...。
さっきまで側にいたのに、いつの間にか移動していた...。
今さっき断崖絶壁で危ないと確認したばかりなのに、ゆっくりと着実に前へ一歩ずつ歩いている...。
このままじゃ確実に落ちる...!
私は急いで彼女の元に走るとギリギリのところで体を抱き寄せ、間一髪で助けることができた。
彼女は、なぜか道が続いているように見えたと言い、引き返す前に知らないおばあちゃんに声を掛けられたという...。
親切に道案内してくれるみたいだったから、ついていったらしい...。
「私が助けなかったら海に落ちていたんだよ!!」と告げると彼女は我に返り、しばらくそこから身動きが取れなくなってしまった。
水分を摂ったら少し落ち着ついたようで、彼女は正気に戻った。
しかし、まだ " あの現象 " が理解できてないようだった。
とりあえずこの場所は危ないから、もっと安全な場所に移動して撮影しようという事になった。
その後、道の先が断崖絶壁ではないことを確認しながら安全なスポット選んで何とか目的の景色の撮影は終了した。
無事に仕事を終わらせた私達は会社に戻った。
社長に今日の出来事を話すと、
「昔この場所に知り合いが撮影に訪れた際に、幽霊に出くわしたらしいんだ」
「幽霊の後をつけると、行き止まりのはずが道が続いていたそうだ」
「しばらく歩いていたその時、道の行き止まりに来たタイミングで小石に躓いて転んだ。ふと、足元を見たら、断崖絶壁に落ちる手前だった」
「草が生い茂っていて、道が続いているように見えたのは幻覚だったかもしれない」
「もし躓いていなかったらと考えたら恐くて、二度と撮影に行かないと決めたらしい」
「今では落下防止の為に、立ち入り禁止の看板が設置されているから心配はないそうだ」
「その道は以前、きちんと整備された国道だったが、都市開発に伴って道幅が狭いことを理由に廃止になったそう」
「その道の脇には、戦時中の兵士の亡骸が眠っているらしく、工事関係者は知らずにその周辺の土を新しい道の増設のために掘り返してしまったんだ」
「直ぐに新しい道が整備されると、旧国道の入口は閉鎖になった。閉鎖後、兵士が眠っていたであろう場所で幽霊が目撃されるようになった」
「そのあと、なぜか分からないがその崖から投身自殺する人が出てきて、ついには " いわくつき " の場所となってしまったらしい」
「しかも、掘り返した土については新しい国道の法面に存在しているようで、その場所は兵士の幽霊が目撃されていて、アクシデントも発生しているんだ。」と社長は長々と説明した。
なぜそこまで詳しいのかは疑問だが...。
やはり " いわくつき " だったんだな...。
でもその前に、危険を承知でなぜあの場所に私達を行かせたのかが引っ掛かる...。
社長いわく、土地の所有者に撮影の許可を取る際に、あの場所は安全か聞いたら、「立ち入り禁止の看板が設置してあるし、供養はしてあるはずだから大丈夫だ」と言われたから、特に説明せずに撮影を私達に頼んだらしい...。
私達は一応納得したが、とりあえず確認した上での事だから社長を責めることは出来ない...。
次の日、別の地域にある旧国道を訪れた。
今日の仕事は私一人だが、特に霊現象は起こらず、通常の撮影を終える事ができた。
意外とスムーズに終わったせいで時間が余った。
せっかくだからと、会社までの帰り道に昨日訪れた " あの場所 " に寄り道をすることにした。
あくまで確認の意味で...。
よく見ると、立ち入り禁止の看板が無い...。
行き止まりのギリギリまで行き、下を覗くと、看板と共に倒れている人影が...!
「もしかして自殺かもしれない...!! 」と通報しようかと思ったが、変に疑われても困るし、帰りが遅くなると会社に寄り道がバレちゃうから引き返えす事にした。
帰り際に気になってもう一度下を覗いてみると、人影が無い...!
さっき居たよね...?
急に寒気が走った瞬間、茂みの奥からお婆さんらしき姿がこちらに向かってくる...。
怖くなり急いで車に乗り込み、アクセル全開で逃げた。
霊感が無いのに、あのお婆さんはこの世のものではないような気がした...。
社長からあの話を聞いたから幽霊だと思い込んで幻覚でも見たのかな?
あれが本物の幽霊だとしたら...?
もしかして、実際は供養していないんじゃないかと思った。
そしてその夜、夢にあのお婆さんが出てきた。
お婆さんは、「どこにあるの?元に戻してくれ!」とメッセージを伝えてきた。
もしかして、お婆さんは兵士の亡骸と何か関係があるんじゃないかと思った...。
社長の話し通り、新しい道にある法面の土に兵士の亡骸が埋まっているんじゃないかな?と思った。
ただ私の考えだから、第三者には理解してもらえないはず...。
" 供養してもらうには、きっかけが必要かも? " と考えた私は、同僚に幽霊についての出来事を話した。
私は彼女に、きっかけ作りに一役買ってほしいと話を持ち掛けた。
それは、" 新しい国道の法面に幽霊の格好で夜な夜な立ち尽くす " というもの...。
彼女は最初は乗り気ではなかったが、私のお願いとあって幽霊役を買ってくれた。
そして、幽霊役が夜な夜な立ち尽くすこと2週間...。
ついに彼女達の計画は身を結んだ。
瞬く間に、幽霊の事がネットで話題になり、法面には何かあると話題になるほど社会は騒然となった。
最終的に供養の依頼がたくさん寄せられることに繋がった。
流石に市役所が動き出し、法面を掘り起こすことになった。
その結果、兵士の亡骸と共に備品なども一緒に出てきた。
なぜ、ここに?と業者は困惑していた...。
だが、心配することはない!!
すでに(私が書いた)ネット情報には、この土はあの場所から掘り起こした土である事実が書かれているため、土を本来あるべき場所に戻す作業は予定されていた。
計画通りに土を戻し、法面と旧国道の2ヶ所で供養が無事に行われた。
兵士の亡骸と...お婆さんの幽霊...?
私には何が関係しているのか分からなかったが、それは数年後に判明することになる。
DNA鑑定と昔の新聞記事から調べた結果らしいのだが...。
お婆さんは、先祖に当たる兵士の亡骸を探して供養したかったが、結局見つからず、最後には行き止まりに気づかずに断崖絶壁に転落してしまったらしいのだ。
だから先祖の供養をしてほしいという、念が残っていたためにお婆さんは幽霊となって現れたようだ。
私にとって、当時は幽霊に取り憑かれてはいなかったが、メッセージを受け取ったのは初めてだった。
幽霊に扮した計画もうまくいったし、最終的にお婆さんの無念を晴らす事が出来たし、良かった。
安心する一方で私は、また行き止まりを見つけたら二度と撮影には行かないと決めた。
それは新入社員の若者に任せるとして...。




