「いわくつき。」ビデオデッキ
[第14話] ビデオデッキ
ある日、彼女はアウトレット家電の特売会イベントに出掛けた。
最近はレトロブームが流行っているせいか昔の家電が注目されていている。
最新デジタル家電の時代ではあるが、昭和家電はまだまだ現役で使える物が実は眠っているのだ...。
当時子供だった大人達が幼少期を振り返るように懐かしい想いで家電を修繕して販売しているのが、このイベント。
現代の記憶媒体はディスクが主流だが、40年前ほど昔はビデオテープに記録していた...。
そんな昔の家電は、電気屋さんには置いてないが、個人所有ではまだまだ現役で活躍し続ける物があるようだ。
ちなみに、ビデオデッキを作動するには赤黄白の3色端子を繋げばデジタルテレビでも映像を見ることが出来る。
そんな今日のイベントではビデオデッキを懐かしんで見つめているのは彼女だけではないみたいだ...。
自分と年の近い男達が、それに群がり、どんどん売れていく...。
あんだけたくさんあったのに、気付いたら最後の一台...。
よし!周りには人がいないし...。
ここは流れに身を任せて、 " 残り物には福がある " というのを信じて思い切って手に取った!!
それは特売会で一番古い機種らしく、レアらしい...。
しかも重厚で重たい...。
お会計時に店員が、「中にビデオテープが入っておりますが、元々付いていた物なので1本サービスだと思って頂けたらと...」と、一言...。
やはり、 " 残り物には福がある " と思って喜んだ。
早速、帰宅してビデオデッキをテレビに繋いでみた...。
押し入れには昔のテープが眠っていたので動作確認の意味で再生してみようと思った。
まずはサービス?のビデオテープを取り出す...。
サービスにしては、なんかタイトルのラベルを剥がしたような痕跡が...。
「まぁ、それは後で確認するとして...」
「先に昔のビデオを観ようかな!!」
デッキ自体30年以上経過しているから、きちんと動くか心配していたが、思ったより保存状態は良くて無事に動いてくれた...。
幼少期に録画したお笑い番組や音楽番組を観ることができ、懐かしさのあまり涙が...。
「あの頃に戻りたいよね...」
そんな事を考えながらビデオ鑑賞の時間を楽しんだ。
「あっ、そういえば!」
「元々デッキに入っていたテープを確認しなきゃ!」
いざ再生してみると...。
何も映ってない...。
「だって生テープだからね...」
" やっぱ映ってないじゃん! " と諦めて停止しようとした瞬間、
妙な映像がぼんやりと浮かんできた...。
なんかホームビデオ?みたいな感じで、どうやら歩きながら撮影している映像のようだ...。
「温泉旅館?旅の記録?それとも...?」
しばらく渡り廊下を歩いて、ドアを開けると、和室に辿り着く...。
和室には和服姿の女将らしき人が背を向けて正座している...。
そこで映像が終わる...。
時間にして数分...。
何を記録したかったのかよく分からない物だった...。
次の日、あのビデオが妙に気になってまた再生してみた。
やはり同じ映像...。
そりゃ、そうだな...。と思って電源を切ろうとした瞬間...。
最後に女将の頭が少しだけ動いたような...?
次の日も妙に気になってビデオを再生する...。
また同じように映像の最後で...。
今度は女将の頭が後ろを振り向こうとしているように見えた...!!
その時は、ただの錯覚だろうと思っていた...。
だからあまり気にしていなかったせいか、気付いたらビデオの事を忘れて1週間が経っていた...。
ある週末の夜、あのビデオの女将の姿が異常に気になり再生することに...。
やはり最後の女将は後ろを振向こうとしている...?
次の日もビデオを確認すると、今度は女将の頬が見える角度に変化している...。
なんか観る度に角度が変わっていくような...?
翌日も映像を確認して、「もし顔が完全に振り向いていたらどうしよう...?」
なんて、変な興味が湧いている自分がいる...。
今度は女将の鼻が見えている...。
「これ以上見て本当に振り返ったら...?」と思ったら急に怖くなってきた...。
私は気になって、この現象をネットに書き込んでみた!!
すると、いろんなコメントがたくさんあり...。
" それ、絶対最後まで見たらアカンやつだよ! "
" 見る度に角度が変わると有名なビデオじゃん! "
" 完全に顔を見たら、恐ろしい事が起こるらしいよ! "
あまりに恐ろしい書き込みに、購入した特売会の店主に尋ねてみた。
店主の話だと
「持主が昔からコロコロと変わっているらしくて本来の持主が不明なんですよ」
「5年前、ある男性がいたんだけど、そのビデオを何回も観ていたらしくて、ある日おかしくなって入院したらしいんだが、最後は病没してしまったらしい」
「それまでは元気で健康診断もオールAだったのもかかわらずにね」
「男には婚約者がいたんだけど、彼女が遺品整理していていた時、お金になりそうなものは全部売ったという話で、その一部にビデオデッキがあったそうです」
その婚約者はビデオテープがデッキに入っているのを気付かず売ってしまったらしい...。
店主が知る情報はそこまでだけだけだった...。
「なら、私もおかしくならないうちに、ビデオを見るのはやめよう。最後まで観なければいいんだからね」
そう決めた彼女はビデオを取り出し、箱にそっとしまった。
ある日の夜、疲れて寝てしまったようで、気付いたらテレビが砂嵐になっていた。
つけっぱなしで寝ちゃった...。
電源を切ろうとした瞬間、あのビデオの映像が始まった。
おかしいな〜。
テープは抜いたはずなのに...。
デッキの時間表示も勝手に進んでいて...。
早く電源を切らなきゃ!!と、リモコンを探すが見当たらない...。
早くしないと女将が振り向いてしまう...。
画面には、以前より角度が増した振り向き方をしているのが見えた...。
急いで電源コードを引き抜くと、霊現象は収まった。
だって、目が合ったら終わりだもんね...!!
やはりこれは、" いわくつき " なんじゃない?
ビデオデッキごと取り憑かれているかもね...。
ビデオを抜いても、ビデオが存在する限り恐怖は終わらない...。
彼女は次の日、急いでアウトレット店に買取をお願いした。
ビデオデッキにテープを入れたまたにして........。
その後、彼女の身には何も起こることはなく、平穏な毎日が続いていた。
その1年後、友人と電話する機会があり、ふと友人があのビデオを観たという話をしてきた。
「この前、アウトレット店に行ったら古いビデオデッキがあって思わず買っちゃったよ!」
「そしたらビデオテープがおまけで入っていたの!」
「生テープだと思ったら旅館が映っていて最後に女将らしき人がこっちを振り向くの!」
「そこで映像は終わったけど、内容がよく分からなかったわ...」
「それ、顔を見ちゃダメなやつなんじゃない?」
「何回も観たの?」
「そうね〜、7回は観たかな?」
「それ、完全に取り憑かれるんじゃない?その前に手離した方がいいよ!」
「それ、実は昨年私が買取してもらったやつなの...」
「私もビデオ観たけど、恐くなって流石に最後まで観なかったよ」
「よく調べたら、" いわくつき" だと判明したから売ったんだよ...」
友人はあまり心霊や都市伝説を信じないタイプで、ある意味無頓着で何が起きても気にしない性格...。
ある意味、心配しなくてもよさそうな気がしないでもない...。
なんて思っていたが、数日後、その友人が謎の病で入院したという
知らせを聞いた。
やはりネットの書き込み通り、女将に顔を見られてしまったのか...。
しかし気になるのが、この話を知っていてネットに書き込みがあると言うことは、それだけ体験者がたくさんいるということになる...。
でも、完全に振り返った顔を見た人の体験談は書かれていない...。
女将に顔を見られたら、最後ということか...?
友人は完全に顔を見てしまったのか?
振り向いた角度によってはどうなってしまうのか心配だが、無事に退院する事を願うばかりだ。
しかし数日後、悲しい知らせを受てしまう...。
友人は完全に見てしまったか...。
やはり、" いわくつき " に出会っても、私みたいに早く気付いて手離さないといけないのがよく分かった。
もし友人の連絡が早ければ、私が行動を止めて助ける事が出来たかもしれないと悔やんだ...。
しかしあの時...。
残り物に福があると思いビデオデッキを手にした私は、そのビデオの念に既に導かれていたんだと思った。
私は除霊や供養の仕方は知っているけど、危険を犯してまではやれない...。
手っ取り早い方法は、 " 手離すこと " である!
仕方ない事だが、霊現象自体はなくならずに世の中を彷徨い続けるのである...。
そして数ヶ月が経った今...。
あのビデオデッキとビデオテープの行方は知らないが、どこかで再生されていないことを祈る彼女であった...。




