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異世界転生したら、美少女たちに殺されるほど愛された件  作者: 辻田煙
第2章「狂竜、ご令嬢ルーシー」
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第16話「捜索隊」

 夕方、学園の前にいつも通りつけた馬車。ロルフが頃合いを見て、外で待っているとミアがやってくる。しかし、ミアの顔は浮かなかった。それに、やはりといってはなんだがルーシーはいない。下校時、一緒のはずなのに。


「ロルフ……」

「ミア。取り合えず中に入りましょう。私もお話したいことがありますので」


 涙目でこちらを見上げてきたミアを馬車へと誘導する。いつもよりも静かな彼女の周りが、余計にもの悲しさを増させる。


「うん」


 静かに馬車へ入ったのを見計らい、ロルフも続く。ゆっくりと馬車が動き始める中、ミアは話し出した。


「まずは、ミアからどうぞ」

「……ルーシーは来なかったわ。先生にも聞いてみたんだけど、連絡もなにもないみたい」

「そうですか」


 抱いている人形がぎゅうと苦しそうになる。それにしても、ルーシーの友人周辺にも特に情報がないということは、昨日の出来事は突発的なものだった可能性が高い。


「うん、あとは……。貴族街での家の倒壊だけど、その周りに住んでいる子がねクラスの中にいたの。その子は――竜を見たみたいなの」

「そうですか。倒壊した屋敷の中から出てきたと?」

「ううん。最初、ものすごい音がして窓の外を見たんだって。そしたら満月を背にして、大きな影があったらしいの。月が隠れそうなくらい、とっても大きな影。それはどうみても災害の竜にしか見えなかったって」


 竜のことは学園でも習う。ミアがまだ幼等部だった頃、怖い話を教えてあげると、ことあるごとに言っていた。

 ロルフがまったく怖がらないので途中で飽きてしまったようだが。

 それは、かつて王国が竜に襲われた話だった。まぁ、多少誇張も入ってるだろうが、おおむね史実なのだろう。

 そして、それは事件ではなく自然災害の一つとして伝えられている。竜は気ままで、何度かこの国を襲ったようなのだ。だから、下手に刺激させて被害が増えないように指導されている。

 だから、竜と言えばこの国はみな思い出す。経験したものは実際の恐怖を。経験したことないものは、教室で語られた恐怖の災害を。

 目撃の噂は確実に広まっている。ミアでも簡単に情報が入るくらいには。


「それでね、竜は迷いの森の方へ飛んで行ったみたい。その子だけじゃなくて、他の人も見てたみたいで、話してたら何人か集まってきて言ってた」

「そう、ですか。その様子だと、かなり広まっているみたいですね」

「うん。でも、ルーシーが本人だってことはバレていないみたい。そこだけはよかったわ。……ねえ、ロルフはどうだった?」


 ミアは視線を上げる。馬車はまだ止まらない。


「私の方でも、お嬢様とほぼ同じです。ただ一点だけ……、騎士団が動いています。それも蛇が」

「蛇……? それってあの特殊部隊? 噂は聞いたことあるけど本当なの?」


 貴族の間で蛇を知らないものはいない。特殊部隊なのにそこまで有名になっていいのかと思うが、きっと犯罪抑止も兼ねているのだろう。多分。詳しいことはベールに包まれている存在なのだ。


「本人たちに会ってきたので」


 殺されかけたとは言わないでおこう。また、心配されてしまう。

 炎狼の時が大変だったのだ。怪我をしたといったら、上半身を裸にされてあちこち触られた。さすがに下半身は他の執事に確認してもらって納得してもらったが。


「ええっ! 怪我は無いの、大丈夫っ?」

「サンディに協力してもらったんですよ。だから全然大丈夫です」

「サンディ……。そ、そう。で、蛇はなんて?」


 ミアはどこか苦い顔をしていた。サンディは何かと敵が多いが、ミアにまで嫌われているのだろうか? 二人とも結構似ている気がするのに。同族嫌悪ってやつだろうか?


「討伐隊を組むそうです。予定では一週間後。ですが、あくまで予定なので状況が変われば早まる可能性はあります」

「一週間……。今日は、……もう無理ね」


 彼女は馬車の外を眺め、ぽつりと呟く。すでに日が暮れてきており、街にも明かりが灯り始めていた。


「夜が近いし……、明日行きましょう。迷いの森へ」


 決定事項を告げるように、ミアは言った。本当は今すぐ行きたいのかもしれない。だが、それは自分が止めるだろう。流石にミア一人で夜に外出させるわけにはいかない。

 ミアの決断は早かった。あるいは、元からそのつもりだったのかもしれない。



「それで、なんでこの人が来るの?」


 ルーシーが完全竜化したと思われてから二日目。

 王国と外を隔てる城門前にはロルフ含めて数人が集まっていた。早朝のこの時間、各地へ赴く馬車や、反対に入ってくる行商人などで賑わっている。というか混雑している。

 砂埃が蔓延する中、ロルフ、ミア、サンディ、レイラが集まっていた。全員が目立たない様にローブを羽織っている。もちろん顔を隠して。

 後から下手に探られないための対策だった。ミアは、ここに来てすぐには迷いの森へ向かわないことを訝しがっていた。どうやら、二人だけで行くと思っていたらしい。一緒に行く人間がいると言ったあたりから、すでに若干不機嫌だったのだが――


「あら、私が来ては都合が悪い? ミア嬢ちゃん?」

「……その呼び方やめてくれない? 癪に障る」

「まぁまぁ、ミア。人が多い方がなにかといいじゃないですか。ルーシーがどういう状況かも分からないし。サンディは役に立つと思います」


 ミアとサンディは顔をつき合わせるなり、喧嘩し始めた。二人とも気が強いので、こっちがひやひやする。手は出ないだけ、まだマシだったが。


「はぁー……。まあ、百歩譲ってこいつはいいとして、その女は?」

「随分な言われようですね」


 指差した先はレイラだ。

 彼女はどこで聞きつけたのか、サンディとともにやってきたのだ。こっちに関してはロルフも知らない。

 回復役――ヒーラーがいた方が助かるので別に構わないのだが、どうやって知ったのだろう。まさか、盗聴器に近いものでもあるのだろうか。この世界では今の所は聞いたことがないけど。


「ロルフくん、駄目かな」


 レイラは笑顔でこちらを向くが、目が笑っていない。絶対に断るな、と言う無言の圧が感じられる。

 あー、……怒っているのか。誘われなかったのが余程不満だったのだろうか? だから強引に来たと。


「……いいですよ。どうせレイラさんも知っていますからね」

「ちょっ、ロルフっ!」


 ミアが声を上げるがしょうがない。断ったところでレイラは付いてくるだろう。それなら一緒にいたほうがまだマシだ。勝手に動かれるとこっちの心臓が持たない。


「よかった。じゃ、行きましょう」


 レイラ一人だけが上機嫌だった。サンディはむすっとしたままだし。ルンルンで歩いて行く彼女の横にサンディが付き、その後をミアと二人でついていく。


「ミア、機嫌直して下さい。二人ともルーシーを心配してのことなので……」

「……レイラも?」

「あー、多分」

「あっ、そう」


 正直分からなかった。ルーシーとそこまで面識は無かったように思う。知らないだけかもしれないが。

 結局、ミアの機嫌は直らなかった。

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