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第1話 初出勤!

登場人物


有坂(ありさか) 美來(みくる)

25歳独身。以前勤めていた会社から転職して、ここ『日々張鉄工株式会社』に勤務する事になった。真面目で頑張り屋。


矢井田(やいだ) (さとる)

40歳独身。結婚経歴を持つが、訳あって離婚。

少しぶっきらぼうだが根は優しい兄貴肌。


丸ノ(まるのうち) 光希(みつき)

24歳独身。矢井田との付き合いは長く、矢井田の過去を知る人物。ちょっと不真面目なおチャラけの事務員。


木下(きのした) 雄一(ゆういち)

27歳独身。丸ノ内と同様に矢井田の過去を知る人物。職場では矢井田のパートナー。


葉山(はやま) 鉄也(てつや)

52歳の若き会社社長。若い頃から矢井田と仲が良い。筋トレが趣味で豪快な性格。


その他、色んな人が登場します。


※これはフィクションです。登場人物の名前や会社団体は現実とは一切関係ありません。

「ここかぁ………他の企業に受からなかったし、 ここしかないよね~」



私は有坂(ありさか) 美來(みくる)、25歳独身。

前に勤めていた会社が事業縮小の為に大幅な人員削減をしたのでクビになり、色んな所に面接に行ったんですが、結果この小さな鉄工会社に採用が決まりまして……

まぁ、最初はそんなに長くここにいるつもりはなかったんですけどね





〖 火花散る…その先に… 〗





有坂が急遽勤務する事になったのは、金属加工を主に扱う小規模な会社である。社名も独特で、その名も『日々張鉄工株式会社』。

日々張り切っていきましょう!…が会社の主旨らしい。

有坂「失礼します………」

有坂は事務所の中にある小さな社長室に入った。

社長「おはよう!……ささ、掛けて……」

この会社の社長である葉山(はやま) 鉄也(てつや)、52歳。この歳で筋トレが趣味な元気な男性である。

有坂は言われた通り応接用のソファに座った。

有坂「あの……採用通知に書いてあったんですけど今日

は制服のサイズ合わせですよね?」

葉山「そそぉ!……それと工場の中も少し見学し

てもらおうと思ってね」

有坂「……分かりました」

葉山「流石にワシが触るとセクハラになるから、

代わりに女子社員を呼んでくるからちょっと

待っててねぇ」


葉山は事務所にいる一人の女子社員を呼んで連れてきた。

女子社員「どうもぉ~……ふっ~……」

葉山「おい、丸ノ内!ガムは噛んでも良いが膨ら

ませるなと言ったろ!

新人さんの服のサイズ測ってやってくれ」

丸ノ内「はいは~い」

葉山「ったくもう……これだから最近の若いのは

……なっとらんな」


丸ノ内「では失礼っと………」

丸ノ内はササッと有坂の採寸をする。そして小声で有坂にニッコリしながら呟いた。

丸ノ内『意外とお胸あるんですねぇ……』

有坂「ヒャ!……」

葉山「どうした?!」

丸ノ内「何でもないですよぉ~……

じゃあ社長、仕事に戻りま~す」

有坂は呆気に取られていた。


有坂は葉山に連れられ、工場内を歩いて見学する。機械の音、金属を削る音、様々な音が工場内を包み込み、人の声を遮る様な環境だった。

そんな時、葉山の携帯電話から呼び出し音が鳴った。


ピピピ………ピピピ………


葉山「おっと!……ごめんねぇ、ちょっと待って

ね……(ピッ)……もしもし…あ!これはどう

も!いつもお世話になっております…」

葉山は工場内から出て外で電話対応している。待たされていた有坂はただ呆然としていた。

そこへ、ベテランの社員が近寄ってきた。

社員「おう!……アンタ、新人さんかい?」

有坂「はい!来週からお世話になります、有坂

美來です!よろしくお願いします」

社員「そうかい…………おっ!危ねぇ!」

有坂「わっ!…」

金属を削った火花が有坂に向かって飛んできたのだ。一緒に居た社員が身を呈してその火花を遮る。

有坂(え?……庇ってくれた?)

その社員は別の社員に向かって怒鳴る。

社員「おい!気を付けろ!…人いるんだぞ!」

別の社員「あ!………すみません!」

社員「すまねぇ…へへへ。

工場内にいる時は帽子とマスクを着けとくと良

いぞ。ここは危ねぇから安全の為な」

有坂「はい…ありがとうございます」

社員「社長いたよな?……」

有坂「はい。電話対応でいなくなってしまって…

今外で電話してます」

社員「まったく…新人一人置いていくと危ねぇだ

ろ!……とりあえず危ねぇから社長の電話が終

わるまで外にいな?」

有坂「はい!……色々ありがとうございます」

社員「おう!………ったく、社長ちゃんと説明し

てやれよ……」

その社員はブツブツ言いながら仕事場に戻って行った。

その後、葉山は戻ってきて再び工場内を案内した。最後に社長室で挨拶を交わし、その日は終わった。


有坂「あ~~!………疲れた!」

有坂は自分の部屋に帰るなり、ベッドに飛び込む。そして一休み。

有坂(私、大丈夫かなぁ……製造業の会社って初

めてだし、しかもバリバリの鉄工所。

……まぁダメならまた転職しますか……)

余程疲れていたのか、有坂はそのまま眠ってしまった。



あっという間に1週間が過ぎ、いよいよ出勤初日となった。

準備を済ませ、少し早めに出かける。そして電車に乗り込んだ。

電車に乗って直ぐに見覚えのある男性が目に入った。

有坂(あれ?………あの人は昨日の……)

人違いかもしれないと少し不安になったが、恐る恐る声を掛けてみた。

有坂「お……おはようございます……」

声を掛けられ、その男性が振り向く。

男性「よぉ!おはようさん!アンタは……」

有坂「はい…昨日はありがとうございました」

男性「気にしなくて良いよ、うんうん……

おっと、そういや自己紹介まだだな」

有坂「あ……」

男性「俺は矢井田、矢井田(やいだ) (さとる)

てんだ」

有坂「矢井田さん……私は……」

矢井田「へへ……有坂さんだろ?覚えてるぜ」

有坂「あ……えへへ……」

矢井田「よくウチみたいな会社に来たなぁ…

アンタみたいな若い女の子が来る様な会社じゃ

ないと思うけどなぁ……」

有坂「でも事務所に一人、若い女性の方がいまし

たよ?」

矢井田「ああ、……アイツは変わってんだよ」

有坂「ふふ…なんか可哀想ですよ」

矢井田「そか?…へへへ」


こうしているうちに二人は会社に到着した。有坂は更衣室に入り、指定されたロッカーに荷物を置いて制服を確認した。

着替えていると、丸ノ内が入ってくる。

丸ノ内「あら!…おはようございま~す」

有坂「おはようございます」

丸ノ内「今日からですね!よろしくねぇ!」

有坂「こちらこそ、よろしくお願いします」

丸ノ内「ねね!……なんて呼べば良い?」

有坂「え?……どう呼んで貰っても……」

丸ノ内「フルネーム教えてよ」

ニコニコしながら質問する丸ノ内が少し可愛く見えていたのか、有坂は笑顔で答えた。

有坂「有坂 美來です」

丸ノ内「じゃあ、美來さんで良い?

アタシ、丸ノ(まるのうち) 光希(みつき)だよ!」

有坂「丸ノ内さん…よろしくお願いします」

丸ノ内「えへへ……よろしく!

ねぇ!……幾つ?」

有坂「25です」

丸ノ内「わお!アタシの一つ上じゃん!

お姉ちゃんだ!……やた!」

有坂「ふふふ………」


丸ノ内(でも………びっくりするくらい、あの人

にそっくり!びっくりだわ!)



始業時間になり、社長である葉山の招集で朝礼が始まった。そこで改めて有坂が紹介された。

葉山「今日から我が社に新しく一緒に働いてくれ

るメンバーが加わった!

製造業は初めてだそうだから、みんな色々教え

てあげる様に……

有坂さん、一言どうぞ……」

有坂「今日からお世話になります、有坂美來で

す。分からない事も多々ありますので、色々質

問する事も多いですが、頑張りますのでよろし

くお願いします」


ザワザワ………ザワザワ………


葉山「お前ら!うるさいぞ!」

有坂「……ひ!」

(こ、怖~~……)

葉山「ごめんねぇ有坂さん。

色々大変だろうけど、みんなと仲良くね」

有坂「はい」

葉山「では今週もよろしく!解散!」



朝礼が終わり、今日も工場内に機械や金属加工の音が鳴り響いた。

有坂は丸ノ内と一緒に事務所に向かう。

丸ノ内「今日からアタシが色々教えるね」

有坂「分かりました。お願いします!………」

丁度二人になった瞬間を見計らって、有坂は丸ノ内に質問してみた。

有坂「あの……私のスピーチ、変でした?」

丸ノ内「え?なんで?」

有坂「みんながザワザワしてたから……」

丸ノ内「大丈夫!気にしないで!」

有坂「……そ、そうですか?……」

丸ノ内「さ!仕事仕事~~!」



事務所に着き、これから使う机や椅子、パソコンを教えられた有坂は、仕事で使う為の道具を仕舞おうと引き出しを開けた。すると中にはキーホルダーが残っていた。

有坂(あれ?……誰のだろう………)

徐に手に取った。かわいい熊のキーホルダーだった。

それを見た丸ノ内は慌ててそのキーホルダーを

取り上げる。

丸ノ内「ご、ごめんねぇ!これアタシの……」

有坂「そ、そうなんですね…すみません…」

丸ノ内(ふぅ~…やばかったぁ)



丸ノ内から事務所での仕事を教わる有坂。受注入力や伝票の発行、図面の発行等に至るまでかなり忙しい業務で、有坂は初日にしてクタクタになった。

丸ノ内「美來さん、お疲れ様!」

有坂「お、お疲れ様です~……」

丸ノ内「あはは!……色々忙しいでしょ?」

有坂「丸ノ内さん、凄いですね'……」

丸ノ内「慣れだよ慣れ!少しずつ頑張りましょ」

有坂「……はい……」



初出勤の業務も終わり、着替え終わった有坂が会社の門を出ようとした時、矢井田と出会った。

矢井田「よっ!お疲れさん!」

有坂「あ、お疲れ様です」

矢井田「初日で疲れたろ?…今日は早めに帰って

ゆっくりしな?うんうん」

有坂「はい、ありがとうございます。

………ではお疲れ様でした」


有坂は帰宅し、夕食を済ませてから早めの風呂に入った。そして、湯船に浸かりながら考えていた。

有坂(色々大変だなぁ……大丈夫?私……

まぁでも良い人が多い会社っぽいし、せっかく

入れた会社だから頑張りますか!

矢井田さん…かぁ……良い人だなぁ…… )


明日からまた頑張ろ!今日は早く寝るんだ!

おやすみなさい……


こうして夜は更けていった……




─────第2話に続く─────








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