怪獣ダダンダン
深い海の底でそれは唸っていた。
「ダダンダン…ダダンダン…」
「地球温暖化により海水面の上昇は更に進んでおり…」
「非政府軍と政府軍の激しい戦闘は未だ続いており
…」
「今月に入り地震は世界規模で多発しており…」
「ダダンダン…ダダンダン…」
PM11:20 海上保安庁の巡視船は太平洋沖を巡航していた。すると、船の前方より「ダダンダン」という叫びとともにトリケラトプスのような頭を持つ獣のような大きな生物が海から出てきた。そして、船に襲いかかってきた。
「うわ〜何なんだあの生物は?」
「船長、これは?」
「…分からん。至急政府に連絡せよ、急げ!」
「はい!」
乗組員は走って船内電話のもとへ行き受話器を持って叫ぶように言った。
「生物、いや怪獣です!船は怪獣に襲われて…助けて下さい!」「ダダンダーン!」「うわ〜!」船体は大きく揺れて、海中に沈み込んでいきました。
翌朝、東京湾の海岸には人だかりができていて、皆
海の向こうからやってくる謎の生物に見入っていた。その生物に「リアルゴジラだ!」と言って興奮する者もいた。ネットではその生物について早々と
昨夜の事件との関連性を指摘したコメントもあり、その尾ひれがついて、中には政府の陰謀だの、ノストラダムスの大予言だの様々あった。一方政府はというと、昨夜の事件に関連した生物だとして有識者を集めて会議を開いていた。しかし、どの専門家もわからないといい政府は困惑していた。
「ダダンダンと鳴く生物はいるのか?」
「マスコミも騒ぎ出しています。」
総理「分かっている」
そんな中であった。
「総理、これを見てください。今ネットで話題になっているある国の村の村長の話です。」
そう言ってパソコンを総理の前に差し出した。
村長「その昔、アルセイアという国とバラドゥスという国は戦争をしていた。その時海から怪獣が現れて、両方の国を襲ったのじゃ…怪獣は、「ダダンダン」と叫び、街を楽しそうに破壊した。両国は戦争どころじゃなくなり疲弊してきたので、一時平和協定を結んだんじゃ。すると降り続いていた雨もやみ、…」
「ビリビリ…ビリビリ…」(ノイズ)
村長「…怪獣は海へ帰っていったのじゃ。昔からの言い伝えじゃ、よいか、絶対に攻撃してはならんぞ。」
総理「ん?肝心なところが抜け落ちているじゃないか!」
「すみません。只今分析中でして…」
総理「うーん…」
その時、慌ただしく会議室に係りの者が入ってきた。
「総理!大変です!怪獣が日本に上陸しました!
」
総理「伝説を信じてる場合ではないな…直ちに自衛隊を出動させて、人々の安全を確保せよ!」
「総理、攻撃命令も許可したものと解してよろしいのですか?」
総理「…よろしい」
「待ってください、総理!只今分析官より報告を受けまして、ノイズの部分が明らかになりましたので、御覧下さい。」
村長「…すると降り続いていた雨もやみ、空は晴れて虹が出ると、怪獣は海に帰っていったのじゃ、…」
総理「虹をかけろというのか?」
「おそらくは…いや、そのようです。」
怪獣ダダンダンから逃げ惑う人々。
「さよなら〜って言ってるよ!あれ、なーにー!」
「何だよ、うるさいな〜今大事な勝負をしてるんだよ、手を離せよ…あれって…」
すると、ビルの合間から怪獣がぬっと姿を表した。
「うおー!怪獣だ〜!」男は逃げて行った。
「ダダンダーン!」怪獣は大きな腕でビルを破壊しようとしたその時、空は晴れてきて、虹が出てきました。
数時間前に人工降雨を降らせていたのです。少女はビルに架かる虹を見つめていた。応戦していた自衛隊もやっとのことかと空を見上げた。
怪獣ダダンダンは虹を見るとにっこり笑って海へと帰っていきました。 「ダダンダーン!」 完