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第8話 食事

街中を少し探索しながら飲食店を探す。街並みはヨーロッパへ来たようで、綺麗な石造りやレンガ造りの家々が立ち並んでいる。


街は活気があり、幅の広い道には商店が並んでいる。街の規模的に都市レベルなのかもしれない。


「おい、あれ見ろよ」


田辺に促されて右前の店舗へと目を向ける。テラスがあり、数人が席に座り食事をとっている。テーブルに並んだ料理はどれも規格外のサイズで、ステーキに至っては一枚ですらただならぬサイズなのにも関わらず、それが三枚重ねてある。


「うへぇ、見ただけでお腹いっぱい」


「何言ってんだよ、これから本当に腹いっぱいになりに行くんだよ」


「嘘でしょ…?」


「田辺君は嘘を言っていないわ。そして、私も。これが証拠よ」


鈴木さんの手が青く発光している。いや、いいから。そんな事に能力使わなくても。


「もう、分かったよ。田辺君は分かるとしても、鈴木さんは意外だったよ…」


「なんで?生きていくうで食事は重要なファクターでしょ?なら美味しいものは沢山食べたいと思うものよ」


「まぁ、間違ってはないか…」


誰か彼女のステータスに腹ぺこ娘と書き足しといてくれ。


木田にも一応確認を取ると構わないという事なのでこの店に入る事にする。行き当たりばったりで入ったはいいが、金銭は足りるのだろうか…?流石に食事一食分たりないなんてことは無いよな?そんなに敷居の高い店には見えないし。


僕達は店の中へと入っていく。田辺と鈴木さんは目を輝かせ、木田も楽しみなのかソワソワと店内を見渡す。


「いらっしゃい。4人だな。適当に空いてる席に座ってくれ」


店主であろう男に言われ、入口入って右横のテーブル席へ座る。テーブルの真ん中には手書きのメニューが置かれており、品揃えは豊富そうだった。


「米食いたいけど流石にないよな。メニュー見た感じあんまり俺達の世界の飯と変わらなさそうだ」


田辺の言葉通りメニューには変わった名前の商品は特になく、ステーキタワーやカツカツサンド等のよく聞く、いやよく聞きはしないが、どのような物か分かる料理名が書かれている。


店員の一人がこちらのテーブルに水を持ってくる。僕は何にしようか考えていると、田辺達は早速注文をしだした。


「俺このカツカツサンドってのくれ」


「私はステーキタワー」


「ぼ、僕は、こ、このライン豚の蒸し煮をください」


「はい、はい。分かりました。お兄さんはどうします?」


「すみません、まだ決まってなくて」


「分かりました。ではまた後からまた伺いますね」


「あの、一つ伺いたいのですが、実は僕達他の国から来たのですがこのお金で足りるでしょうか?」


そう言って僕は麻袋をテーブルの上に乗せ、銀貨を見せる。それを見て店員はギョッとし、料理を作っていた店主らしき男がすっ飛んできた。


「兄ちゃん、それ一枚で全員分足りるから早く隠しな」


男に言われ急いで隠す。もしかして何かまずかったか?


「それはな、この街の領主であるレスター様の発行している特注銀貨だ。そんで、そいつは異世界人にしか渡されねぇ品物だ。この街には異世界人を良く思ってないやつも多い。その手の紋章も見る人が見れば気づかれる。後でちゃんとかくしとけよ」


「は、はい」


そんな事実があったなんて。俺は大きく首を縦に降り麻袋を元の位置に戻す。ちゃんと説明しとけよ。ていうかそもそもそんな危ないもの渡さず普通の通貨渡せよ。


それにしても話を聞く限り、僕ら以外にも同じような人間が過去にいたようだ。タイミングがあればその辺も詳しく調べたい。


「俺はここに店を構えて長いからよ。色んな異世界人を見てきたよ。横暴な奴だったり、理由は分からんが突然発狂しだした奴もいた。ただ、良くしてくれた奴らも勿論いた。だからあんたらが異世界人だからって差別はしねぇ。ただ、他の場所では気をつけな」


「なんでこんなもの持たしてきたんだよ…」


「さぁな。その辺は俺にもよく分からんが…今この国は通貨が弱くてな。偽物の流通がない純銀のレスター硬貨は価値が保証されるから、どこでも間違いなく取引してくれる。その関係じゃないか?」


なるほど。それにしても一領主が通貨の発行券を持っているか…どれ程の権力を持っているのか。もしかして、初めにいたあの恰幅のいい男がレスターだったのだろうか。


「あんた、良い奴だなぁ」


「へへっ、そう思うならどんどんこの店に金を落としてくれよ。レスター硬貨だろうが金は金だ。金に貴賎なしってな」


「あんた逞しいぜ。俺は田辺って言うんだけどアンタは?」


「俺はこの店の主、ブルーノだ。そしてそいつが俺の姪っ子のサナ。これからも食堂ブルーノをよろしく頼むぜ」


「そいつは味を見てからだなぁ」


そうニヤリと笑う田辺と、それを見て同じくニヤリとするブルーノ。ブルーノのは「だったらまた来る事になると思うぜ」と絶対的な自信を口にしていた。


「それじゃあ俺は飯を作ってくるからゆっくりしていってくれ」


ブルーノは厨房へと消えていく。僕は店員のサナにブルーノバーガーと書かれた料理を注文する。ブルーノと自分の名を謳っている料理だ。気にならないわけがない。


サナは注文を聞くとブルーノに伝えに行く。

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