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第7話 ラライの街

どれくらい歩いただろうか。大分時間が経ったと思うが未だに森を抜けることが出来ずにいる。ただ、未だに鐘の音は鳴っておらず、戦闘が起きている様子は無い。流石に鐘の音を聞き逃したなんてことは無いよな?


道中は相変わらず田辺と他愛も無い話をする程度で、木田と鈴木さんは話に参加してくる事は少なかった。それでも何とかコミュニケーションをとろうとしているのは伝わる。


一本道を突き進んでいると田辺が全員を制止した。


「まて、なんかいる」


そう言われて前を見ると、何やら草むらがうごめいているのが分かる。クラスメイト達との戦いは余程は起きる事は無いどろうと思いつつも、一応は警戒はする。まぁ、仮に戦いになれば勝てる気はしないが、他の類の可能性も考えて行動しよう。


草むらから顔を出したのは体に似合わぬツノを持つ小さな兎の様な動物だった。


「なんだコイツ」


「み、見た目がウサギみたいですね」


「おお、コイツのステータス見れるな」


田辺はふーんと頷いた後、ウサギのようなものに親指を指す。


「ホーンラビットだってよ。ステータス見たらオール1だったから勝てそうだ」


「じゃあ経験値とか確認したいし試しに木田くんにやってもらおう」


「ぼ、僕!?」


「木田くんの能力もちゃんと確認したいしね」


木田は少し嫌そうな顔をしながらスキルを使用する。その間もホーンラビットはこちらを気にすること無く駆け回っていた。


木田の前に小さな銀星が現れる。


「ここからどうしよう」


「試しにナイフで作ってみたら?」


「う、うん」


木田は目を瞑り念じている。すると、現実では見た事ないようなコンバットナイフが目の前に出来上がった。


木田がホーンラビットの方へ手を向けるとナイフが素早く勝手に飛んでいき、ホーンラビットの腹部に刺さり絶命した。


「え、触れずに飛ばせるの!?」


「ど、どうやらそうみたい」


えへへと笑う木田。やはり彼はあまり自分の能力の凄さに気づいていないらしい。


「多分今この中じゃ木田が一番つえーな」


「そ、そんな事ないよ!!」


「田辺くんの言う通りだわ。今、弓の無い私は木田くんより弱い」


それは弓があればスキルを持つ木田より強いという事なのだろうか…


「あ、レベルが1上がってる!け、経験値はプラス120されてるよ」


「マジかよ!低レベルだからレベルが上がりやすいのか?」


「まぁ普通に考えたらそうだろうね。流石にあのホーンラビットがそんな強いモンスターには見えないし」


そもそもあれはモンスターなのか?それすら疑問だ。


「とりあえずこれで人間相手じゃなくてもレベルアップできることは分かったな。これ結構重要だと思うぜ」


「そうだね。それに思わぬ収穫もあったしね」


僕は木田の方を見る。木田の能力を少し深く知れたのはいい収穫だ。まだどこまで再現できるのかは分からないが、ナイフ程度であれば再現可能な事がわかった。


死んだホーンラビットの方へ目を移すと、腹部に刺さっていた銀のナイフは消えている。


「あれ、ナイフ消えてるね」


「う、うん、念じれば消えるんだ。どうやら一回で一個までしか使えないみたいで。だから必要ない時は消しとこうかなって」


「無限に出せる訳では無いのか。もしかしたらスキルレベルが上がれば出せる数が増えるとかか?」


「その可能性もあるね」


「その辺も何とか早めに解明してかなきゃ。それにしてもなぁ」


「どうしたの?」


「アイツ見てたら腹が減ってきやがった」


「確かにね。よく考えたらもう半日以上何も食べてないもんね」


「アイツ食おうにも流石に捌けねぇしな。早く街とかに出たいぜ」


それは僕も同意だ。空腹もそうだが眠気もきている。モンスターがいると分かった以上流石に外での野宿は避けたい。何とか早いところ宿等に泊まって、見張りを交代しながら戦いに備えて一人づつでも寝ておくべきだろう。


「よし、少し急ごうか」


どこまでも続く長い道を少しだけ早足で進み出す。少しして直ぐに、目の前に看板が現れた。



【この先ラライの街】



見慣れない文字の上にそう文字が浮かび上がった看板を発見した僕達は、喜びで笑みが零れた。こんな状況になり、慣れない道を歩いてきた不安も吹き飛ぶようだった。


「やっとだぜ!やっと街につくのかー」


喜びではしゃぎながらもまた新たな不安の種が出てくる。ここまで一本道だったということは他の奴らも同じ街にいる可能性は高いのではないか。早速出立が遅かった自分に後悔をし始める。しかし、とりあえずは考えても仕方が無い。街に入ろう。


看板から先に進んでいくと段々と森が開けていく。すると目の前に関所なのか、大きな砦が現れた。その先には壁が街を囲っていて、どこまでも続く草原に対して街に沿うように壁もどこまでも先へと続いている。


「うわー、なんかすげーなぁ」


元の世界では見た事ない程に大きな砦の門の前に、二人の皮の鎧をまとった兵士が立っている。気にせずそのまま突き進んでいくと、門の前で兵士二人に止められた。


「通行証は?」


僕は通行証の提示を求められ焦る。麻袋を確認したがそんなものは入っていなかったはずだ。あれ以外に僕らは貰ったものが無い。どうするか考えていると、兵士の一人がこちらを確認してもう一人に耳打ちで伝える。


「ふん、異世界人か。お前らのその手の甲の紋章が通行証代わりだ。これからこの国を移動する時はそれを見せろ。よーし!開門!!」


兵士の一人が合図を出すと、門がギィという音ともに開いていった。


「よっしゃ、入ろうぜ」


僕達は街の中へと入っていく。砦をぬけた先は摩天楼だった。


「すっげ…なんだあれ」


街の中心部辺りだろうか。先程までは無かった天まで届こうかという程の二股の塔が立っている。


僕達は自分の目を疑った。大きさで言えば高層ビル50階程の大きさだろうか。外から見た時確かにあんなものは見えなかった。あの大きさで見えないなんて事は無いはずだ。


いったいなにが起きているのか。疑問は残るが異世界という事で納得しておこう。


「まー本当にすげぇ世界だな、ここは」


「全くだね」


「最初の事があるから門兵に言葉が通じるか不安だったけど、とりあえず何も無く街まで来れてよかったぜ」


「そうだね。条件は分からないけど言語は読み取れるし聞き取れるようになってるみたいだ」


「よし!まだ開始の合図もないしまずは飯だろ!!」


「えー、先に武器とか見ようよ」


「ダメ、ご飯を先にしましょう」


突然鈴木さんが話に入る。先程まで静かに着いてきていたのに、それ程までに空腹なのだろうか。木田は木田で勢いよく頷きこちらを見ている。


「はぁ、分かったよ。ご飯にしよう」


僕の言葉を聞いて全員が笑顔でガッツポーズする。鈴木さん、貴方のイメージがどんどん僕の中で変わっていってます。

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