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第二の幼馴染




 「それは冗談。だけど恩返しは何かしらでするからこれからよろしくね」


 「恩返しって……それほどのことした覚えはないんだけど」


 「ううん。湊くんがそうでも私は違うの。だから絶対に恩返しはする!」


 拳を握りしめ意気込む。少なからず俺たちを見ている人はいて、羨ましそうな視線を感じる。どんな話をしてるかなんて聞こえないだろうが、それが余計に視線を強める。


 災難だ……。


 結局100%理解することはできなかったものの、なんとか状況は飲み込めた。さすがにいきなりの転校生と、それが幼馴染だったことそして冗談だったが付き合う宣言をしてきたことを、まとめて処理できるほど優秀ではない。


 2学期も一層、大変な時間を過ごすことになりそうだ。


 「何をするのも自由だけど無理はするなよ。何かしらで病気になったりケガでもされたら困るのは自分自身だからな」


 結女のこのテンションは危ない。神山を見過ぎたせいでそう思うのか、ハイテンションの美少女はポンコツだと方程式があるので、後先考えず行動されると大変だ。


 「やーっぱ、昔から変わらないね」


 「なにが?」


 「ん?さー、何がだろうね!えへへ」


 よく笑う。記憶にいる結女は笑うこともあまりなく、人見知りも激しかったから、イメージでは不思議な子って感じだった。でも今はそんなところは微塵も感じさせないこの態度。


 ここまで変われるのか。


 今の結女のことを何も知らなくても、結女本人が笑顔になれるのならそれでいい。理由なんて聞かれたくないこともあるだろうから無理にも聞かない。目の前にいる結女がありのままの結女だ。


 「そうそう、来栖は卯花さんと知り合いなんだろ?だから来栖が卯花さんに色々とこの学校について教えてあげてくれ」


 「分かりました」


 担任の補足が入る。前々から伝えていたのだろう。俺だけ忘れていたみたいで申し訳ない。これが弓波の思う気持ちか。たしかに申し訳なさが半端ないな。


 「だって。改めて、色々とよろしくね」


 「ああ。でも学校のことだけだからな。プライベートは知らないぞ」


 「それはこれからの関係次第じゃない?」


 「……そうかもな」


 関係次第……か。関わらないことはまずない。幼馴染としての肩書だけでそれは言える。しかし一般的な幼馴染として持つ印象である、よく遊んで仲が良かった、ということに当てはまるのかどうかは分からない。


 何度も言うが結女は内気な性格だ。だから遊ぶことなんてほとんど無かった。逆にそのおかげで結女との記憶はバッチリ残っている。そうバッチリ。


 だから俺は気づいていた。昨日の弓波に対して言った昔の話。それは弓波のことではなく結女に対して言ったことだったのだと。


 幼馴染を間違えるって良くないことをしたよな……紹介がてら謝るか。


 どうせ放課後も教室に残らなければならない。だからその時弓波には説明して、お互い仲良くなってもらおう。


 朝、それも授業はまだ始まる前なのに、精神的に帰る前の疲労をしっかりどっしりと感じていた。結女の登場がそれだけ俺にインパクトを与えたということだ。


 ――「ってことだからホームルーム終わり。部活行くなり帰るなり自由にしていいぞー解散」


 授業中の時計を見る回数が通常の倍になるほど時間の流れが遅く感じた。きっと結女のせいだ。こんなタイミングでいきなり転校なんてしてくるから。


 でも正直会えたことは嬉しい。幼馴染とは不思議な関係で、あまりこれといった思い出が無くても自然と会いたいとか、話したいと思うもので、クラスメートの女子と話すより全然楽しく思える。


 そんな第2の幼馴染は転校初日ということもあり、机を囲まれるのは秒だった。


 そのたびに席を立ってトイレに行くふりをしていた。結女にはどこ行くの?と毎回聞かれたが曖昧に返答をした。そうすれば男子の視線が強化されるので巻き込まないでほしいものだ。


 「これから何するの?帰る?それとも部活?」


 転校初日、初めての放課後にワクワクと目を光らせる。ホントに結女なのか未だに疑っていた。ホントにこんな美少女じゃ無かったのに。


 「体育祭の時期だからな、体育委員は居残りで仕事をしないといけないんだよ」


 「へぇー、体育委員なんだ。意外だね」


 「無理矢理だからな」


 じゃんけんに負け続けた、なんて言えば信じてもらえるだろうか。それも二桁も。


 アイコも無かったからまぁ、俺なら信じないな。


 「湊くんが残るなら私も残ろうかな」


 予想はしていた。


 「ああ。そうしてくれると助かることもある」


 「助かること?」


 「そのうち分かるよ」


 しばらく自分の席で結女と会話を続けた。そしてすぐに弓波も教室に戻ってきた。職員室かトイレか、はたまた別のとこに行ったのか、それは知り得ないことだがとにかくおかえりだ。


 そしてこの教室には美少女が2人と平凡な男が1人の、男側からしたら天国、女子からしたら普通の空間ができた。少しばかり空気が美味しく感じるのもそのせいかもしれない。


 結女は弓波が入って来たのを目で捉えるとすぐに駆け寄った。


 「私卯花結女。あなたは?」


 「ええ、知ってるわ」


 圧に押されながらもしっかりと答える。弓波には攻略しにくい相手だろう。


 「私は弓波楓華よ。それで……私になんの用が?」


 「楓華ちゃんか、いい名前!」


 俺の目の前にいるのは、キレイでカッコいい弓波と、神山にも引けを取らない可愛さを持つ結女。どちらも容姿が整いすぎてミスコンの最終審査でも見せられている感覚だった。ここに神山が加われば三つ巴の勝負だ。


 そんな3人をふと見てみたいと思った。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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