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うん、恋心は難しい




 翌日、転校生のことなんてすっぽり抜けていた俺の頭に、その存在を以て転校生が来ると思い出させてきた少女が教卓にいた。


 「皆さんはじめまして、今日からこの新波高校でお世話になる卯花結女(うはなゆめ)です。こんな時期に転校してきましたが、どうぞよろしくお願いします」


 短くてもサラサラ感の伝わる髪の毛に、整った容姿。これまたハイレベルが転校してきたものだ。身長は女子の平均と変わらないぐらいで、どこを見ても露出している部分は細くて白い。


 そんな卯花という女子生徒が挨拶をし終えると、男子の雰囲気が変わるのを察する。弓波に加えてこのクラス第2の高嶺の花となったみたいなものだ。それが当たり前なのだろう。


 「それじゃ卯花さんは、来栖の隣の席に座ってもらおうかな」


 「はい」


 朝来たときから思っていたが、この隣の空いた席、そういうことだったのか。


 運が良いのか悪いのか、男子の視線は羨望の眼差しに変化した。悪いな、狙ってこういうことになってるわけじゃないんだ。


 一歩ずつ近づいてくる。そんな彼女の雰囲気に俺はどこか似たような雰囲気を持った人がいたことを思い出す。顔も名前も思い出せないが、感覚だけを。


 「よろしくお願いします。()()()


 席につくなりすぐ俺に小声で挨拶を交わしてきた。声色や話し方から優しい性格をした人なのだと自然と理解できたのは不思議だった。


 「あぁ、よろしく」


 容姿の整った女子と話すのには慣れたと思っていたが、それは思い込みで、挨拶をされたことに驚いては、なんて返せばいいのか一瞬考えてしまうほどまだまだ耐性は付けられていなかった。


 なんだか彼女とは隣の席だからと言う理由ではもちろん、その他の理由でも関係を築いていきそうな気がする。勘でしかないが。


 「ごめんなさい。自然と湊くんと呼んだんだけどいいかな?」


 「え?うん、まぁ好きに呼んでもらって構わないけど」


 俺を呼ぶ人こそ少ないが、呼ばれるときは基本名字だ。湊、湊くん、湊さんなんて呼ぶ人はいない。


 ん?湊くん?……俺って今日下の名前言ってないよな?それに誰も彼女の前では俺の下の名前を呼んでない……どういうことだ?


 俺は混乱する。初めは違和感なくてこれが普通なんだと思ってスルーしていたが、今日が初対面のはずなのになぜ俺の名前を知っている?


 下足箱で見た?いや、下足箱は名字だけの記載だ。ではどこで?


 この学校は名字が被っていない限り下の名前を記載することはない。ネームプレートも机も何もかも。だから下の名前は誰かから耳にするか、直接聞くかしかない。しかし転校生が紹介前に友達を作ることなんてないだろう。


 「ありがとう。じゃ()()()()()湊くんって呼ぶし、湊くんは私のこと結女って呼んでほしいな」


 そんな俺にヒントどころか答えを与えてくれた隣の席にいる転校生。俺は昔という言葉に自然と記憶を遡らせていた。そして理解した。今俺の隣りにいるのは()()()だった卯花結女という少女だということを。


 「……結女?結女って昔隣の家に住んでたあの結女か?」


 「うん、そうだよ!」


 小声ながらもしっかりと感情が伝わるほど元気だった。


 しかし結女が結女だと信じれない俺がいた。結女は弓波と逆の隣に住んでた少女。そんな結女との記憶は数少なく、それは遊んだ回数が弓波と比べて極端に少ないという理由から。


 記憶にいる結女は今の俺のようにおとなしくて、メガネを掛けている陰キャと言われる格好をしていた少女だった。しかし今の結女は、メガネを掛けておらず、元気な少女で陽キャと言われる校則ギリギリラインを攻めた制服の着こなしをしていた。だから信じられないのだ。


 「イメチェンしたのか?」


 「そんな感じかな。私もおとなしい性格じゃダメだと思って湊くんが転校してから私は変わったんだよ。メガネをコンタクトにしたり、女の子が読むような本を読んだりね」


 言われても信じられない。180度真逆の性格と見た目をしているんだ、普通かもしれない。


 しかしこれほどまでに結女が美少女だとは思わなかった。関わったことは少ないが顔は思い出せる。その顔は前髪に目元まで隠れていて正確には掴めないのであやふやだが、今思えば確かにキレイな顔立ちだったかもしれない。


 「そうか……」


 言葉が出てこないのは弓波の容姿を褒めるとき以来だ。


 「可愛くなったな」


 正直に見たときの感想をそのまま口に出す。言われて嫌な人はそうそういないだろうからミスではないと思う。まぁ、美少女に可愛いは慣れっこだろうが、幼馴染というポイントを付け足せばいい感じに褒められてる気分にならないだろうか。


 「えへへ、湊くんにそう言われるためにに頑張ったんだから嬉しい」


 と、ドキッとするのは確実で不意な1面に跳ね上がる心臓と、赤く染まるだろう頬を窓外を見ることで隠した。


 なぜこうも美少女とは縁があるんだろうか。このために運を使って体育委員にさせられたのかもな。


 「俺のために?」


 「うん。湊くんには昔いろいろ助けてもらったっていうかお世話になったからその恩返しをしたくて。そんなことを考えてる時に私が可愛くなって湊くんと付き合えればwinwinかなって!」


 「待て待て、俺と結女が付き合う?話が飛びすぎじゃないか?」


 昔大人になったら結婚しようね、なんてベタな約束はしていない。それに遊んだことも関わったことも数えれるほどなのに好意を持たれる理由が分からない。


 難しくね?恋心って。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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