嘘付きは信頼0
「冗談だよ。そんな暇今の私たちに無いでしょ?」
「なんだよ……」
あの凹み具合からまさか冗談を言ってくるとは思っていもいなかったものだから、真面目に捉えてしまった。まったく、こんなことをされるのは久しぶりな気がする。
「確かに暇は減ったけど別に弓波の家にいけなくなるほどではないけどな」
俺たち体育委員のやることと言えば、学校で完結するようなことが多いため、家に帰ってまで机に向かってペンを走らせることはない。
それに弓波の家に行くことは好きだ。誘われるのなら用事がない限り行く。
「それもそうだね。そろそろ私の部屋も散らかってきたから体育祭後に来てもらうかもしれないよ」
「体育祭後って……予定作るなら手間がかからないように散らかさないでくれると嬉しいんだが?」
「でも、散らかしても散らかさないでもどっちでも呼べば来栖くんは来てくれるでしょ?」
「それはそうだけど、呼ばれた時の部屋の状況によってやることが決められるから嫌なんだよ。少量ならまだしも溜められてるからなおさらな」
傍から見れば同棲しているカップルのような話だ。異性で部屋の掃除を誰がするかで揉めているなんてそれ以外に考えられることはない。
この女子、俺を奴隷か何かと勘違いしているのではないだろうか。
「そうならないように来栖くんが2日に1回来てくれれば助かるんだけどな」
「絶対に行かない。俺は弓波専用のロボットじゃないんだぞ」
冗談だろうが、マジで言ってる可能性も無きにしもあらずなのが怖いとこ。いつか、なんで来てくれなかったの?約束したよね?なんてすっぽかしたときに言われそうだ。うー怖い。
弓波への偏見を頭の中で再生させる。そんな時でもまとめるだけの作業は進んでいる。成長していってるのだ。
そして、そんな楽しく会話している俺たちを遮ったのは教室に入ってくる1人の生徒だった。
「楓華ー、来栖くーん。やっほー」
神山だ。
「神山?珍しいな」
「でしょ?私も体育委員の仕事終わったから遊びに来たんだ」
神山も隣のクラスでは体育委員に所属している。弓波に対抗心があって就いたのではなく、俺たちと同じく運が味方してくれなかったかららしい。どこまで行っても俺らは同じだな。
「来栖くん、終わってなさそうだね。手伝おうか?」
これは他クラスでも、ましては体育委員じゃなくても作業ができる。ただ表を人の名前で埋めるだけなのだ。まぁそれをめんどくさがってるのは相当な怠惰マンだとは思うが。
「気持ちだけもらうよ」
「っそ」
ニッコリ笑顔で返される。何やっても可愛いのに笑顔なんてやめてくれよ。1人相手にするだけでも大変なのに、美少女と言われる2人が相手になるともう運が悪いのはこのせいだとしか考えられない。
神山は俺と反対側の席に座り、イスだけ弓波の机に置いて話し始める。
「そういえばさっきチラッと聞こえたんだけど、ここのクラスに転校生が来るらしいよ。ホントなのかは知らないけど」
「転校生?こんな時期に?」
弓波が聞き返したくなるのも分かる。この時期、2学期で転校生が来るなんて聞いたこともないし、来るとしても始業式だろうが、こんな中途半端な時期に転校生なんて信じようにも信じれない話だ。
「どうせ、神山が俺らをからかうために嘘付いてるんだろ」
俺の導き出した答えはこれだった。神山がどんな性格でどんなことを企んでいるのか分かるようになってきた俺は合ってる自信があった。
「ざんねーん。これはホントの話だよー」
と言われるが、ホントだったとしても信じきれない。嘘つきがいきなりホントのことを言うと信用なんて無いから信じる人0だろ。
「うちの担任とここの担任が話してるの聞いたから間違いないと思う。まぁ実際どうなのかは明日以降分かることだし今はまだ騙されてるって思ってていいよーん」
ここまで言われたら自信がなくなっていく。微かに信じ始めている俺がいるのも事実だ。神山がここまで言って嘘を付くのは今までなかった。まさか……。
「でも、もしホントに転校生来たら来栖くん、何か私の言うこと1つ聞いてね?」
「いやいや、それは無理だろ。なんでこういう時だけ罰ゲームみたいなものをつけるんだよ」
シンプルにズルいと思った。こう言うってことは転校生が来ることをもう確信しているのだろう。その上での取引なんて成立するわけがない。してたまるものか。
普通に断る。
「つまんないのー」
世の中思い通りにならないことがほとんどだ。1回1回拗ねてたらいつまで経っても精神は大人にならないぞ神山。
「はぁ……神山も来たから今日は帰るか」
神山と弓波が揃えば俺がペンを走らせることはない。結局今日もノルマ達成とは行かず、時間だけが楽しい会話とともに消えていく。
まだ余裕はある。でも間に合うかは分からない。弓波に手伝ってもらうことになればきっと報酬として部屋の掃除をするロボットといった執事にされるだろうから、なんとしてでも回避だ。
転校生が来る来ないの話は俺にはそこまで重要ではなかった。どうせ来たとこで俺には無関係だし、楽しみと思えるほど刺激があるわけでもない。現に目の前と隣には毎日のように刺激と彩りを加えてくれる友達がいるんだ。これ以上を望むことはない。
そして今日は久しぶり3人揃っての帰宅となった。誰かに見られたとしても弓波と同じ委員の仕事でたまたま一緒に残ってて、たまたま一緒に帰ることになってたまたま神山も一緒だったと言えるので少しいつもより気が楽だった。
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