体育祭の準備から不運な兆し
本格的な夏を過ごし、各々夏休みという長期休暇を思い出として染め上げたであろうクラスメートは今教室で哀愁を漂わせていた。俺もその1人に入るのだろう。机に伏さずとも頬杖をついて黒板を眺めるだけの時間を過ごす。
新波高校の夏休みは31日までと他校に比べ長い。そして今日は9月1日。夏休みが終わり2学期の始まりの日である。
日焼けをハンパなくしてる人や外に出なかったんだろうと確信させるほど白い肌をした人、それぞれはっきりと区別できた。日焼けをしている人の中には意外な人も混じっていて、それが我がクラス最高位に君臨する女神弓波だった。
そんな弓波にクラスメートはどこかで遊んだの?と机を四方八方囲み聞いている。新学期早々めんどくさそうだ。ただ眺めるだけしかできないがこのあと助けてやろうかとも思っていた。幼馴染だし。
しかしその必要はなく、教室に入ってくる担任の先生により自然と取り巻きは席に戻っていきホームルームが始まった。
「ホームルーム始めるけど、この時間なにもすることないから今後の委員会でも決めるか」
よくあることだ。学校生活を送ったことある人になら分かる、あの新学期始まったときに何もすることがなくて結局隣の席の人や友達と話すだけの時間ができるあれだ。
実際今決めることなんて今学期の委員会以外に思いつかないし、授業をするわけにもいかない。もともとすることがないのならその分早く帰宅させてくれてもいいと思うのだが。
そうして始まった委員会決め、この時点で良くないことが起こりそうだった。2学期とは学校生活において1番行事が多い学期であり、担当委員に所属してしまえば放課後も拘束される陰キャからすると最悪の学期である。
選択権は担任とのジャンケンに勝った人からというシンプルなもので、これなら運だけの勝負となり勝ち目がある。
……そんなことないのがやはり俺だ。一切勝つことができず黒板に向かうクラスメートに体育委員、文化委員に行けと願うことだけが増えていく。
でもまだ人は残っている。大丈夫だ。頑張れ俺。
しかし願っても願っても勝てない。
え、俺ってそんなに悪いことしたっけ?した覚えないんだけどな……。
きっとこれは神のイタズラなのだ。神は俺を嫌っているのか。それから願うこと6回、ついに残るは4人だけとなり空いた委員会は体育委員と文化委員という地獄への入口だけだった。
でも神のイタズラもやり過ぎたと思ったのかあの女神様も4人の1人だった。こうなったら弓波と同じ委員にしてくれと願う。そして俺は気づいた。
悪いことをしたのではなく、俺はいいことを貰いすぎて今不幸が降り掛かっているということに。思い返さずともしっかりと覚えている夏休みでの記憶。弓波と神山と過ごした時間が俺に不幸を与えているのだ。
くっそ、こんな時に……。
そして担任の掛け声に俺は全ての運を懸ける。
「ジャンケンポン」
担任が出したのはグー。俺が出したのはチョキ。おいふざけんなよぉ!
悔しい。ここまで運を絞っても勝てないほど運が悪いなんて。運は貯めておくものだな。
1人崩れ落ちる俺の目に映るのはジャンケンに勝った2人のクラスメート。見て安心する。弓波がいなかったのだ。
弓波もジャンケン弱いのか。いや、運が悪いのかどっちだろうな。
もう自動で行き先が決められる俺のネームプレート。それを握りしめながら願うは体育委員に行けという願い。文化委員の方が圧倒的に楽なので僅かな望みを懸ける。
2人の手元に視線が張り付いて離れない。
どっちだ、どっちだ?!
――2人の手がスローモーションに見える。そして置かれた委員は見事文化委員。
くそがぁぁ!!!
どこまでいっても俺の思うようにはならない委員会決め。もう一生願わないと決めたのはこのときすぐだった。
「それじゃ、残った弓波と来栖が体育委員ってことだな」
拒否権ないかな……。
でも良かった。弓波が同じ体育委員なら心強いし、男女で所属しなければならない委員で唯一友達である弓波が居てくれるのならそれ以上求めるものはない。不幸中の幸いみたいなものだ。
「俺はちょっと職員室行くからまた待っててくれ」
会議があるらしく急いで教室を出ていく。それならまじでこの時間いらないだろ。この時間無かったら絶対に変わってたのにな……。
悔やんでも悔やんでも過去は変えられない。切り替えるしかないのだ。
はぁ、夏休みのことでも振り返るとするか……。
現実逃避というやつだ。夏休みの思い出を振り返ることで僅かな幸せがもらえる。それぐらい詰まった夏休みを過ごしたのだ。
1人瞼を閉じる俺の耳に入るのはクラスメートの声。ザワザワとまではいかず誰が何を話しているか聞こえる程度には静かだ。笑い声が聞こえる度振り返りが止められる。気が散るからやめてもらいたい。
せっかく楽な委員会を譲ってやったんだ。俺をもっと丁重に扱ってくれてもいいのでは?
「さすがは体育委員だな。肌がしっかり焼けてる」
「……なんだよ」
瞼を開けてみれば目の前に倉木がいて意外と立ち回っている人が多く、弓波の周りは……言うまでもない。
「やっぱ、お前と弓波は何か夏休みで進展があったな。弓波も焼けてるようだし」
「あったら何だってんだよ」
「お互いの性格からして意外だと思うぐらいだな」
「なんだよそれ」
そう、意外だからなんだよな。つまりは俺と弓波の性格が似てるということ。ならば――そういうことだ。
「いいなー俺も弓波と遊びたいわ」
「誘ってみればいいだろ」
「100%断られるから無理だ」
弓波からのお誘いもないだろう。ドンマイだ。
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