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やっぱりな




 時間は16時前、両親が家に帰ってきておよそ2時間経過していた。母は少し遅れてきたので正確には2時間とはいかない。


 リビングでスマホを眺め続ける俺に、退屈という文字はなく、ひたすら好みの動画を探しては視聴するの繰り返しだった。たまに海水浴のことを思い出すとあんな日々が毎日続けばと思っていた。


 それでも十分思い出は作れたので欲張りは言わない。普通なら絶対に相見えることだけで終わった2人と友達にまでなることができたんだ。それだけで満足しなかったらどれだけ強欲なんだ。


 時計の針は16時を過ぎていた。


 「あっ、そういえば!」


 テレビの音だけが静寂を破っていたとき、母が何かを思い出したかのように手を叩いて父と俺に顔を向けてきた。


 「この100年に1度の美少女で思い出したんだけど」


 テレビ先にいるその美少女を指差すが顔はこっちを向いている。


 「さっきスーパーに行ったら久しぶり、それも湊に会うよりも久しぶりにあの子に会ったのよ!」


 いきなりこんな元気になれるほどの話なのか、母はテンションが上がりきっていて止まることを知らない。


 「あの子って誰?」


 「弓波楓華ちゃんよ!弓波楓華ちゃん!」


 「……は?」


 母から伝えられた人の名前は初めて聞く名前ではなく、俺のクラスに所属する女神と言われるほどの美少女の名前だった。思わず俺はスマホを落とす。


 「弓波楓華ちゃん?……あー思い出した、昔隣に住んでた子か」


 父はすんなり受け入れたようで驚きもしなかった。


 昔隣に住んでた?それなら……。


 「スーパーで買い物してたらとっても可愛い子を見つけてつい話しかけちゃったのよ。そしたらなんと楓華ちゃんでえっ!?って声に出しちゃったわ」


 俺はまだ呆気にとられていた。こんな奇跡が起きているなんて正直俺のレベルの低い頭じゃ処理できなかった。


 「楓華ちゃんか……昔湊とよく遊んでたな」


 父と母がここまでして俺を騙したりすることはない。なにより弓波と関わってることなんて知らないはずだ、冗談として話題に出すこともできないだろう。だから俺はこの話は本当なんだと信じざるをえなかった。


 ここで海に行った日の記憶が蘇る。意図的ではなく自然に。


 肩甲骨上にあった傷、これが本当なら……。


 「父さん、弓波って昔背中をケガして病院に来た子だよね?」


 俺と幼馴染の子は病院で知り合った。背中をケガしたからといって親とともにその子は病院に来ていた。その時俺は幼稚園帰りでたまたま父の職場にいた。そして診察を受けている時、同い年、そして家が隣ということが分かったのだ。


 それからというもの毎日のように片方の家に行っては遊んで遊んで遊んでの繰り返し。充実した時間を過ごしていた。


 「ああ、そうだけど。それがどうかしたか?」


 返事はyesだった。


 どうかしたかのレベルではない。俺と弓波が幼馴染かもしれないんだ、落ち着けるものではない。


 まだ確信はできないと思っているのになぜか確信している自分がいる。直感が間違いなく弓波は俺の幼馴染だと言っているのだ。


 「弓波は俺と同じクラスだよ」


 「そうなの?!これまたすごい偶然ね!」


 「そうだな。奇跡だな」


 いきなりのカミングアウトに目をキラキラさせる母と、表には出さなくとも驚いていた父が目に映る。


 ここで俺は1つ勘違いをしていたことに気づく。それは夏のショッピングモールでのこと。


 フードコートでアイスを食べているとき、俺たちは幼馴染がいるいないの話になったのだが俺は弓波の幼馴染のことをてっきり()()の子だと勘違いをしていたのだ。幼馴染と聞いて俺の頭の中には仲のいい友達として変換されており、結果女の子同士仲良くなって幼馴染と言えるほど仲良くなったのだと。おそらく弓波も同じ。


 だから弓波も、俺は絶対にないと言い切ったのだろう。


 はぁぁ、っと大きなため息をつく。心臓の鼓動は早まるばかりで静まることをしらない。ドッドッドッと叩かれてる、そんな感覚まで錯覚するほどに。


 まさかとは思っていたけどホントに弓波が俺の幼馴染……。


 あまりにも信じられない事実に俺は少しの間感情を失った。放心状態というやつだ。頭の中が真っ白ってこういうことを言うんだと体験できてよかったと思うのは放心状態から解放されてすぐ。


 「弓波とは何か話はしたの?」


 「元気にしてたか、学校はどうかとか聞いたわよー」


 「そしたら?」


 「学校は楽しいし友達と遊ぶのも楽しいって可愛い顔を更に可愛くして言ってくれたわ」


 可愛い顔を更に可愛くして、とはおそらく笑顔のことだな。やはり弓波の笑顔は誰でも癒やすことができるんだな。


 それより楽しいと思ってくれてるのはこちらも同じ。全ては弓波が海に行こうと誘ってくれたからできたこと、つまりは何もかも弓波に感謝しなければいけない。


 しっかり落ち着いた俺は落ちたスマホを拾う。ヒビが入ってないか確かめようと画面をつける。


 すると一件のメッセージが届いていた。相手の名前は言うまでもない。


 内容はだいたい予想がつく、そして結果どうなるかも安易に予想がつく。きっとこうなることは昔から決められていたかもしれない。運命というやつだ。あまり信じないタイプなのだがこればかりは運命と言われたら信じる以外ない。


 メッセージ内容を見て俺は笑う。やはり予想通りの内容すぎて。


 俺は返信をする。


 『了解。明日行くよ』

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