久しぶりの家族集合
海水浴に弓波、神山と出かけたのが1週間前になる今日、俺はいつもと変わらぬ休日を過ごしていなかった。こんなこと言ったら弓波も神山も倉木も珍しいこともあるもんだな、なんて言ってきそうだ。
そんな今日、いつもと何が違うのかというと、両親が海外から3日ほど帰ってきていることだ。両親が海外に行く前、夏に1度帰ってくると本人たちに伝えられていたのでサプライズでもないので驚きはしない。なんなら前もって伝えられていたから準備をしていたぐらいだ。
両親はともに医者だ。海外に行く理由は、幸せに暮らすことのできない子供たちを救いたいからという世間からしてみればすごいと評されること。俺自身もこのような素晴らしい親のもとに生まれてきてよかったと思える。
「一人暮らしを始めて、何も困ったことはないか?」
「まぁ、これといった困りごとはないよ」
父の問いかけに塩らしく答える。反抗期だから塩なのではなく、もともとこういった話し方をするのが俺だ。そんな俺を当たり前と思い、前から変わってない様子に安堵した表情を父は見せる。
「そういえば母さんは?」
家に来たのは父だけ、母はまだ目にしていない。そのため荷物は全て父が持ってきたのだが、量が多くほとんどがお土産だったので上手いようにこき使われているのだと分かった。父は母に勝てない。
「買い物に行ってる」
「ふーん。何を買いに?」
「それは父さんも分からないよ。晩ごはんの材料でも買いに行ったんだろうけど」
「あーそれあるね」
中学までは母が毎日ご飯を作ってくれていた。父はあまり得意ではないので口出しをすることもなく美味しいと1言言いながら食べていた。あの頃が懐かしく思える。たった4ヶ月半ほどなのに。
これも影響されてるのかもな。
そして父が家に来て30分経過して母も家にやってきた。両手には何やら荷物がたくさん。それを見てすぐ父は荷物を取りに行く。優しさからなのか何か言われる前に動かないとっていう恐怖からなのか、それは誰にもわからない。
「久しぶり、湊。見ないうちに大きくなった?」
「どうだろう。伸びた気はするけど測ってないから分からないよ」
多分3cmぐらいは伸びたんじゃないか?なんであれ170後半は絶対にいっている。同い年の男子の平均身長よりかは高いだろう。
「これ何を買ってきたんだ?」
思ったより重そうに荷物を持つ父がその重さの理由を知りたいと母に尋ねる。
「今日と明日のご飯の材料とその他にもいろいろよ」
「それでこんなに?すごいな……」
納得はできなかったようだが、中身を除いてやっと納得したらしい。重く感じるのはただ自分の老化のせいなのではないかと思うのは隠しておこう。
久しぶりに家族が揃う。世間一般の家庭は知らないが、俺の家庭は賑やかな方だと思う。ほとんど母が原因なんだが。
ってことは必然的に俺の性格は父から受け継いだものだと分かる。父も俺と似た学校生活を送っていたのだろうか。それなら昔の父とは仲良くなれそうだ。
「日本は暑いねー。なんでこんな暑くなるんだろう」
リビングで作業を終えた母がソファまでやってくる。冷房に当たりたいのだ。家の中で冷房なしに夏を過ごせる人はいるのか?いるのならその人は超人だな。
久しぶりの日本、久しぶりの長期休暇に体がだらけてしまうのも無理はない。母と父はともにソファの背もたれに全てを預けていた。
なんか毎日俺あんな感じだよな……。
自分が恥ずかしく思える。基本家に帰っては冷房に当たって楽をする。そして寝るまでやりたいことをやるだけの日々。どこからこんな遺伝子を引き継いだのだろうか、いや、遺伝子じゃなくて性格の問題だな。
テレビを2人仲良く見ている隣で俺はスマホを眺める。テレビよりネット派だし、最近ではテレビ離れする人も多いとかなんとか。実際俺の感性に合うテレビ番組は無いから離れてしまうのは仕方のないことだ。
それにしても両親は相変わらず仲がいい。父は尻に敷かれているように思えるがそんなことはなく、母のやりたいようにすることが父にとっての幸せらしいので、こんなまったりした空間が良いなら父も賛成するし、嫌だと言えば賛成する。
もちろん父もやりたいことなどはしっかり言葉にして伝える。それが否定されず通るのは相性がいいから以外理由はない。
「学校はしっかり行ってるの?」
CMに入ると俺に話が振られる。
「毎日欠かさず行ってるよ。最近は休みだけどね」
「そう。それなら良かった。母さん、湊に学校に友達いなくて寂しく泣いてるんじゃないかって心配だったのよ」
両親は俺に友達がいないことが当たり前のように言ってくる。確かに中学とかはいても1人2人だったからそう思われるのも仕方ないことだ。
だけど今は全く違う。
「ちゃんと友達もいるからそんな心配しなくても大丈夫」
親からしてみれば子供が1人で寂しく学校に行くことが苦しくて寂しくて申し訳ない気持ちを生むのかもしれない。だけど俺は1人で学校に通ってもクラスの中に入れば友達はいる。それも自分と気の合う人ばかりが友達だ。
友達は多ければ多いほどいいもんじゃないと思う。少なくてもお互いに気を許せて気を合わせなくて済むような友達ができたらそれでいい。
「そう。それなら母さんも安心よ」
俺の目を見てそれが真実だと察した母はそれ以上詮索することはなかった。これだから母という存在は支えになる。子供を知ろうとするのは親として当たり前。だけど深くまで潜りすぎないようにするのもまた当たり前だと、俺は親なんて知らないがそういうものだと思っていた。
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