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海水浴⑥ 真実はビーチフラッグの後で




 かき氷は意外と溶けない。まだ帰ってきていない神山のかき氷がそれを証明している。イチゴ味のため赤く、甘そうな見た目をしている。こうやってかき氷を買って食べるのも実は初めてだったりする。


 ブルーハワイを選んだのは何となく。


 口に入れるとシャリシャリと音は立てず、舌の上で溶かして食べる。いい感想は出てこない。ただ美味しい。


 容器に入ったかき氷をシャリシャリするだけでそれ以外は、あー暑い、という声しか聞こえない。話に困っているわけではなく、この感じが俺たちにとってちょうど良かったので無理に話しをしてないのだ。


 「ただいまー」


 「おかえり」


 長いお手洗いから帰ってきた。


 「いやー、やっぱりナンパは大変だね」


 「神山もか?」


 「私も?あー楓華もされたんだ」


 長い理由はそういうことか。この感じ、さっきの男たちとは思わないがワンチャンありそうなのが世間は狭いと思わせてくれる。


 「どんな対応を?」


 1番気になるのはここだ。弓波とは違い、イライラもなかっただろう神山はナンパにどう対応したのか。弓波の対応が面白すぎて聞いた俺はどんな対応で撃退したのか聞くことにワクワクしていた。


 「そんなの、興味ありません、って言ったら終わったよ」


 「それだけかよ」


 「違うでしょ。睨みながら興味ねぇよって言ったんでしょ」


 「あはは、バレてるー」


 「え、まじで?男に対して?」


 「yes!」


 親指を上に立てる。さっきより機嫌がいいように見えるのはなぜだろう。フラストレーション溜まってたのは弓波だけじゃなかったとか?


 神山もなかなか恐れ知らずだ。まぁポンコツだから後先考えないだけなんだろうけど。それでもナンパに正面から断りを入れれるのは大したものだ。


 神山もかき氷を手に取り食べ始める。弓波に比べて童顔な神山の、かき氷を食べる顔は妹を見ているようでホッコリする。妹なんていないが。


 「んー!やっぱり夏はかき氷だね」


 食べる速さはなかなかのもの。頭がキンキンしないのは不思議だが食べ慣れてるからだと勝手に思っておく。


 俺は先に食べ終わり、続いて弓波も食べ終わった。赤と青の水滴が底にポツポツと溜まっている。これもテレビや漫画でよく見るかき氷の食べ終わった後の容器の姿なんだと生で見れたことにちょこっと感動する。


 「来栖くん、舌出して」


 「ん?はい」


 言われた通り5割程度舌を見せる。


 「ふふっ、やっぱり青い」


 「そりゃブルーハワイだからな」


 こんなありきたりなことでも俺にとっては初めてで、それを笑ってくれることでさらに花が添えられる。なんだかここに来てからメリットしかない気がするな。


 「弓波はどうなんだよ」


 「はい」


 「ははっ、赤いじゃないか」


 舌の色に似ているから青ほど分かりやすくはないが、それでも色はついていた。思わず笑みがこぼれる。それを見て弓波も。


 「ねぇねぇ、私のも見て!」


 べぇーと言いながら見せてくる。弓波より赤く、はっきりと分かった。


 一緒ぐらい赤いと言えば、えへへと子供じみた笑みをこぼす。こんな神山を見れるのは男子で俺だけだと思えば、優越感よりも嬉しさが勝つようになった。そうなったのはきっとあの日からだろうな。


 そして神山もあっという間にかき氷を食べ終わる。休憩にしては長くて色々あったがこれもまた都会の海あるあるなのかもな。と、初めて海に来た俺は、都会の海はこういうのが当たり前なんだと錯覚をしていた。


 「次何しよっか」


 切り替えは早いらしく、神山は背伸びをして遊ぶ気満々だった。


 「こういうのもあるけど」


 「おおーそれいいねー」


 弓波が出したのはビーチフラッグの旗。もうこれだけで何をするのか理解できた。ってかもう言ってるが。


 「ビーチフラッグか。俺負ける気しかしないんだが」


 男だが2人に走力で勝てる自信がない。体力テストでの50m走で2人とも6秒代を出したとかいうバケモノだ。俺も6秒代だが、反射神経とか絶対に2人のほうが良い。


 「来栖くんが思ってるよりビーチフラッグは分からないわよ。砂浜だからこけることもあれば、単純に足が速い人が強いってわけでもないから」


 「そうなのか?ならありだな」


 「よしやろー!まずは15mとかにしとく?」


 競うことになればやる気が出るのは2人らしいな。負けても何も罰ゲームはないのにそれでも本気でやるのが伝わってくる。


 特に神山は弓波にライバル心を持ってるから熱くなりやすい。弓波は楽しむことが1番で、その次に勝つことを大事にしてるらしい。でも負けず嫌い。


 2人ともお互いの実力は同じと思ってるみたいだから揉め事とか起きない。逆に僅差が多いから煽りが効くという、俺にとっては最高の性格をしている。


 「私旗ぶっ刺してくる!」


 神山が旗を握りしめ、やる気に満ち溢れた拳を握って走っていった。


 再び2人になった。その時あのことが脳裏をよぎった。


 「私たちも行きましょ」


 「そうだな。ん?あれ何?」


 座ったまま弓波の後ろを指差す。もちろん何もないが、弓波は後ろを見る。体も同時に後ろに行き背中が俺の目の前に来る。


 やはり見間違いでは無かった。はっきりと背中、肩甲骨の上に傷跡があった。俺の幼馴染とほとんど同じ場所にある傷……まさかな。


 「何を指差してたの?なにもないわ」


 「うん。何もないとこ指差したからな」


 「……やったわね。これから覚悟しなさい」


 「弓波。騙される方が悪いって知らないのか?」


 「ふんっ!」


 これまた遊びに本気にさせてしまったな。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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