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海水浴③ みんなやったことある?




 やはり足は届かない。ゴーグルは持っていないので下を覗いてどれだけ足と海底の差があるのか確かめることもできない。慣れた人ならゴーグルをつけずに海水の中でも目を開けれると聞くが、それは大したもので、俺のような初めての人には不可能だ。


 それにしても思っていたより透き通る海水に少しばかり驚いた。テレビで見る海は海外や離島などのキレイな海ばかり。そのせいで勝手に海は透き通るほどキレイなものと思っていたがまさにイメージ通りの美しさ。


 都会の海は砂が巻き上がったりゴミがあったりと砂浜、海水ともに汚いと言われているがそんなこともないようだ。


 「ここまで来ると浮き輪必要だね」


 人が多く、混んでいる筏には行かない。だから俺たちは少し離れたとこで浮き輪を筏代わりにしてプカプカと浮く。


 「ってことは神山は足がつくとこじゃないと泳げないってことか?」


 「そんなことないよ。浮き輪なかったら体力削られるじゃん」


 「言われてみれば」


 何にも掴まらず足をバタバタさせ手を必死に動かす自分が想像できる。多少体力があれど持って5分いかないってとこだろう。海は思ってるより体力を削る。


 2人とも浮き輪は表が透明、裏が白。俺が使うならただの浮き輪でも、映える人が使うなら自分をよく見せる小道具になる。


 神山の肌の色が夏休み友達と遊んでいたのを証明しているのと反対に、弓波のキレイで白い肌は特に外で遊ぶこともなく家で過ごしていたことを証明していた。ここで弓波と外で遊べたことは思い出となるが弓波も思い出として残せると思うと笑みが作られる。


 「ねぇ、こういう時って誰が1番息を止めれるかとかすると思うんだけど、どう?」


 浮き輪を掴む両手の人差し指が上下に揺れる。弓波の恥ずかしさを表しているのだろう。こっちまで恥かしくなるな、共感性羞恥というやつだ。


 「いいけど、言い出しっぺが負ける方程式知らないのか?」


 「え、対して運動もできない来栖くんに言われたくないわ」


 「言うねぇ。負けたときの言い訳を聞くのが楽しみで仕方ない」


 「こっちもよ」


 「私もする!」


 ありきたりだけど少人数で楽しめる遊びとしては十分だ。


 「誰かスタートの合図しないとだろ」


 「私がするわ」


 「分かった」


 ここですぐ始まるだろう勝負に準備をするため大きくいきを吸って肺の中に空気を溜める。と、その時右隣から視線を感じた。右隣、つまり神山の方向から。


 吸った息をパンパンにしたまま神山をみる。すると何かを企んだ顔で1人頷いていた。どういう意味なのか全く分からなかったがそれはほんの一瞬で、俺はすぐさま意味を理解した。


 俺は頷き返し目を逸らす。


 「いくわよ、よーいスタート」


 そして3人同時に海中に顔を入れる。そして1秒ほどで俺は海面に顔を出す、バレないように。タイミングは同じだったようで神山もすぐに顔を見せた。合図を出した本人はまだ海の中。


 「なかなか面白いこと考えるな」


 「でしょ?やっぱり私って天才!」


 こんなこと思いつくのは天才……とまではいかないと思うがいい案だったとは思う。


 「早く上がってこないかな」


 「もうイジる気まんまんだな」


 「いぇい」


 空腹時に注文した料理を待つ子供のようだ。人をイジることになればここまで周りが見えなくなるのかと思うほど目が弓波に集中しているんだということを伝えていた。


 40秒経っても顔が出てくる気配はない。さすがは弓波、肺活量は女子高校生の並大抵のものではないようだ。


 「ぷはぁ!!」


 っと出てきたのは息を止めてから1分ほど経ったとき。相当我慢していたのか息切れが激しい。ここまでして勝ちたかったのか、いや、楽しみたかったと思うと可愛く思える。


 「私……はぁはぁ……1番?」


 「うん。楓華が1番に長く息止めてたよ」


 今にも笑いそうな顔を何とか笑わないように堪える。すべてを知る俺からしたらこの状況が面白すぎて顔を下に逸らすことが限界だった。


 「ホント?やった!」


 喜ぶ姿はお金を払ってでも見たいと思えるものだ。


 「どう?来栖くん。負けの気持ちの感想を聞かせてほしいのだけど」


 再び神山と目を合わせる。ネタバラシしていいと伝えられたのでこれから弓波に恥ずかしくなってもらう。


 「負けも何も1人でやってたんだから勝ち負けないだろ」


 言われたときは?が頭の上に渋滞していたがすぐにその言葉の意味を理解したのか海面を軽く叩く。


 「まさか2人とも1人で潜る私を見て楽しんでたってこと?!」


 「そういうことになるな」


 「はぁ?!ホントにありえない!私だけとか!……」


 頬の赤さは今日1番だった。もう日焼けのせいにはできないほど真っ赤で何とも可愛い以外の言葉が見つからなかった。


 「あっははは!楓華ホントに可愛いんだから!」


 当然のごとく神山は爆笑中。


 弓波は恥ずかしさからか顔を海面に入れていた。2回戦やるんですかとツッコんでやろうかと思ったがさすがにオーバーキルはやめておく。


 こういう恥ずかしさを感じたあとの息止めは普段よりも長く、いや、無限に止めていられるほどに感じる。もう海面に出たくないと思うからなのだろう。


 「いやーこんなにも可愛い楓華を見たのは久しぶりだよ」


 顔は海の中にあっても耳は出ているので聞こえているだろう。ついでにゲラゲラ笑う声も。


 弓波はまだ顔を上げず、口から空気をボコボコ出し始めた。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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