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幼馴染は記憶にはいない




 「あの時は冗談で言ったけど来栖くんってホントに海に行ったことないの?」


 「マジでないぞ。そんな友達いないし」


 友達いないと言いたくない人は多いみたいだが俺はそこまで気にしていない。ここ最近充実し始めたからではなく、その前から。


 思うのだ。え、来栖友達いないの?なんて言ってくるやつがいるならそいつは俺と似たような立場にいるって。そいつが友達と充実した生活を過ごせているのなら、話しの中心にいるはずだ。ほとんどは自分に陽キャたちの気を引きたいから俺を材料にする。なんとも面白くバカらしい。


 おっと、こんな俺の悲しい陰キャの話はこの場の空気と雰囲気に合わないな。


 「じゃ幼馴染とかもいないの?」


 幼馴染という単語に反応したのは俺。幼馴染となら海に行くのかっていう反応ではない。


 「幼馴染か……いた……けどよく覚えてない」


 「幼馴染をよく覚えてない?どういうこと?」


 聞き返されるのも無理はない。幼馴染とは幼い頃の親友、つまり今で言う倉木、弓波、神山のことを忘れていると言っているようなものだから。


 「俺、今はもう1人で家にいるけど、高校入学前は親の仕事の都合で転校の繰り返しだったんだよ。それでその子とは小学入学前に仲良くなったけど、俺が小学入学と同時に引っ越してそれから小学で4回、中学で2回の転校したせいで記憶が混じってさ、そしたらもう名前も顔も思い出せないんだ」


 分かるのは幼馴染としてその子がいたということだけ。


 親は高校入学とともに海外に行ってしまったので俺は引っ越すことはなくなった。


 「へぇ、なんか大変だね」


 「今思えばそうだけど当時はそんなでもなかったな」


 「だから友達が倉木くんしかいないのね」


 「まぁそうかもしれないけど、転校してなくても今とさほど変わらないと思うけどな」


 どうだろうか。こんな性格になってしまったのは転校が関わってくるのなら一概にそうとは言えない。今から過去のことについてどうこう言っても変わらないのだからやめておこう。


 「私と似てるわね」


 思わぬことを発する弓波に何言ってるのと目を向ける。いつも俺が向けられる側なのだが今回は違う。


 「似てる?弓波も幼馴染いたのか?」


 「ええ。でも来栖くんじゃないわ」


 「()()()()()()


 「でも私も幼馴染がいて思い出せないってとこだけは一緒よ」


 「俺が言えたことじゃないが幼馴染忘れるってなかなかに最低だよな」


 幼い頃のメンタルなら友達じゃないって言われただけで泣きじゃくりそうだ。なんなら今思うがこんな最高級の容姿をした人に言われるなら人生の終わりを感じそうだ。


 「それで、なんで忘れたんだよ」


 「……普通に忘れてたわ。その子とはそんなに遊んでないから幼馴染と言えるかは分からないのだけれど」


 「は?え?それ俺よりも最悪なやつだろ」


 「これは楓華の性格が悪い方に転がりまくった結果だね」


 普通の忘れるほどの幼馴染。まぁ弓波の言うことが本当なら遊んだ時間が少なくて幼馴染と言えるかわからないほどならありえないこともない。それでも自分で幼馴染がいると言い始めた上でこれはもう擁護のやりようがない。


 「もしそれが私だったら泣いちゃうなー」


 神山と弓波が幼馴染とかどんな世界線だよ。一目惚れコンビだな。


 「はぁ、弓波は結局昔から今まで変わらないってことか」


 「そうね」


 聞いたけど分かったことは幼馴染を忘れていた理由と、俺と似ているということだけ。奇跡が起きることはなかったな。


 ――そう思われるこの時、日本語と人の性格とは面白いもので俺含め3人に共通している勘違いがあった。それは――。


 「それ、もう少ししたら完全に溶けるぞ」


 「あーこれ?楓華からもらったけど私も……ね?」


 「なんだよそれ」


 マンゴーは口に入ってもライチまでは美少女たちの口を虜にすることはできなかった。むしろ嫌われたまである。可哀想に。


 「じゃ、来栖くん食べてよ」


 「言われると思った」


 「言われると思ってると思ってた。ってか待ってたんじゃないの?ムッツリ来栖くん」


 「って言われると思った。待ってない。視界に入ったから気になって聞いただけ」


 心理戦を繰り広げた結果俺の読み勝ち。1枚上を行った。神山とは会って2週間ぐらいなのだが弓波より扱いやすいと思う。


 「今回は負けてあげる。次は勝つ」


 「何の勝負だよ」


 渡されるライチアイスは三分の一残っていた。仲良く三分の一ずつライチを分けたと思うとおかしくて口角が上がる気がした。


 隣では美人がバニラアイスをすでに食べ終わっていて、目の前でも食べ終わった美少女がスマホを見ながらたまに俺をじっと見てはニヤッとする。可愛いのがズルい。が、隣でアイスを食べる美人も可愛いのが余計にズルい。


 恥ずかしいからやめてくれなんて言ったら逆効果。無視が最善。


 「ごちそうさま」


 食べ終わる頃には周りに人は来たときより半分ほどになっていた。それでもこの人の多さかとは思うが。


 「よーし、それじゃ捨てたら帰ろっかぁーー」


 背伸びをグーッとして気持ちよくなっている。何をしても絵になるのは美少女故だろう。


 「やっと自宅に戻れるのか」


 「さっき俺以外は幻滅してるとか言ってたけど、私と結奈からすればこの状況で早く帰りたいって思う来栖くんが不思議で仕方ないわ」


 「それは2人と初めて関わったときの俺なら早く帰りたいとは思わなかっただろうけど、今じゃもう2人の容姿の良さは知ってるからいちいち気にしないな」


 でもまぁ、まだ2人といたいとは思うけれど。


 口には出さない。聞かれていいことなんてないから。


 そしてショッピングモールを出て帰路につく。16時半でも全然明るく昼と見紛うほどの陽光は肌を刺すことは()()()()


 帰路ですら他愛のない話しばかりなのに充実していると思えるのはきっとその影響かもしれない。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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