海パン1つに手こずるんです
他愛のない会話を続けながらついた場所は大型のショッピングモール。洋服はもちろん、家具やアクセサリーなどさまざな物が売ってある。最上階には映画館もあり、長期休暇の今、ここだけの人口密度は相当なものだった。
それに真夏日という最悪のコンビも揃っていて、今のとこ何一つとして良いことはない。こんなとこ倉木とも来たことなんてないし。
でも来てしまったのなら何かしらしないといけないと思うし海パンも買わないといけないので足は止められない。弓波と神山はそんな中でも平然としていた。さすがは毎日学校で多くの取り巻きを相手にしているだけはあるなと感心する。
俺にもその耐性が今だけほしい。
「久しぶり来てみるとやっぱり人多いね」
「そりゃ、今は長期休暇だからな。逆に少なかったら違和感あるわ」
一階を見渡し、二階を見上げる。親子連れが多いのは旅行だったり、映画スタートまでの時間つぶしといったとこだろう。少なからず女子だけ、男子だけの集団を見かけたが全員知らない顔。カップルもいるが思ってたより少ない。その中の8割ぐらいが学生カップルだ。みんな青春してるんだな。
俺も傍から見れば両手に花。ここにいる誰よりも青春をしていると思えるだろう。でも実際そんなことないってことが少し残念だ。
中に入れば入るほど人混みの中に入ることになり、通り過ぎるだけで肩がぶつかりそうなほど接近する。そのため歩くだけで通常の倍疲れる。だから人混みは嫌いなんだ。
「目的地はどこなんだ?」
「もう少ししたら私たちはつくけど来栖くんの目的地はまだ先かな」
さすがは神山、このモールに来たのは久しぶりらしいがそれでもマップは頭の中に入っているようで何も見ずに進んでいく。
「了解。じゃ俺は先に行っていろいろ買ってくる」
「おっけー。迷ったらちゃんと迷子センターに行くんだよ?」
「神山ほどポンコツじゃないからそれはない」
「ホントにー?」
そこまでポンコツ度合いを知らないが、おそらく相当なものだと推測している。弓波によって賢くてスポーツ万能の人は性格に抜けてるとこがあるって証明されてるから。
「私たちもいろいろ買うから終わったら5階のフードコートで待ち合わせすることにしましょ」
「了解。弓波も迷い過ぎるなよ?水着と道」
「うるさい。結奈が居れば大丈夫よ」
1人なら迷うってことを言ってるようなものだが、本人は気づいておらず何いってんのという目で見ていた。これも慣れたものだ。
「んじゃ」
そこで2人と別れ、海パンを買いに行くことになった。俺は海パン以外何も買おうとは思っていないが、もし目で見て気に入ったものや海で使えると思ったらその時は買おうと思っている。その他、掃除用具だったりもちらっと見ていくのもありだと思うが、時間をかけ過ぎるわけにも行かないので適度に。
やはり1人で行動するほうが多少楽だ。そもそも誰かとこんな人混みを歩くなんてそれだけで歩幅合わせたりして疲れるのだが、何より容姿の整いすぎた2人と一緒だと視線が凄すぎて気疲れしてしまう。
誰も悪くないのだが、あの美少女2人と並んで歩く男釣り合わなくね?なんて思われてそうで居心地が悪い。と同時に、どうだ俺は誰もが羨むような容姿をした2人と一緒に居るんだと優越感も感じている。優越感に関してはもう当たり前みたいなものだな。俺の悪いところでもある。
視線から解放され、少し楽になったとこで目的地についた俺は足を止めることなく早速良さげの海パンを探す。
本当ならどこかで腰を下ろしたいのだがそんなことをすれば何分もソファがお尻を離してくれない、いやお尻がソファを離したくないと言い、動かなくなってしまうのでやめておく。俺は自分のことをよく知っている。
正直海パンなんて派手じゃなければどれでもいい。女性の水着と違って海パンはどんな物を履いたって女性がそれに見惚れるわけでもない。それに俺はナンパをしに行くわけでもないので海パンごとき、着飾る必要もない。最低限ダサいと言われない、子供が履くような海パンでなければ満足だ。
と、歩きながらパッと良さそうと思った海パンを手に取りレジに持っていく。黒を基調としたシンプルデザインの海パンだ。他はあまり見てないので詳しくは知らないが最近はゾウさんの海パンといった奇抜なやつも売っているんだと最近の海パンにはついていけないと思う。
店員から袋に入れられた海パンを受け取る。セルフレジもあったが使い方が分からないので他の人に迷惑をかけると思いやめた。人とあまり関わりたくない俺は店員ですら関わりたくないと思ってしまう。極度のコミュ症、とまではいかないと思っているが近しいのかもしれない。
関わりたいけど関われない陰キャではなく、関わりたくなくて関わらない陰キャなのでそこは区別してほしいものだ。
なんて自分を良いように思いながら店を出る。結局目に止まったものはなく、掃除用具も見に行こうと思っていたもののそんな気になれるほど余裕はなかった。
「まじ疲れるなこれ……」
声量はいつもと変わらない。誰も俺の独り言を耳にしてないと確信できるほどにアナウンスや人の声でかき消されていたから。
周りの人も、特に親が疲れた表情をしていて共感をする。子供の付添なんてどれだけ大変か理解できていないが今この時の疲労については共感できるだろう。
そして荷物を持ち替え5階を目指し歩き出す。エスカレーターを作った人は偉大だな、こんな簡単に上に下にと行けるのだから。マジ感謝。
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