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夏休みの予定①




 7月も下旬に入った今、俺たちは一学期の終業式を迎えていた。そう明日から、夏休みが始まるのだ。


 休み時間、四方八方から夏休みに何をするか、何をしたいかといった話し声が聞こえてくる。高校1年というまだ進路について厳しく言われない学年の俺たちは誰しもが遊んで遊んで遊びまくりたいと思っているだろう。いや、誰しもではないな。一部の陽キャだけだ。


 だとしたらこのクラスの8割ぐらいは陽キャとなる。それほど38人しかいない教室では考えられないほどうるさかった。担任の先生はまだ教卓にいない。つまりこのざわつきを注意する人は1人としていない。


 「はぁ……」


 誰の目にも止まらない、意識すら向かないほどの小さいため息をついた。うるささにではなく、拘束されているこの意味のない時間に。


 俺はどちらかといえば陽キャたちのように浮かれている側だ。これから休みが続くということはそれだけ誰かの家に掃除に行けるということなので、そう考える楽しみから落ち着きがなくなる。早く来い教師。そして帰らせてくれ。


 願うと叶わないことが多い俺だが、今までの善い行いからか珍しく願って1分もせずに担任の先生は戻ってきた。


 「遅くなってすまん。これから夏休みでの過ごし方についてのプリントを配るから――」


 それから全員にプリントが配られると夏休みに注意するすこと、やるべきことを説明される。課題だったり、夜遅くまで遊ばないことなど中学校でも言われたことを毎年言われる。正直飽きた。でも教師側も説明をしなければいけないだろうから仕方ないと頬杖をつきながら聞く。


 「今言ったことをしっかり守って夏休みを過ごすこと」


 質問ある人と聞かれても誰からも質問はなくそのまま一学期が終了した。帰りの挨拶を担任の先生と交わし、掛けてあるバッグに手を伸ばし誰よりも先に教室を出る。


 倉木も弓波も寄せ付けない速さ、そして話しかけるなオーラを出すことで難なく教室を出ることができた。階段を降りる速さはまさに帰宅部の鑑。躓くこともなく下足箱まで辿り着く。


 「よし、今日は普通に帰れそう――」


 後ろを確認して安全を確保する。


 しかし、安全に出れたのは教室まで。玄関までは……無理だった。そこには倉木よりも弓波よりも厚くて高い壁が俺の前に立ちはだかっている。絶対に俺は呼び止められるだろう。そう確信できるほど目で圧をかけられていた。


 「なんですか神山さん……」


 神山結奈。弓波の家に泊まってからた話すことが増えた俺の友達の1人。容姿端麗、成績優秀の天使様だ。隣のクラスはこちらのクラスより断然終わりが早かったらしい。許さんぞ我が教師。


 「ははーん、やっぱり来栖くんは1番にここに来るんだね」


 弓波から聞いたのだろう。余計なことを言いやがって。


 「何用で?」


 「お話しは楓華が来てからにしようかな」


 「はぁ、そうですか」


 どうせ悪い提案をされることはないと分かっているのでここは早く帰ることを一旦諦める。夏休みはまだ始まったばかり、何日も余裕はある。


 目立ちたくない神山も最近は俺に話しかけるようになっている。嫌ではなくむしろ少し嬉しさが強かったりする。もちろん弓波も同様に。でも弓波は同じクラスということから直接話すことはあまりない。しかし泊まりの日以来、2度家に呼ばれたときはそれなりにいろいろ話した。


 本格的に夏になったと言っても過言ではないほど陽はチクチク肌を刺す。日陰でも日向でもさほど変わらない。今日は真夏日の33℃、それもそうかと納得する。


 「あっついねー」


 右手で首元を扇ぎ、左手は制服の下を掴みパタパタと上半身を扇ぐ。よくこれをやる女子を見るが本当に涼めているのか気になる。


 「早く帰りたいだろ?俺を止めたことを後悔しな」


 「べーつに、夏は四季で1番好きだし、明日から夏休みって考えるだけで暑さなんて忘れそうだよ」


 「……俺もそんなポジティブになりたいわ」


 夏なんてこれが当たり前。楽観視はしてないが年々暑さが増している気がして去年の方が良かったと思うのは俺だけだろうか。


 会話のキャッチボールをこの2回だけすると、取り巻きを凌いだであろう弓波がマイペースにこちらに向かってきているのが見えた。女神は人を待たせていてもゆっくりなんだと相変わらず人間らしさを感じる。その他、勉強運動完璧なのが今では意外で仕方ない。


 「ごめん。待たせてしまって」


 「大丈夫」


 申し訳なさが少し伝わる謝罪。それだけでもいつもの弓波と比べると十分謝っている方だ。え?なんか私悪いことした?みたいな顔をして家の掃除をさせる弓波とは大違い。ここは学校という、微々たるスイッチが入っているのだろう。


 「それじゃ帰りながら話聞く」


 「おっけーそうしよーう」


 もう話しながら帰ることは慣れた。玄関で話しても目立つだけで良いことはない、今までだってここに待たされてここで話をされたことは皆無。弓波と帰ることは当たり前みたいになっているが神山とはまだ違和感がある。出会った時と過ごした時間の差だ。


 何よりも不思議なのはこの2人と帰るときは誰も周りにいないということ。噂すら立たないのは学校七不思議の1つとしてカウントしてもいいぐらいだと思うのだがどうだろうか。


 校門を出る前、まだ校舎からは声が聞こえる。足を進めれば進めるほど玄関から部活のためにグラウンドに向かう生徒が増えるのが分かる。まさに俺たち3人は完璧なタイミングでの帰宅だ。


 俺たちの会話は校門を出てからスタートする。これも自然と決まってるルールのようなものだ。

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