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女神とお泊り⑧




 初めて友達の家で過ごす夜。しかも相手は弓波という学校1、2を争う人気者。普通はどうしようかあたふたして寝れなくなるのだが俺はそんなことなく体を横にしてからスマホを眺めているとだんだんと睡魔が来ていることを確認した。


 最近疲れが溜まっていたせいか、ソファでも気持ちが良く寝れそうだ。


 22時に就寝はいい子ちゃんでも早い方だが、もう睡魔に抗えるほど俺の意識は覚醒していなかったのでもうこのまま夢の中に(いざな)われようとスマホの電源を切る。


 大きく深呼吸して体をリラックスさせる。そうして万全にすると眠りにつき始めるのが分かった。


 でもそんな俺を邪魔したのは俺自身のなんでもなくやはり弓波楓華だった。いっつもタイミング良く何かを邪魔をするのはこの女だ。


 扉を横にカタカタとずらして中から姿を現した。


 「何してんだよ」


 暗順応している俺の目にスマホのライトが強烈に刺さる。すかさず手で影を作り、目を隠す。直視したら目がおかしくなりそうで今すぐ消してもらいたい。


 「なんでか寝れないのよ。来栖くんもそうじゃないかなって思ってきたんだけど」


 「残念、俺は弓波があと3分遅かったら夢の中だった」


 「あーそれは悪いことしたわね。でもこれで目が覚めたから何か暇つぶししましょ」


 「……俺に選択肢は?」


 無言で俺に右手を出し、親指と人差し指の先をくっつけて「ゼロ」と1言。その瞬間いつか俺も仕返しをするとここに決めた。せっかくの快眠チャンスを返してもらいたいな。


 でもそんな願いは叶うはずもなかった。


 「何するんだよ」


 「映画見る」


 「……ならいいか」


 わけのわからないゲームとか話しをするより寝落ちのできる映画ならまだましだ。それに見るのはどうせホラー映画だろうから暗闇の中で寝てもバレないだろう。


 電気はつけずにテレビだけをつける。するとスマホほどではない光がまた目を刺激する。俺が半分寝ていたのもあるがこのときなぜ人は両目を糸目にせず片目を閉じて片目を糸目にするのだろうか。不思議だ。


 「ホラー映画は好き?」


 「めっちゃ好きだな」


 案の定ホラー映画を見るようなので俺は嬉しさからワクワクしていた。単に弓波とホラー映画を見れるからというのもあるが。


 「これでいいかな……」


 何を見るか選んでいる。ホラーならなんでもいい、ただ部屋が暗ければそれでいいのだ。


 「再生するわよ」


 「いつでもー」


 態勢はソファに横になったまま。完全に寝落ちしますと言っているようなものだが弓波は何も言わない。


 リモコンを持って再生ボタンを押した弓波はそのまま俺の頭の上にあるソファの空きに腰を下ろした。独り占めしていたわけでもないのでここに来ることは問題ないのだが、このまま寝てしまったらその度起こされてしうのでそれが1番の問題だ。


 「寝かせないわよ」


 俺が寝ると分かっていたようで、私がここに来たのはちゃんと理由があるのよ、と言い方は違うがそう忠告された。


 「ちゃんと最後まで見て寝ます」


 これじゃどうやっても寝れないので体を起こして掛け布団に包まったままホラー映画を見る。ちなみにチョイスはポルターガイストが起こる家で主人公の家族たちがなんとかしようと奮闘するものだった。


 まぁ面白そうだ。


 「使う?」


 掛け布団もなにも持っていない弓波は冷気にちょくで当てられる。夏の夜とはいえそれは体に良くないだろうし、何か包まるものがあったほうが人の視線を感じたり近くに誰かがいる感覚を錯覚するホラー映画には良いだろう。


 「一緒に使うってこと?」


 「そんなわけないだろ。俺は必要ないから1人でどうぞ」


 「でも……」


 「夏風邪はめんどくさいぞ。それに取り憑かれたりしてもめんどくさいぞ。だからここは使っとくのが、めんどくさがりさんにはいいと思うけどな」


 「……ありがとう」


 いい匂いの掛け布団を手放すのは惜しいが、横を向けばその匂いはすぐフワッと感じれるのでまぁいいかと諦める。


 申し訳無さそうに、でもどこかしら嬉しそうな表情で包まる。美人からは考えられない可愛さにギャップを感じてフワフワとした気持ちが浮かび上がる。これが癒やされるというやつだろうか。

 

 そしてしばらくしてから絶叫タイムが始まった。終盤に近づくにつれてポルターガイストが増え、その原因である幽霊さんも登場時間が増えていたため弓波はキャッと何度も言っていた。


 耳を劈くような高音はどこから発せられるのだろうかと不思議に思う。どちらかといえば女子の中で低い方の弓波だからこそより強くそう思う。


 俺はそんな中でなかなかビビりながらも微かな睡魔と戦っていた。今寝かせてもらうのは遠慮したい。でも自然と隣から不定期に聞こえる声のおかげで抗わずとも起きれている。


 ――残り20分ぐらいになると叫び声が聞こえなくなったのに気づく。ちらっと顔を覗くとこちらも睡魔と戦い始めていた。だんだん瞼が閉じていき、完全に下がった瞬間にまた1番上まで上げられる。


 こういうとこを見ると幼気しかないと言ったことは間違いではないように思える。同級生の中でも大人びている弓波からの、想像できないほどの幼さはとてつもない魅力でもあるな。


 そんな弓波もきっと叫びすぎて疲れたのだろう。このままいくと最後見る前に寝ると思った俺はそのままにして映画を見続けた。


 そしてエンドロールが流れ始めた頃には完敗していた。


 掛け布団に包まったまま瞼を開けることなく、スースーと耳を澄まさないと聞こえないほどの鼻息を立てて見せる、寝顔というものが俺に強い印象を残した。


 このままここで寝かせるより部屋で寝るほうがいいと判断した俺は弓波をお姫様抱っこして運ぶ。そっと起きないように。


 「軽っ」


 想像以上に軽すぎた弓波に思わず声に出してしまった。細くて柔らかい始めて触れる弓波の体。華奢で守らないといけないという思いが芽生える。それほど女子の体は大切にしなければいけないとここで実感した。


 これ以上触れていると邪な考えがよぎりそうなので静かに急ぐ。


 勝手に部屋に入るのは申し訳ないと謝り足で器用に扉を開けて部屋に侵入する。そしてベッドの上まで丁寧に運び掛け布団をキレイにかけ直す。


 「おやすみ」


 1言かけて忍び足で部屋を出る。これが寝たフリだったなら俺は恥ずかしさで死んでしまうだろうな。


 こうして何もないわけのない、俺と友達との初泊まりの夜は幕を閉じた。

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