女神とお泊り⑦
弓波は素でいられる友達を作りたかったのだ。望んだ形ではないが、たまたま部屋の汚さを目にしてしまった俺と友達になるのは仕方ないことだが、弓波本人はそんなことは気にしてないようなのでなんだか俺まで嬉しくなる。
弓波がもし俺のような立場で学校生活を送りたい、と思っていない女子だったなら取り巻きとも友達として関わっていただろう。だから良く言えばおとなしい性格であることに感謝したい。
俺は弓波と関わるのが嫌なのではなく、弓波と関わることで標準が俺に向くこと、そして取り巻きが俺に話しかけてくることが嫌なのだ。
気を使うのがめんどうで本気で笑えない。なにより放課後含めプライベートの時間が搾取されるのが耐えられない。
だからこそ今ここで弓波と口に出してお互い素で関わることのできる友達と共有できたのは、そんな俺たちにとって【楽】であり【嬉しい】のだった。
「いつも来栖くんは私に「俺と関わっていいのか」って聞くけど私からも同じことを聞いていい?」
「つまり弓波と関わることで俺が何か嫌な思いをしないかってことか?」
「ええ、そういうことよ」
これはきっと今みたいに2人で関わること限定での質問だ。だから先程の嫌な理由を答えても意味がない。
「弓波が部屋を俺の楽しいと思える範囲で散らかしてくれるなら俺にとっては趣味として掃除できるし、女神と言われる弓波様と関われるのは恐悦至極ですので嫌だとはこれっぽっちも思いません。あっ、あと美味しいもの食べれるし」
思い出したタイミングが良く、手料理も食べたいと遠回しに伝えた。オムライスしかまだ食べたことはないが一品だけで理由センスの良さを感じたのでこれからが楽しみで仕方ない。
その他ももちろん本心だ。
「そう、ありがたいけどその女神様というのあまり好きじゃないわ。否定も悪い思いもしないけど私を知らない人からしたら初めて見る私の容姿に対するハードルが高くなるもの」
「そのハードルを軽々越えるのが弓波だから心配するなよ」
確かに100人の中で1人ぐらいは普通と思ってもおかしくない。もっと言えば100人の中で50人でも80人でもおかしくはない。でもそれは弓波よりも容姿の美しい人に見慣れた人か美人を知らない人か絶賛恋は盲目中の人ぐらいだ。
結局うちのクラスでは弓波を可愛くないと言う人はいないし学校全体でも耳にしたこともない。心のなかで可愛くないと思ってるかもしれないがそれは知らない。超能力者じゃないんだし。
少なくとも俺の知る限りハードルを越えられない弓波は想像がつかない。
「……来栖くんって私が自分の容姿の良さを鼻にかけても何もツッコまないわよね」
「弓波が本気で鼻にかけてたなら俺は友達なってないし。それにツッコまれるのを待つ弓波を無視し続けるのは楽しいんだぞ」
「……分かっててそんな……」
「なんだ、もう嫌いになったのか?」
「そんなことないわ。ただ来栖くんとはこれからも仲良くなれそうと思っただけ」
「ふーん」
ふーんとしか言ってないが心の中ではクラブに来たような感じではしゃぎまくっている。表に出さないのは恥ずかしいのとこれをネタにいじられる未来が見えるから。
別にいじられても仲のいい友達となら嫌な思いはしないが、プライドがある。俺は弓波をいじる側でなければいけないという。
可愛い一面をみたいし、可愛い一面をみたい。それに可愛い一面をみたい……あれ、同じことしか言ってない。まぁ、つまりはそういうことだ。弓波をいじるとどれだけ幸せか分かるのは男子では俺だけだろう。
取り巻きたちにマウントを取れると考えるとニヤけてしまう。
「とにかく俺は暇があれば弓波とも関わる。それが学校でなければな」
「私が暇したら呼びつけるわ」
「俺は弓波専用のロボットじゃないんだからいつでもかけつけれるわけじゃないんだぞ。だからたまには暇な時間を1人で過ごしてくれ」
「気分次第ね」
弓波の気分でほいほい呼ばれて、行ったら行ったで楽しいんだろうけど行かなかったら何をされるか分からないのが怖い。
さすがに友達を隠れ蓑にして学校生活に少しでも楽しさを感じようとはしないだろうが。いや、するかもしれない。弓波について詳しくなることも必要だな。
「こんな時間だから来栖くんもお風呂入ったら?」
掛け時計を見ると21時25分。いつもと比べれば何時間も遅い入浴になる。
「俺は入らないつもりだったんだけど」
「え?なんで?」
首に掛けたタオルの右側を右手で掴み頭を軽く吹きながらえ?っと気になってますよと目で訴えてくる。
「ここに来る前に風呂入ってきたし、人ん家のベッドとかソファで寝るなんて男友達ならまだしも女子、しかも弓波の家なら壁に腰掛けて寝ようと思って」
嘘偽りなく答える。
「それならお風呂に入らないのはいいけど、さすがに床と壁じゃダメよ。最低でもソファ、それが無理なら強制でベッド」
いやそれでも床と壁、って言っても引かなさそうだったのでここは甘えておく。
「ベッドって弓波と同じベッド?」
「そんなわけないじゃない。使ってないベッドよ」
「なーんだ、じゃソファで」
まぁここで「そうよ」って冗談を言えば俺は動揺してたかもしれない。ここが俺と弓波との違いだと勝手に比較してマウントを取っていた。なんとも恥ずかしい。
とはいえホントに弓波と同じベッドなら俺からも断る。寝れないし、そんなことはしていいことじゃないから。
そうして弓波は自分の部屋に行き、俺はリビングのソファで就寝するため「おやすみ」と歩き出した弓波に伝えてその場に留まった。
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