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女神とお泊り⑤




 気分で寝巻きを決めているらしいが正直そんなことはどうでもいい。気分に合わない寝巻きを着たからといって怪我をするわけでも死ぬわけでもないのだから。


 なので7日間、月曜日から日曜日までの固定寝巻きを作れば解決する。弓波が嫌というのなら俺はどんな脅しをされてもこの家に整理整頓のために来ることはなくなるので心配ない。


 寝巻きを決められなくて優柔不断でめんどくさがりだから服を畳むの嫌なんです。なんて言われて毎日毎日呼ばれてはたまったもんじゃないからな。


 そうして7組の寝巻きを並べる。


 やはり女子は不思議だ。なぜこんなにズボラな弓波でも服や部屋からはいい匂いがするのだろう。俺の頭の中では【部屋が汚い。スボラ】は好まれないニオイ、つまり臭いという認識のため意外だ。


 体自体いい匂いなのか、それとも柔軟剤やクローゼット、タンスといった保管場所をいい匂いに保っているのか。分からないがとにかくこの部屋でいい匂いを保っていられることが羨ましく思える。


 イケイケの陽キャ男子たちはそういった美に関心が高く、最低限のことはしているだろうが、俺のような陰キャや倉木のような自由人にはそんな知識はもちろん、やろうとも思わない。


 それに比べ女子は全員と言っていいほど気を使っているように思えるのでおそらくここが大きな差なのだろう。


 「まぁ、脳の偏見による錯覚だろ」


 考えたどり着いてつぶやいた答えは答えとしてなっていなかった。何も知らない俺にはまだ先の先のずーっと先の話だったな。


 寝巻きを揃えたあとテレビを観ながらスマホをチラチラする。テレビを観ることはほとんどなくなった今、土曜の夜、平日に比べ人気のある番組があっても俺はスタイルを変えていなかった。


 ネットで動画を観るほうに移る人が増えてきた時代の中、俺はずっと前からネット派だったので今さら暇だからといってテレビを視線を向けることもないが。


 静寂を消すためだけにつけたテレビには20時36分と表示されており、弓波が風呂に行って20分たっていた。女子が風呂長いのも"やはり"といったとこだ。髪の毛はロングで運動をするとき気合を入れるとき――テストとかするときはポニーテールにしている弓波はキレイだ。いや、髪の毛がキレイだ。手入れをしっかりしているようなので時間がかかるのに納得だ。


 弓波が戻ってくるのを待つのもなかなか退屈だ。話し相手がほしいというか2人いる家に1人でいると、自宅に1人でいるときと違って寂しく感じる。


 めんどくさい気持ちだ。


 そして、相変わらずネットサーフィンを続ける俺に弓波の声が届いたのはさらに10分後だった。


 「ただいま」


 「ん、おかえり」


 弓波は夏でも湯船に浸かるタイプだった。露出している手足から微かな湯気が立ち上り、エロさが感じられる。色気といえば行き過ぎてるかもしれないが過言でもないほどに。


 風呂上がりの美人を見ればそれだけでフワフワするこの現象に名前がほしい。寝巻きと相性抜群なのもあって見惚れて目が離せない。まさに完璧だ。


 「クーラーあるからってシャワーだけじゃ無理なのか?」


 俺の質問に答えようとする弓波のキレイなピンク色をした唇が動くとそれにまた見惚れる。これはだめだ、本能が勝手に目を動かしていく。それが俺の癖だと言わんばかりに。


 「疲れが取れる感じを体感したいのよ。シャワーだけじゃ物足りないわ」


 「あーそういうことか」


 その唇から伝えられた言葉に俺は共感できた。湯船には浸かるだけで1日の疲れが飛んでいくような気分を味わえる。まさにその通りでここ最近はよく疲れが飛んでいくのを感じていた。


 「風呂上がり早速悪いがこれ、左から月火水木金土日、7つの寝巻きを曜日ごとに着てくれ」


 ソファの背もたれに両手をつきそこに顎を乗せ、人差し指で見ろ見ろと指を指す。


 「気分で決めたいとか言いたいだろうけどそんなこと言ってたらいつまでたっても俺が呼ばれるだけだからな。そうしてくれると助かる」


 まだ言い方としては優しいが、これはほとんど強制だ。


 「分かったわ、そうする」


 「……え?ホントに良いのか?」


 100%異議を申し立てると思っていたが故になにもないことに混乱する。そんな俺を見て何かを言いたそうな顔を向けてくるが意図は分からない。


 「来栖くんが選んだのなら別に何でもいいわ。迷惑をかけ続けるのは私としても嫌だから。それに気分で決めてるなんていうのは嘘で、からかうために言っただけよ」


 「はぁぁ?何だよそれ。じゃあんなに散らかすのはどうしてだよ」


 弓波の言うことが本当なら、気分に合わない――優柔不断で選べない――寝巻きをほったらかしにして散らかしていたというのが嘘になる。ちなみに弓波が優柔不断というのは本当だと確信している。


 「実は私……二重人格なのよ」


 「……はい、それで?続きをどうぞ」


 いきなりのカミングアウトに俺は過去の記憶を蘇らせる。考えると学校と家での弓波は大きく違いがあるため信じれるほどその要素はあるのだが、学校の帰り際に話しかけてくる弓波がそんなはずがない。この間およそ1秒。


 「……騙されなさいよ。イケると思ったのに」


 早々に諦めた。だがなかなか面白い冗談だった。


 「次は騙せるように頑張れ。それより俺はホントの理由を知りたいんだが」


 聞いても結局は深刻な問題ではないことが予測されるため俺は気を楽にして答えを待った。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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