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女神とお泊り④




 やはりソファに座っても尻は無理無理と辛さを訴えていた。だから体重を尻だけに集めないよう少し横になり軽減する。


 弓波が風呂に行ってくれればその間完全に横になれるのだが、なかなか風呂に行かないので目的も達成できない。


 「友達としての願いだ、早く風呂に行ってくれ」


 弓波の前で声に出して友達と言ったのはこれが初めて。むず痒いがこれもまた1つの経験だ。


 「……そろそろ行くわ」


 友達という言葉に反応を見せた。少し固まる時間を要し口に出した言葉は俺の尻が大喜びするものだった。


 効いたな。


 友達を否定しなかったことに嬉しさを感じる。おそらく弓波もそうだろう。雰囲気が柔らかく明るくなったと感じる。


 「そろそろが長そうなんだよな。時間で言ったらどれくらい?」


 「5分」


 「おっけい、それまで我慢する」


 「何を?」


 「あぁ、こっちの話しだから気にしなくていいぞ」


 尻のこと、なんてまだ弓波の顔を見て言える仲ではない。もしかしたら下ネタ大嫌い派の人かもしれないしな。


 首をかしげたままだが見てないふりをしてやり過ごす。気になったことはとことん知りたいという性格でもないだろうから聞き返されることもないだろう。その通り聞き返されることはなかった。


 それから5分はあっという間だった。カウントダウンせずともスマホの数字は5つ増えていた。それに気づいた俺は弓波にスマホの時間を見せる。


 「5分って意外と短いわね」


 「学校での5分は久遠のように感じるけどな」


 言い過ぎかもしれないが退屈を極めた俺にはそう思わなかった。始まった瞬間からあと何分で授業が終わるのか時計と見つめ合うのだが、何度秒針のスピードが遅いとイライラしたことか。


 「もう少し延ばそうかしら」


 「決めたこと守るんじゃないのかよ」


 あれは口だけで実際守らないことだってのは分かってる。めんどくさがりに決めたことを守ることができるなら俺は今ここにいない。でも弓波はなんだかんだ意味不明のプライドがあるので、自分で言ったよな?と煽ればすぐ乗っかってくる。


 こういうことでは扱いやすいんだよな。スネるけど。


 「はいはい、行きまーす。来栖くんの隣よりお風呂の中のほうが全然ましよ」


 ほらな。これが弓波とか神山とかじゃなければ可愛さなんて感じないだろうな。


 「おい、もう掃除してやらないからな」


 「噂広める()()()


 カウンターが強かった。俺にはだいたいこれを言えばいいと思ってそうだ。なんとかそれを覆してやりたいが頭が悪いため何も思いつかない。悲しいことだ。


 「はい、じゃ今日の寝巻きを選んでください、女神様」


 ぐだーっとした体を起こしてタンスの前で立ちっぱなしになった弓波に催促をする。クッションはほったらかしていた。抱かれていて見えなかったが、某赤い服をパツパツに着たハチミツ好きのマイペースクマの柄だった。


 なかなか可愛い。おとなしい性格の弓波にお似合いだ。


 「タンスの前で固まったまま動かないのはなんでですか?」


 催促しても動く気配のない。まさかここからなのか?


 「どれが今日の気分か分からないわ」


 予想的中!


 「俺が選んであげましょうか?分からないままだと嫌な予感しかしないので」


 「……いいわよ」


 嫌な予感が何か弓波自身も分かっていたようだ。


 「じゃ失礼しますね」


 タンスの中にはセットアップの寝巻きがたくさん並んでいた。色も形も様々だ。


 相変わらず弓波は手を顎の下において人差し指を口元につけ、食べるか食べないかの位置で動かしていた。悩む理由が俺には理解できないが人には人の性格があるため否定はしない。


 俺の掃除が趣味とかほとんどの人類がありえないと思うことだろうしな。


 「これとかどうだ?」


 グレーのもこもこを取り出し弓波に見せる。服について無知の俺は材料とか名称とかは知らない。興味のないことにはとことん無知だ。


 「いや、これにしよう。してくれ」


 優柔不断に質問するのはいけない。一生迷うからな。だから自分で方針を決めさせるときだけ?をつける。めんどくさくなりそうな未来が見えるなら?をつけず俺が決める。


 そうすれば少なくとも今までより時間はなくならないし、苦労することもなくなる。


 「……分かったわ。これにする」


 納得いきませんという面持ちだったが俺には関係ない。寝巻きごときに疲れさせられたら溜まったものではないし。


 「それ持って早く風呂行ってこい」


 「言われなくても分かってるわ」


 「……納得してないからってそんな嫌なのか?」


 「別にー」


 結局弓波は幼児退行したまま風呂に行ってしまった。ホント、弓波じゃなければムカついていただろうと何度も思う。


 弓波は、正確には嫌がる素振りを見せているだけだ。俺に対して嫌がらせやいい思いをしてほしくないというとこからくる演技。それを分かっているから本気で嫌がらせだと捉えないし弓波も俺がそう捉えると知っているからこそやめない。


 まさに幼馴染のような理解度だな。


 とはいえ思っていたより厄介な優柔不断だったので今後駄々をこねないように、こねさせないように予め寝巻きを用意しておくしかないな。


 俺はタンスの中にある寝巻きをすべて出して選別し始めた。女子の私物、それも寝巻きという犯罪者が集めてそうな物を勝手に触るのは良くないだろうが仕方ない。そう、仕方ない。


 下着はすべて別のタンスにしまってあるので間違いが起きても下着を目にすることはない。ってか興味ないが。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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