女神とお泊り②
話しをしながら作業を進めると弓波は普通に畳んでいく。1人のとき限定で整理整頓ができない、めんどくさ弓波が出てくるみたいだ。
「1人でもそうやってくれればいいものを」
「来栖くんだって1人で家にいるときめんどくさいことしないでしょ?」
「……なんかしっくりくるようなこと言うなよ」
それでも俺は自分でめんどくさいのも作ったりはしないと思う。つまり弓波とはめんどくさいことをしないレベルが違うのだ。そう思いたい。
「はい、終わり」
弓波とほぼ同時に畳み終えた俺は重ねた服を持ってタンスの上まで運んだ。弓波が私のも持っていってと言ってきたが俺はそれを無視した。もちろん弓波は頬を軽く膨らませていた。
「可愛いんだけど、性格が可愛くないんだよな……」
「何の話?」
「ん?何の話でもない」
口に出していたようで俺は焦る。こんなの聞かれたらネタにされそうだし、弓波を調子づかせるのは俺にデメリットしか起こさないから。
うまくごまかせたかは分からないが、意外と弓波はポンコツなのですぐ忘れるだろう。弓波がポンコツというのは俺が関わった上で思うことであって確定していることではない。が、ほぼ確定しているといってもいいほど抜けているところを見てきたつもりだ。
「もう18時だけど何か食べる?」
ドキッとしたがそれは表情にも動揺としても出さない。
泊まりならその人の家でご飯も食べないといけない。当たり前のことなのに頭から消えていて、気づいた頃にはいや気付かされた頃には手遅れの状況だった。
「もうそんな時間?んーありだな、お腹空いたし」
「分かった、食べたいものの希望は?」
「作ってくれるのか?」
「それぐらいしないと釣り合いが取れないじゃない」
整理整頓をめんどくさがったりするだけで、やらないといけないことには釣り合いが取れるようにする常識人だった。接する弓波の8割がズボラ弓波なので忘れていた。
それより弓波のご飯を食べれることに幸せを感じる。
「希望は思いつかないからめんどくさがりの人に効く食べ物を食べたいな、めんどくさい自分を治したいから」
「……それ私にも言ってる?」
「いやいやーそんなことないですよーそんなことしたら女神様に不敬じゃないですかー」
「……来栖くんには何か仕返しを考えておくわ」
「おいおい、そんなことしたら俺もう何も手伝わないからな」
反撃はできればくらいたくない。弓波が俺にする嫌がらせは陽キャと俺を関わらせようとすることだろうから、くらってしまえば最後、もう新波高校で勉強をすることはなくなるからな。
弓波に意地悪できたことで満足な俺はあたかも自分の家にいるかのようにテレビをつける。自由にしていいと言われているからその通りさせてもらっているだけだが、少し申し訳なさはある。
テレビは静かなこの空間を少しでもにぎやかにするためにつけていて、俺はテレビに目を向けることなくスマホでさまざまな動画を観ていた。
弓波の家なのに自分の家のように集中ができるのは1人と変わらないほど弓波の存在感が薄いからだろう。キッチンでもくもくと作業をしている背中からは話しかけるなオーラが出ていて、意識していないとすぐに忘れてしまいそうだ。
固まった体をほぐそうと軽く背伸びしたときタイミング良く料理も完成した。
「できたわ」
そう言って運んでくる1つのお皿にはオムライスが乗っていた。しかもふわとろ。でも俺はここで気づいた、なぜ1つだけ?
「それって弓波のご飯?」
「そうよ。自分のご飯は自分で作るでしょ?」
「俺のは……」
ここで俺は過去の発言を振り返る。すると弓波が俺の料理を作るとは言っていないことを理解した。これが嫌がらせというやつだな。
「弓波さん、今までの非礼を侘びますのでご飯を――」
「えぇー?やっぱりめんどくさがりの人に効くご飯食べたかったんですか?仕方ないですね、ほらこれ食べてください。本当に仕方ない人ですね」
堪えられなかったのか、話途中にさっきの俺の言葉を嫌がらせとして使ってくる。因果応報ここに極まれり。
「……ありがとうございます」
「はぁー満足したわ。これで今日はいい夢見れそう」
過去1スッキリした顔をしていてどれだけ満足しているのか嫌でも伝わってきた。めちゃくちゃ悔しいこの気持ちは一生の思い出だな。
「ほら、冷めないうちに食べて」
「え?弓波のは?」
「私?私はもう食べたわ。来栖くんが来る前にパッパとね」
「へぇ、そうなのか」
俺が弓波の家に来たのはおよそ17時半。それよりも早めに食べていたということはお腹が空きすぎていたのか別の理由か。それにしても早すぎるが。
「いただきます……そんな見るなよ、食べづらいだろ」
「そう?美人に見られるのって男子からしたら幸せなんじゃないの?」
やはり弓波自身も冗談とはいえ自分のことは美人だと思っているようで、俺の価値観は正しいのだと思う。
「今は幸せではないな。1種の嫌がらせされてる感じだから」
「そっか、私も来栖くん見てるだけじゃつまんないからテレビでも観よ」
「嫌がらせのために無理するなよ……」
そこまでして嫌がらせをしたい理由がわからないが、これも素の弓波なのだと俺はまた1つ知れたことに嬉しさを感じた。
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