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九十三話 英雄開業・十一

 「確認されとった魔獣は討伐して、ついでに盗賊も捕まえた。町へ帰ってムクッシュへ報告しようか。まあこいつに色々と話を聞けばまた仕事は増えるかもしれんが、な」

 「……はい」

 

 盗賊を抱え上げたヴァルアスに声を掛けられて、ブランはゆっくりと起き上がりながら答える。

 

 絞り出すようなその声は、単純にまだしびれが抜けきっていない様子だったが、とはいえ歩いて帰るだけなら大丈夫そうでもあった。

 

 ヴァルアスは気を失って担がれているその男を、ほぼ確実に盗賊であると判断していたが、そうなるとちらと口にしていた背嚢の持ち主である商人はおそらくもう無事ではないだろう。

 

 その被害者の遺体もできれば探して弔ってやりたいし、何よりこの盗賊におそらくいるのであろう仲間を放置はできなかった。

 

 そうなると、またこうした悪人の相手をする必要があるが、それが今一番の不安要素でもある。

 

 「うかつだったな。誰彼構わず疑えとまでは言わんが……、何があっても対応できる気構えは持っておけ」

 「そうですね……考えてみればオレたちから隠れるようにしていたのも怪しかったし」

 

 あっけらかんとしているというか、あまり引きずってはいない様子のブランだったが、反省して色々と考えてはいたようだった。

 

 「その状況もあったが、あの場合は服だな」

 「服? 何か変でした?」

 「ああ、落ちていた背嚢がかなり砂埃で汚れていたわりには、服の方はぼろいだけで汚れはそれほどでもなかった。背負って旅をしていたなら、それはおかしいだろう」

 

 瞬間的にヴァルアスが抱いていた違和感を、改めて言葉にしてブランへと伝えていく。

 

 「そもそも旅をする行商だとしても、あそこまで端がほつれた服をそのまま着ているのはおかしい。それでいてこれはやけに品が良い」

 

 取り上げていたショートソードを鞘ごと渡すと、ブランはまじまじと見回してから何度も頷いた。

 

 「さすがにそれだけで全部見破るなんてまあ無理だろうがな。しかし何かがおかしい、という感覚はあるはずだ。そういうひりつきっちゅうか、危機感みたいなものは磨いておけ」

 「はい!」

 

 そう言われて間を空けずに納得しているブランに対して、その素直さが不安だとヴァルアスはなんとも微妙な表情を浮かべる。

 

 だがそうした部分が戦闘時の果断さとして表れているために魔獣に対しては非常に強く、何より人助けを優先する気質は冒険者としてヴァルアスの“好み”に合致してもいた。

 

 「……ふ」

 「どうしました?」

 「いや、なに……これから大変だと思ってな」

 「そうですね、オレアンドル商店を軌道に乗せないとですもんね」

 

 この青年冒険者の先行きを期待と不安が半々で案じていたヴァルアスだったが、どこまでも前向きなブランの笑顔を見て、それも老婆心かと内心に押しとどめたのだった。

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