八十六話 英雄開業・四
ペップルが抱いた感想通りに好奇心が強い性格であるのか、あるいは単に空気が読めないだけなのか、金髪青年は紹介も待たずに建設現場やその周辺を見に行ってしまう。
「あ、えと……」
「ふう、まったくあいつは」
言葉だとヴァルアスも非難しているが、その言い方は柔らかく一定以上の好意が感じられた。
「ブランさんと知り合いだったのですか?」
「ついさっきからな」
そこでムクッシュからはペップルとは違う質問がされる。
地元の人間であるムクッシュは、そのブランを知っているようだった。
「おぉい! ……聞いとらんな。あいつはブラン・ユスティーツといってな、この辺りを拠点とする冒険者だ」
「はぁ……」
「そうですね。た、頼りない部分もありますが、なかなかお強い方ですよ」
名前と冒険者であるということ以外は何もないヴァルアスの紹介を、ムクッシュが補足する。
その「頼りない部分」というのがペップルは気になったが、そこを質問する前に周囲を見るのに飽きたらしい当のブランが歩み寄ってきたことで中断された。
「あれがその店ですかっ!?」
大きな声に大げさな身振り手振りでブランがヴァルアスに話しかける。
「おう、そうだな」
「あ、そ――」
「へぇ……、それでこちらは?」
ちょうど話題として“その店”が出たのに乗じて、ペップルが先ほどから気になっていた何をする店なのかということをヴァルアスに聞こうとするも、言葉が口から出かかったところですぐに次の話題へと移ってしまった。
だがその次の話題は矛先がペップルへと向いていた。
「ん? ああ、こっちはペップルだ。ワシの昔馴染みで行商人をしておるケネって奴の弟子だ」
「よろしく! オレはブランっていうんだけど、知ってる? 知らないか! あっははは」
「え? へ? あ、ペップル・シナモンクルトです……?」
歳が近いペップルに特別な親しみを感じたのか、紹介されるなりブランは勢いよくペップルの両手を掴んでぶんぶんと乱暴な握手をしてきたのだった。




