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七十四話 絆・九

 ようやく、という言葉でも短すぎるほどの時間を経て、ついに種族を越えて心を通わせたヴァルアスとティリアーズだったが、実際につがいとなるのは今少し時間を置いてからということになった。

 

 「すまんな」

 「そう思うなら、ゆっくり休んで」

 

 それはもちろんヴァルアスの体調が理由だった。

 

 少なくともティリアーズが知る限り、つがいとなる際に竜角の交換魔術をすることで消耗したり疲弊したりというのは聞いたことがない。

 

 しかし直感的な部分でできると確信を抱いているとはいえ、人族との前代未聞のつがいということで、特にヴァルアス側にどういった影響がでるかはわからなかった。

 

 おそらくだがティリアーズ側は潜在魔力を吸われることで、通常の場合と違い疲弊することとなるだろう。

 

 そしてヴァルアス側へは竜族の豊富な潜在魔力が注がれる形となるが、それによって単に強化されるのか、表面的には何も変わらないのか、あるいは負荷となってしまうのかが予測しきれなかった。

 

 そのため、今の体調不良の状態ではさすがに見送って、元気になってからにしようという話にまとまっている。もとより人族としては非常に潤沢な魔力量を誇るヴァルアスなら、本調子でさえあればそう悪いことにはならないはずという見立てだ。

 

 「報告と、あと立ち会いを頼むのに、私は一旦砦へ戻ってくるけど……大丈夫?」

 「ああ、その頃には治っているさ」

 

 通常の立会人はあくまで形式的なものに過ぎないが、今回は不測の事態への対処を頼むためにも信頼できる竜族としてデイヅを呼ぶこととなっていた。

 

 特に急がなかった場合、ティリアーズがノースの町からノース山脈砦まで行って帰ってくるのに、おそらくは二日か三日程度。

 

 それくらいなら養生する時間としてはちょうどいいとヴァルアスは考えていた。

 

 *****

 

 ティリアーズが部屋を出て数十分が経過した頃、再び微睡み始めたヴァルアスだったが、部屋へと近づいてくる気配に覚醒する。

 

 とはいえ、おとなしいようでどこか無遠慮なこの足音は知っているもの。

 

 「どうぞ。鍵は掛かっていないから入って構わない」

 「起きていましたか。お加減はどうですか?」

 

 ノックをする前に声がかかったことに扉越しで驚いたようだったが、入ってきた時にはムクッシュ・ヴェンは落ち着いた表情をしていた。

 

 「で?」

 「っと、いやいやあはは……敵いませんね」

 

 手にしていた見舞いの品らしき袋をムクッシュが開こうとする前に、ヴァルアスは用向きを尋ねる。

 

 「どうせ見舞いが主ではなく用があるから来たのだろう?」という意図を一文字に集約したヴァルアスの問いかけに、ムクッシュは後ろ頭をかいてみせるが否定はしなかった。

 

 そして結局袋は開かずに手近な卓上に置いて、ムクッシュが口を開く。

 

 「以前盗賊退治をお願いした際の話を覚えておられますか?」

 「む? ああ、魔獣の活発化で商人が街道を避けて……という話だったか」

 「ええ、その通りです。その魔獣の活発化で気になることがありまして」

 

 ヴァルアスから促したとはいえ、前日に倒れたばかりの老人を相手に次なる厄介ごとの話を始めるあたりは、実にムクッシュらしい振る舞いだった。

 

 「情けないことを言いたくはないが、ワシは今、体調が優れんでな」

 「ええ、もちろんヴァルアスさんが快復してからという話です。というのも活発化していた魔獣が今度は急に大人しくなったようでして。魔剣の力を持っていて感覚も鋭いヴァルアスさんに調査をお願いしたいのですよ」

 

 断るつもりのヴァルアスの声を遮るように、ムクッシュが一気に内容を言い切る。

 

 しかし実際に話を聞いてみると、「まあ調査くらいであるなら」とヴァルアスも思い直していた。

 

 「そうか……、それなら無理ではないな。明日か明後日になるかもしれんが、それでよければ引き受けよう」

 

 ちょうどティリアーズが戻ってくるまでの時間を考えながらのヴァルアスの返答に、ムクッシュは大きな声で「お願いします!」と言ってヴァルアスの手を取ったのだった。

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