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六十話 至高の木剣・八

 ヴァルアスの老練して研ぎ澄まされた感覚は非常に鋭く、痕跡があったからというだけではなく、林の中にいる何者かの気配というものも感じ取っていた。

 

 ただしそれは漠然とした「きっといる」というもので、どこにどれくらいということまでは当然わかってはいなかった。

 

 「あれか……」

 「そうです。あと、あちらにも一人」

 

 それがリーフの案内した先ではっきりと明らかとなる。

 

 樹上の枝葉の中に身を隠したヴァルアスには三人のいかにも野盗然とした男が見えており、リーフが示した今いる場所とは別の樹上にも微かながら確かな気配がしていた。

 

 「計四人、それも油断しているな」

 

 恐らく見張り役なのであろう樹上の一人を余程信頼しているのか、地面に座り込む三人は明らかに気を抜いている様子にみえる。

 

 それに数もヴァルアスが予想したよりも少なかった。

 

 あるいは、それは予想ではなくただの思い込みであったからかもしれない。

 

 それなりには発展しているノースを訪れる商人は、当然それに見合う規模で護衛も雇っているはず。

 

 となると、それを襲おうという盗賊も数としては揃えているはず――とヴァルアスは考えていたが、それは今回の事が異例の商人の動きにあわせた突発的な盗賊の行動である、ということを忘れた浅い考えであったようだ。

 

 「となると、捕らえるか」

 

 整えられたひげの上から顎を撫でながらヴァルアスは思案する。

 

 商人の安全を優先するため、問答無用に全滅させることを想定していたが、こうなると話は変わってきていた。

 

 ここにいるのがどこぞの盗賊団の一部であるなら情報も聞き出したいし、そうであれば一人も殺さずに捕まえた方が都合は良い。

 

 情報を得た後でどう処遇するかはノースの権力者が考えることで、そこはヴァルアスが口を挟むつもりもなかった。

 

 「むぅ」

 

 ヴァルアスは顎から離した手で握り拳を作って眺める。

 

 相手が尋常な盗賊であれば、素手でも十分に倒せるという自信があった。

 

 しかし万が一にも達人がまぎれていたり、何か周到な罠を用意してあったりした場合には不覚を取ってしまうかもしれない。相手の刃に切り裂かれてから後悔しても遅い。

 

 こういう時のために、ヴァルアスは鈍器としても使える頑丈な鞘を好むのであったが、あいにくと今腰にあるのはペップルから受け取ったばかりの魔剣リーフで、鞘はいかにも間に合わせの簡易なものだった。

 

 「殺害せずに制圧することをお望みですか?」

 「ん? ああ……」

 

 悩むヴァルアスの意図を読み取ったらしいリーフが、耳元から淡々とした口調で聞いてくる。

 

 それに適当な相槌を打ったヴァルアスだったが、続けて告げられた提案はさすがに予想外のものだった。

 

 「では私の方で切れ味は鈍く調整しますので、威力の加減はお願いします」

 「……は?」

 

 英雄としては意外なことに、その人生において切れ味が良くて頑丈なだけの普通の名剣しか使ってこなかったヴァルアスは、魔剣というものの常識外れな性能に状況も忘れて愕然としたのだった。

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