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五十八話 至高の木剣・六

 いつノースへ向かう商人たちが通るかわからない林の中で、ムクッシュが危惧した盗賊らしき痕跡を確かに見つけたヴァルアスは一度足を止めていた。

 

 時間がないかもしれないが、まだ余裕はあるかもしれない。

 

 不確定な状況でただ焦ってもどうにもならないと、自身を落ち着けるためだった。

 

 「落ち着け……。闇雲に探し回るよりほかにもっと手段があるはずだ」

 

 そして考えを整理するために独り言を呟く。

 

 「私を使うのが最善でしょう」

 「――っ!」

 

 来るはずのない返事にヴァルアスは驚き、剣を振り払うように抜いて構えた。それは、これまでのものと入れ替えて腰に下げていた白い剣身のロングソード。

 

 驚愕しつつも油断も隙も無いその態勢は、しかし誰を迎え撃つこともなかった。

 

 単純に周囲には敵の盗賊どころか、動物の姿すらなかったからだ。

 

 「では今の声は誰だ」とヴァルアスが疑問を表情に滲ませたところで、それが姿を現した。

 

 ――あるいは、姿を生やしたとした方が正確かもしれない。

 

 「な……っ!? ん、だ?」

 

 驚愕は困惑へと変わり、そして疑問となった。

 

 ヴァルアスの面前で緑色の草の塊のような物が地面から浮き出るように出現し、その下からさらに拳大ほどの胴体と小さな手足が見えたところで、緑色のそれは髪であることに気付く。

 

 形状だけでいえば、簡素な貫頭衣に草花で編んだ腰帯を身に着けた人族の幼児に見えるそれは、幼児にしても小さ過ぎた。

 

 何しろ胴体が拳大程度であり、少し頭でっかちであることを含めても、全体としてヴァルアスの顔と同じくらいの身長である。

 

 「お前……、んぅ? いや、見覚えが……」

 

 しかしその童話にでてくる妖精か伝承の精霊のような存在を見て、ヴァルアスは既視感を覚えていた。

 

 特にその緑色の腰まである長髪に、生気を感じられないほど白い肌という取り合わせは、遠い過去に見たものではないように思えていた。

 

 「お忘れですか、残念です。私はそれです」

 

 全く残念そうな心情のこもらない平坦な声音で告げて、小さな指をヴァルアスの方へと向けてくる。

 

 「――?」

 

 ヴァルアスは思わず自分の腹の辺りへ目をやってから、指しているのはそこではないと、改めてゆっくりとその先を辿る。

 

 「魔剣……リーフ?」

 

 その指す先が今手にしているロングソードであることに気付いたヴァルアスの口から、理術使いエンケ・ファロスの塔で砕けたはずの魔剣の名が自然と零れ出ていた。

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