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五十四話 至高の木剣・二

 近い過去や遠い過去、そしてこれからの未来を思い浮かべつつもヴァルアスが町へと足を踏み入れると、喧騒が大きくなって一層と活気が肌で感じられた。

 

 「おぉ、露店で武器も扱っておるのか」

 

 基本的に武器というものは店舗を構えた品質の保証されている商店で買うものだ。

 

 ヴァルアスが長年愛用した巨大な両刃剣の場合は例外で、あれはアカツキ諸国連合にいる鍛冶師に直接依頼したものだったが。

 

 どちらも共通するのは、重視されるのはやはり信頼性という部分。

 

 どれほど安く切れ味のいい剣が買えたとしても、それが戦闘中に折れてしまっては一巻の終わりだ。

 

 例外としてはそんなこともいっていられないくらいに金銭状況が悪く、とにかく安く手に入れたい場合。あるいは単に掘り出し物を探す場合となる。

 

 そして掘り出し物を探す方の理由で露店へと足を向けたヴァルアスだったが、それはそれとしてそもそも武器の調達は必要だった。

 

 「こんなものか……」

 

 鞘から少しだけ引き抜いたロングソード。その剣身の根本部分にひびが入っている。

 

 「ま、仕様がないな」

 

 大量の魔獣との連戦。疲れから雑になっていた剣筋。

 

 若い頃とは違い技量の高い剣技を振るうヴァルアスだったが、ゲールグ領での戦いは数打ち品が耐えられる限界を越えていた。

 

 むしろまだひびだけで砕けてはいないことが、現在のヴァルアスの技量の高さを示しているとすらいえる。

 

 そういうことで次についた町、つまりはここノースで、新しい剣を探そうとは思っていたのだった。

 

 「お、お客さん、冒険者かい?」

 「ああ」

 「珍しいねぇ」

 

 威勢よく声をかけてきた露天商は、腰のロングソードを、次いでヴァルアスの顔を見て言う。

 

 それはガーマミリア領内で冒険者が珍しいということなのか、あるいはヴァルアスの年齢での冒険者が珍しいということなのか。

 

 おそらくは両方だろう、と予想したヴァルアスは、それはどうでもいいと思考を隅に追いやってから口を開く。

 

 「とりあえず扱いやすくて頑丈なのを……」

 

 如何にも冒険者らしい希望を口にしながら、掘り出し物はないかと視線を走らせるヴァルアスは、しかし端まで見る前に中断することとなった。

 

 「あれ……っあ! やっぱり、ヴァルアスさん!」

 

 突然と横合いから声を掛けられたからだった。

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