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五十三話 至高の木剣・一

 ギルドの用事ではなく、純粋な旅をするのは随分と久しぶりであったヴァルアスは、ふと後ろを振り返って感慨にふける。

 

 スルタ冒険者ギルドのギルド長となった後も、当時のスルタ村、そしてスルタの町の規模がそれほど大きくもなかった頃には、定期的にシャリア王国内や、時には他国まで足を延ばして見聞を広めた。

 

 「……」

 

 歩いてきたのは何の変哲もない道。だがヴァルアスの目には、この短い間に経験した出来事がはっきりと映っている。

 

 「ここもでかくなったもんだ」

 

 そして視線を向かう先に戻すと、そこは現在のスルタ程ではないにしても、それなりの規模の町だった。

 

 ノースの町。人類生存圏の北限であるノース山脈のふもとで発展してきた同名の集落だ。

 

 ヴァルアスの知るこの場所は町どころか村ですらなく、最前線へと物資や人を送るための中継地点でしかなかった。

 

 だが数十年の時が流れ、かつて野ざらしの物資と雑に設営されたテントが並んでいた場所は、綺麗に整備された道と店や住居が代わりに並んでいた。

 

 突発的な魔獣の襲撃を防ぐくらいの目的であろう簡易な柵や、すぐに壊されることを想定などしてはいない凝った装飾も見られる建物に、ヴァルアスは思わず目を細める。

 

 「そうか……そうだよな」

 

 既に巨人族との戦争は過去のもの。

 

 ヴァルアスの英雄としての名声も過去のものであるということに繋がるその事実は、しかし意外なほどすんなりと受け入れられていた。

 

 ヴァルアスが旅に出る切っ掛けは、そうした事実の負の側面だったかもしれないが、今ヴァルアスの視界にある人々の笑顔は紛れもなく正の側面だ。

 

 ヴァルアスが必死に戦った出来事があり、それが過去となる程に時間が流れたからこそ、今の平和へと繋がってきた。

 

 「ならワシは、それを守るだけだな」

 

 組織の長としての責任から離れた今だからこそ、ヴァルアスは単純に“人々を助ける”という冒険者としてのあり様を、改めて決意する。

 

 それはかつての英雄であり、老いても冒険者であり続けようとするヴァルアスにとっては、知らずの内に擦り切れることなく済んだことを、心底から安堵するような心境でもあった。

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