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百十四話 希少素材を求めて・七

 ヴァルアスは足を止めて顔を思い切りしかめていた。

 

 「見誤ったようだ……」

 「そのようですね」

 

 それ程の長い時間は掛けずにウォーターリザードの生息地を見つけ出したヴァルアスだったが、その視線の先、まだ距離のある場所では先客が戦いを開始している。

 

 「むぅぅ……」

 

 同意以外に何を言った訳でもないが、腰に下げた魔剣へとヴァルアスは微妙な顔で目を向けた。

 

 結果論ではあるが、素朴な疑問を抱いたリーフの方が正解で、常識にとらわれたヴァルアスの方が間違っていたからだ。

 

 つまり先客として戦っているのは、ススキで話した三人の冒険者たちだった。

 

 「むっ!」

 

 遠く距離があるにもかかわらず、最前線で盾役を務めるデッドと一瞬だけ目線が合う。

 

 ヴァルアスから見てその表情は不敵であり、最も過酷な位置に身を置きながら、三人の中でも最も余裕があるように見えた。

 

 「どうしますか?」

 

 そこでリーフから次の行動を問われるが、ヴァルアスは不機嫌そうにしながらも、腕を組んでその場に立ち尽くしている。

 

 「どうもこうもないな。こういう状況では先着順が冒険者の不文律だ。あいつらが危なくなれば当然介入するし、そうなれば取り分の主張もできるが……、まあ出番はなさそうだ」

 

 ウォーターリザードの背中側の傷を見る限りでは、まだ戦闘は始まって間もないようであったが、それは既に戦いというよりは何かの作業のようですらあった。

 

 大斧で攻撃して魔獣の注意を引き付けて離さないデッドは防御面でも盤石であるし、ラカンの双剣術はヴァルアスをしても目を瞠るほどの領域。さらには若いクルミは三人の中ではむしろ最も冷静であり、魔獣だけでなく周囲にも注意を払っている様子も見て取れる。

 

 「一応はこのまま見届けて……、その後は一旦ススキへ戻ってサラサとゼツと相談だな。他にもウォーターリザードの情報か、あるいは代替の素材もあるかもしれん」

 「わかりました」

 

 こういう状況にあって魔剣の相棒は気が楽だ、とヴァルアスは場違いにも感じていた。

 

 感情が乏しい、あるいは存在しないリーフは、こういう不測の事態においても苛つかないし、焦らない。

 

 いつも通りの平坦な声音が腰元から届くのを聞いて、乱れかけたヴァルアスの精神の方が落ち着かされたくらいだった。

 

 「……ふう」

 

 だからといって、この状況がどうなるものでもなく、ヴァルアスは小さくため息を漏らしつつ、少し姿勢を崩して状況を見守り続けるしかなかった。

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