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一話 青年時代

 怒号、爆発音、そして金属の打ち合う音。

 

 血臭漂うここは、強大で残忍な巨人族に対して人族と竜族が手を組んで立ち向かうその最中、つまり戦場だった。

 

 ギガンタスとも呼称される巨人族は、平均して二十メートルはある体躯による暴威的な身体能力に加えて、その体の大きさに見合った圧倒的な魔力量を誇る、正に生きた戦闘兵器。

 

 その猛威に立ち向かうため、魔力と叡智に優れたドラゴンこと竜族たちは、技術力と組織力に長けたアンスロポスこと人族に協力をもとめ、ともに立ち上がった。

 

 ――ワレらの扱う魔術を少しでも底上げできるのなら、儲けもの――

 

 そう考えて人族から協力者を迎えたドラゴンの思惑は、しかしまったく考えもしなかった方向に外れていたのだった。

 

 「ぅぅぅぅぅううううううらぁぁぁぁああああああっ!!」

 

 雄叫びの尾を引き、鉄塊のような巨大な両刃剣をかついだ人間が吶喊していく。

 

 「ウギャァァ」

 「ダズッ、ダスケ、ティアアァ」

 「モウヤダ、アンスロポス、コワイ」

 「「「……は?」」」

 

 まったくギガンタスらしくない弱音と悲鳴の大合唱に、冷徹さを誇りとするドラゴンたちが大口を開いて唖然とする。

 

 ギガンタスは野蛮にして勇猛。つまりは最強のバカである。そんな常識が今目の前で、それを上回る人型の“暴力”によって崩されていたのだった。

 

 「斬らせろやぁっ、こらぁぁああっ!」

 「ヤメッ、ヤメテェェェエエ」

 

 情けない悲鳴を断末魔に、また一体のギガンタスが斬り倒される。

 

 「お前が連れてきたアンスロポスだよな、なんだあれ」

 

 ドラゴンの前線部隊を纏める竜将が、隣で目を細める腹心に平坦な声音で尋ねる。

 

 「ヴァルがどうしても連れて行けって、置いてったら竜の巣で暴れるって……、そういうから……」

 「お前……」

 

 竜将は気付いた。常にない子竜のような言葉遣いをする腹心が目を細めているのは、戦局を冷静に見渡しているのではなく、何かを思い出して溢れそうになる涙を必死にこらえているのだ、と。

 

 そして“竜の巣”――ドラゴンにとって中心にして最大の集落――を人族ごときが襲撃するなどという冗談が、少なくともこの腹心にとっては冗談ごとではないという事実にも……改めて眼前に繰り広げられる光景を見て気付いた。

 

 「ヴァルは、アンスロポスとかドラゴンとか、そういう枠内ではないのです……。私はアレが怖いので……必死に英雄として持ち上げることにしているのです」

 「むうう」

 

 少しだけ普段の調子を口調に取り戻した腹心は、しかし壮絶に情けない内容を訥々と語る。

 

 「はっはぁ! 次はどのでくの坊が肉塊になるんだぁ?」

 「モウイヤァァァアァ」

 

 竜の英雄にして巨人の天敵。

 

 ヴァルことヴァルアス・オレアンドルが、人族ながらに竜族と巨人族の名を含む二つ名を得たのは、まだ成人年齢に達していくらも経たない青年時代の話だった。

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