別れの日
次の日も快晴だった。太陽の下、塩を運びながらマンゾウ、コウシロウ、シャチが笑いあっている。誰が早く到着できるか競ってでもいたのだろう。
塩を運ぶのは決して楽な仕事ではなかったが今ではこれでお金が稼げるのであれば悪くない条件だった。当初、あんなによそ者扱いしていたシャチは今では俺達の事を仲間として扱ってくれている。
モハメッドもサチも僕たちと一緒に暮らすことを心から望んでいるようだった。
昨日モハメッドに誘われた時ユウキは本当に迷っていた。
もし、俺がここに残ると言ったら他の皆はなんて言うのだろう。
もし、俺が帰るといったら????
皆も不安そうにユウキを見つめていた。
ユウキ「モハメッド、ありがとう。この数日、本当に楽しかった。」
モハメッド「それじゃあ、」
ユウキはモハメッドが次の言葉を口にする前に首を横に振る。
ユウキ「俺たちは帰るよ。」
ユウキの言葉にエリーゼ達は少し微笑み、シャチ達は悲しそうな表情となった。
モハメッド「そうか・・・・。他の皆は・・??」
マンゾウ「もちろん!俺達も帰るさ!!!」
コウシロウ「うん。」
モハメッドは皆の答えにどこか納得した表情だった。
ユウキはうつむいてるシャチの方へ歩み寄る。
ユウキ「これで、会えなくなるわけじゃないからな。」
シャチは自分の顔を見られないように背を向けて話した。
シャチ「へっ!次は俺たちがそっちに行ってやるよ!」
皆その言葉に笑顔になっていた。
コウシロウ「そうなんだな。次は皆が来てほしいんだな。」
アイン「僕達待ってますから!必ず待ってますから!」
モハメッド「うん。うん、そうだね。必ず行くよ。」
俺たちはそれぞれ手を取り合い硬い約束を結びあった。
いよいよ、別れの日である。
結局こちらにいる間一度も雨が降らなかった。
各々自分の荷物を持ち小屋を出る。
遠くにギャバとギランの姿が小さく見えた。
マンゾウ「それじゃあ、色々せわになったな。」
コウシロウ「あっ、ありがとうなのね。」
モハメッド「こちらこそ。色々楽しかったよ、また是非来てくれ。」
シャチがモハメッドの後ろから勢いよく出てきた。
シャチ「チゲーよ!次は俺らが行くからよ!!」
シャチは満面の笑みだった。
小屋の入り口でサチが泣いていた。どうやら、エリーゼと離れたくないらしい。
少し困った顔をしながら必死でエリーゼはサチを慰めていた。
ギラン「おう!ガキども揃っているな。まずはご苦さん。ギャバからお前らの働きは聞いているぜ。さっそく報酬を渡すぜ。」
ギランから俺たちは一人ずつを銅貨二枚を受けとる。
ユウキ(そういえば報酬が出るんだったな。一週間で銅貨二枚は少ない気もするが俺はここに来てたくさんの貴重な品を確保出来たし・・・・・・)
マンゾウ「ありがとうございます。」
ギラン「それじゃあ行くか。南エリアまで送ってやるよ。」
いよいよ、別れだ。皆、それぞれ最後の挨拶を交わす。
最後にユウキの元へシャチがやって来た。シャチの表情は先程と比べると少し寂しそうだった。
ユウキ「ありがとな。シャチ。」
シャチ「・・・・・・うん。絶対、俺会いに行くから!」
シャチの言葉に黙って頷く。
ユウキはシャチの耳元に近寄った。
ユウキ「小屋の裏の植物の世話は頼んだよ。暫くは持つと思うから。」
ユウキはシャチの肩を二度ほどポンポンと軽く叩いた。
シャチ「おうれ任せてくれよ!!!」
ユウキは最後にモハメッドに近寄り壺を一つ渡した。
ユウキ「これがこの前作っていた調味料だよ。もう少し時間を置くともっともっと味に深みがでると思うけど・・・。」
モハメッドはユウキから壺を受けとる。
モハメッド「うん。ありがとう。助かるよ。」
モハメッドはユウキに手を差し出し硬い握手を交わす。
マンゾウ「じゃーなー!オメーら!!!」
俺達は時々振り返りはモハメッド達に手をふった。
モハメッド達はいつまでも、いつまでも俺達を見送ってくれていた。
そして俺たちは一週間の出稼ぎを終え故郷へと戻るのだった。




