海、魚、太陽
モハメッド「気を付けて!」
昇る時とは違い降りるときは壁の中に隠していたお手製のロープでおりるようだ。
このお手製のロープがまた心もとない・・・・・
ボロぞうきんを集めて1つにしたような物だからいつ切れてもおかしくないような気がする。
ユウキ(エリーゼやサチが来なくて良かったかもな。)
ユウキはボロボロのロープに掴まりながらそう思った。
・・・・・壁の向こう側。
いわずとも、俺たち南エリアの仲間でこちらに来たことがある人間はいない。
マンゾウ「これが外の世界・・・・・あれが海・・・・・・・」
コウシロウとアインも目を輝かせながら周りを見渡している。
モハメッド「ごめん、皆。気持ちは分かるけど急がないと時間が無くなるんだ。さっそくはじめるよ。」
急いでモハメッドの後についていく。
コウシロウとアインは未だこの風景を堪能したそうだったがマンゾウに発破をかけられ渋々と移動するのであった。
俺たちは海の傍にコンクリートで作られた場所へと到着する。
マンゾウ達も流石に本物の海には興奮を隠せず身を乗り出して夢中で見ていた。
シャチ「おめーら!!!言っとくがそこに落ちたら命はねーからな!!!」
シャチの一言に一同は固唾を飲むもやはり好奇心が上回り、あれやこれやと大騒ぎではしゃいでいた。
シャチとモハメッドは早速イソメやゴカイ等片っ端等から虫を捕まえバケツに放り込む。
それを見て俺も虫エサになるものを探していく。
10分ほどするとマンゾウ達も俺達に気付き急いで餌集めを手伝った。
【30分後】
モハメッド「よし!この位でいいか。」
シャチ「十分じゃねーの。」
モハメッド「それじゃあ、これから各々釣ってくれ。釣れた魚はユウキ君に確認してもらう。決して海には落ちないように!本当に死んでしまうからね。」
皆「おう!!!」
マンゾウ達は初めての釣りなのでモハメッド達の近くで教えてもらいながら始める。
俺はやり方はわかっているので彼らとは少し離れた場所で釣ることにした。
少し考えたいこともあったし・・・・・・・
???「ミヤー!ミャー!!!」
ユウキ(あれはウミネコかな?)
ユウキは改めて周りを見渡す。先程自分たちが来た外壁には歴史を感じさせる風化が見て取れる。
所々に赤茶色に変色している部分やツタが生え壁に植物が覆いかぶさっている部分も確認できた。
海の方には見渡す限り島は見えない。もし、ここが日本ならば・・・・・・どのあたりだろう。
以前、廃車の中で見つけた工具は日本語が書かれた日本製の物だ。そして今、仲間が話す言葉も日本語だ。であれば、ここが日本であることは間違いない。 しかし、本土ではない。
壁は孤島全体を囲っている。日本のどこかの島・・・・・。
手掛かりで分かるのはここまでった。ここがどこで・・・・いつなのか・・・・・・。
いずれ分かる日がくるだろうか・・・・。ユウキは青空とは対照的な気分になったような気がした。
【2時間後】
モハメッド「みんなー!!!一回集まろうか!!」
モハメッドの声にユウキはハッとする。釣れた魚を入れたバケツを持って急いで皆のところへと集まる。
モハメッド「思ったより少ないな・・・。ユウキ君、悪いけど早速これらを選別してもらえるかい?」
ユウキはバケツにひとまとめにされた物を分ける。
これはボラ、大丈夫。これはイサキかな・・・・・。おっと、これはフグじゃないか。念のため除外と・・・・。これは・・・・ヒトデ??誰だこんなの釣ったのは・・・・。
ユウキは次々と判別していきあっという間に仕分けを終えた。
夢中で気付かなかったが流れる汗がユウキの焼けた皮膚に触れるとピリっと痛みを感じるのであった。




