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壁の向こうには

モハメッド「わかった。それじゃあ、君たちにも話すが聞いた以上は抜け出せないよ。何があっても一蓮托生だからね。」

1時間。モハメッドは何とか皆を説得しようとしていたが誰も譲ろうとはしなかった。

俺も皆が仲間ハズレにされるなら話を聞く気はないことを伝えるとようやくモハメッドの方が折れてくれた。



マンゾウ「いちねんちくしょう???」

アイン「いちれんたくしょうだよ。どんな結果でも皆一緒だよって意味だよ。」

マンゾウ「しっ知ってたよ!いちれんちくしょうだろ!」


ユウキ(おいおい。俺たちは皆、豚や牛かい・・・)


モハメッド「・・・はは。まあ、ともかく、今から言う事はギャバさんやギランさんは知らないことだ。絶対に他の人に話してはいけないよ。」

モハメッドの顔が真剣な表情へと変わる。


モハメッド「実は、この壁の向こうにはとてつもなく広い海があるんだ。」

マンゾウ「海ってここにある水のことだろ。」

モハメッド「半分当たりってとこかな。ここにあるのは壁に空いている小さな穴から入って来る海水でできたものなんだ。本当の海はこれの何倍も大きいんだ。」

マンゾウとコウシロウはお互いの顔を見るがあまり理解できていないようだ。


シャチ「へっ、田舎者だな。本当の海ってのはこの世界のほとんどに広がってるんだよ。」


コウシロウ「この世界のほとんど???んじゃあ、海を進めば他の国があるの?」


シャチ「はっ!本当にバカだな。海ってのは簡単に進めないんだよ。波や風、潮の流れによって進むんだよ。」

シャチはコウシロウを2段ベッドの上から文字通り見下ろしていた。


ユウキ「シャチは海について詳しいんだな。」

シャチの顔が少し赤くなったような気がした。

シャチ「おう。俺の親父はこの国で一番の漁師だったんだ。俺の親父の親父も。親父の親父の親父もずーと海で漁師をやってたんだぞ!」

シャチはどうだ!といわんばかりの笑顔だった。


親父か・・・・。前世の俺の親父も農家一筋の人だった。先祖代々受け継いできた土地を本家として守り抜いてきた。その土地は親父の代で廃田となった。

俺がTVに頻繁に出るようになってなかなか実家に帰れない時期があった時も毎年必ず新米を送ってくれた。 俺はその米を見るたびに嫌な気持ちになったもんだった。

東北の田舎に産まれ、当たり前のように農家の長男として本家の跡取りとして育てられた。

思春期になると親父の泥まみれの汚い手を見るたびに俺は絶対農家なんかになりたくないと思っていた。

地元の高校を首席で卒業した俺は迷わず東京の大学に行くことにした。

お袋は絶対に東京なんかには出してやらんと怒鳴っていたな。俺はこのままだと一生をこの田舎で過ごし自分も親父のような汚れた手になるのかと思うと気がどうにかなりそうなほど嫌だった。


「俺はこんなとこで親父みたいに汚れたくねーんだよ!!!!」


お袋はそれを聞いて崩れるように泣いたっけ。

その時、親父は急に立ち上がった。俺は直感的に殴られると思ったが、親父はいつも着ている農協の上着と帽子を被ると俺に


「お前の好きにすればいい。俺はちょこっと田んぼさ見てくる」


と言っただけだった。


俺は泣いているお袋を置いて自分の部屋にかけこんだ。

絶対ここには戻らない。俺は東京で成功してみせると心に誓った。





本当に俺は何もわかっていないガキだったんだ。




モハメッド「・・・・・・・・それで壁の向こうの海にはこことは比べ物にならないくらい大きな魚がいるんだ。」

マンゾウ「大きいって今日捕った魚より大きいの?」

モハメッド「もちろん。あれの2倍、いや3倍の大きさの魚だっている。でも、実は問題があって・・・・・」


シャチ「俺の親父が言ってたんだ。魚には毒のあるやつがいるから気を付けろって。間違えてそいつを食っちまうと死んでしまうって。」


ユウキ(あぁ、、たしかにフグなんか知らないで食べたら死んでしまうかもな。)


モハメッド「そこで、ユウキ君にそれを判別してもらいたいんだ。」


ユウキ「俺が?ちょっと待って。俺も少しなら魚についてわかるけどそれ程詳しいわけじゃないよ。知っている魚だって限られるし。」


シャチ「それでも俺達よりは知っている。」

シャチは少し悔しそうな顔で言った。


ユウキ「俺よりもシャチの親父さんの方がよっぽど詳しいんじゃ。」


モハメッド「それは・・・・・・シャチのお父さんは3年前病気で死んでしまったんだ。」



サチはそっとシャチのズボンを握った。  それに気づいたシャチはふっと笑うとサチの頭を撫でた。



モハメッド「僕たちも頻繁に行ける訳じゃないんだ。往復の移動、漁の時間を考えると明後日みたいに1日まるまる休みの日なんかじゃないとね・・・・。それに、あらかじめ言っておくけど壁の向こうは知っての通り奴らがいる。ここみたいに安全の保障はできないんだ。」


シャチ「まぁ、今まで奴等を見たことは1回もねーけどな。」


奴等とはゾンビの事か・・・・。実際、俺も現物を見たことは1度もないな。

前世の記憶の通りのゾンビなら、かなりヤバイよな・・・・・。

ただ、ユウキはいまいち実感としてピンと来ずにいた。



シャチ「ビビんなよ。言っただろ、今まで1度も見たことねーし、それにあっちにはデケー魚が沢山いるんだ。前回だっって3匹も◇▽×××・・・・・・・・・」


ユウキ(たしかにここで魚を手に入れられることはゼンゼン有りだ。魚が手に入ればあれもこれも作れる。もっと沢山取れれば市場に出して物々交換もできる。これは願ってもないチャンスなんじゃ・・・・・)


シャチ「おいっ!!!!聞いてんのか!?んで、どうするんだよ!?まさかビビってやらない訳じゃないよな!!!?」

シャチはあきらかにユウキを挑発しているようだ。




ユウキ「皆はどうする?」

マンゾウ「えっ?そうだなぁ~。あいつらは嫌だけどでっかい魚と聞くとなぁ~」

コウシロウ「だよね~兄ちゃん。でも、あれは怖いなぁ~。」


アイン「僕もあいつらがいる場所には・・・・・・」

エリーゼ「私は行く!」


全員「えっ!?」


エリーゼ「だって、今まで見たことはないんでしょ?」

モハメッド「たしかに、そうだけども。」


エリーゼ「それに、ユウキがいるんですもん。大丈夫よ。」


マンゾウ「そっ、そうだな。ユウキがいるしな。」

コウシロウ「ユウキ君がいれば大丈夫なんだな。」

アイン「そ、そうですね。それなら。」


シャチ「よしっ!なら決定だ!!!明後日は大物狩りに行くぞ!」


皆「おぉー!!!!」



どうやら、本人の同意無しで行くことが決められてしまったようだ。



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