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誕生日の出来事

~〇▽▲年後~


日本 東北のとある島


今日で俺は8歳の誕生日を迎えた。あの日、全世界にゾンビの存在が知られ各国々が壊滅に臨んだがゾンビに対抗できることはなかった。

あの時から生まれた子供達は第2世代と呼ばれている。全世界の第2世代の10歳までの生存率は6%だそうだ。

なので今日めでたく8歳を迎えられた俺は運がいい方なのだろう。母親は俺が4歳の時に死んだ。

父親は誰かもわからない。だから母親が死んだ時点で俺は天涯孤独の身となった。

なので誕生日といっても何か特別なことがあるわけではない。

そもそも今のこの世界、ありとあらゆる物が不足している。俺は昨日も今日も何も食べてない。時折、壁の近くに生えている茸や野草を食べたり貴族街から流れてくる破棄品を

食べているが腹いっぱいに食べたことなど記憶にない。

「1度でいいから腹いっぱい何か食べてみてーなー」

俺は休まず鳴る腹を押さえ今日も壁へ向かった。


この島にはゾンビが侵入してこないよう大きな3つの壁で囲まれている。

一番外側のエリアは『自由エリア』と呼ばれている。いわいる貧困街だ。俺のような孤児や問題を起こしたやつら、素行の悪いような連中が住む地区だ。

そして真ん中に『平和エリア』 ここは一般市民が暮らすエリアだ。昔は俺もここに住んでいた。でも、母親が死に住民税が払えなくなり俺は『自由エリア』に落とされた。

最後に最内に『解放エリア』 俗にいう貴族エリアだ。俺はここには行ったことがない。だが時折廃棄される物を見る限り俺たちの住んでる世界とは比べ物にならないんだろう。


俺が毎日行くのは大外の壁である。この壁は外の世界との最初の隔たりである為、貧困街の住人でさえあまり近づこうとはしない。その為、先程の食糧が手に入れやすい場所であった。

多く手に入った時なんかは貧民街の市場なんかで物々交換してもらえる。

俺が壁に到着した時すでに先客が何人かいた。どいつも見たことがある顔ばかりである。俺と同じように親に死なれたり、捨てられた孤児達だ。

一番背の高いコウシロウ。その兄貴でとても背の低いマンゾウ。

眼鏡をかけているのはアイン。綺麗なピンクのスカートを履いているララ。

俺を一番最初に見つけすぐによってきたのがエリーゼだ。


エリーゼ「おはよう、ユウキ。いつもより遅かったんじゃない?」

ユウキ「おはよう。いや、俺より皆の方が早いじゃない?そんなに急いで何かあったの?」

俺たちは壁に来ていることもあり孤児の中ではよく顔を合わす。お互い何かと協力しながら助け合っている仲間みたいなもんだ。

普段は1人、2人いる時はあっても全員先に来ている事なんかないのだ。なので、何かよっぽど危険な問題が起こったのかと身構えてしまった。

エリーゼ「ううん、違うの。今日は皆からユウキにプレゼントがあるの」

俺は驚いた。プレゼント?俺は生まれてこのかたプレゼントなんか貰ったことがない。協会から施しでボロボロの衣類や靴を貰ったことはあるけれどその時も公衆トイレの清掃や教会の窓掃除なんかをさせらたもんだ。

それがなぜ突然プレゼントなんだ? 

エリーゼ「今日はユウキの誕生日でしょ。だから、みんなで用意したの」

誕生日?俺の誕生日なんて言ったことがあるだろうか?それに俺たちは孤児だ。今日、食べるのもやっとなのに他人に物をあげる余裕なんて皆あるはずがないじゃないか。

ユウキ「ちょっと、まって。確かに今日は俺の誕生日だけど。なんで俺にくれるの?」

そこにいた子供たちを少し照れ臭そうに笑った。

マンゾウ「ユウキには俺たち助けれられてるからよう。俺と弟は露店でくいもんをかっぱらった時捕まっちまって散々ぶん殴られてただろ。あん時ユウキに止めてもらわなきゃ、たぶん俺たち死んでたんじゃねーか。」

マンゾウはやはりちょっと照れ臭そうにユウキを見ずに話した。

エリーゼ「それでね。これ、皆の気持ち!はいっ!受け取って」

ユウキはエリーゼから真っ赤な丸い物を渡された。

エリーゼ「それね、アップルっていう食べ物なんだって。とっても美味しいからユウキにあげる。」

ユウキはエリーゼから渡されたアップルを見つめる。朝日がアップルに反射し俺の目に飛び込む、俺はこれを知っている。幼い時、まだ母が生きていた時、風邪をひいた俺に食べさせてくれた物だ。俺以外の皆は生まれも貧困街の為初めてアップルを

見たのだろう。もちろん彼らはこれを1度も食べたことはない。貧困街でアップルを手に入れることは難しいのにそれを他人の俺にプレゼントするなど考えられないのだ。

だが、彼らの表情は皆うれしそうな表情だ。俺は貧困街に来てからというもの毎日生きるので必死だった。だからというわけではないがどうしても人を疑ってしまう。

でも今彼らの顔を見てわかった。俺は同時に自分が恥ずかしくなった。

ユウキ「・・・・なんて言えばいいんだろ」

エリーゼが満面の笑顔で促すように話しかける。

エリーゼ「ユウキ、さあ、早く食べてみて」


ユウキはポケットからナイフを取り出す。そして持っていたアップルを6等分に切り分けた。

ユウキ「よしっ、皆で食べよう!」

皆が驚く。

エリーゼ「ユウキ、それは皆からあなたへのプレゼントなの。だから、それは全部あなたが食べていいのよ。」

ユウキは切ったアップルを見ながら

ユウキ「わかってるよ。だから貰ったアップルを俺は皆で食べたいんだ。俺がそうしたいんだ。だからかまわないだろ?」

エリーゼはちょっと困った顔をし何かを言おうとしたがユウキの顔を見て言うのをやめた。

エリーゼ「わかったわ。しょうがないわね。」

ユウキ「この種は今日の記念に俺が貰うね。」


俺たちはみんなでアップルを食べ笑いあった。俺はこの日仲間たちと最高の形で8歳になった。


~その夜~


俺の枕元に女神と名乗る人が現れた。


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