量産
振舞ったスープは皆の胃袋を満足させられたみたいだ。
マンゾウ「うまかったー。こんなに食ったの久々だー。」
マンゾウは満足そうに横になった。
皆も各々くつろいでいる。
さてと。
ユウキはリュックを担ぎ外に出ようとした。
モハメッド「ユウキ君?どこに行くつもりだい?」
ユウキ「ちょっと、時間まで作業をしようと思って。」
モハメッド「作業?良ければ何をするか教えてもらえるかい?」
ユウキ「自分の分の塩を作るんだ。」
そう、この機に自分用の塩を手に入れたいのだ。というのも、塩は俺たちが住む南エリアでもあるのだがソコソコの値段がする。お金がない俺達は僅かな塩と3日分の食料を物々交換していた。しかも南エリアで手にはいるのは岩塩であるため水に溶けにくく使い勝手が悪かったのである。
モハメッド「ユウキ君、それはできないよ。」
ユウキ「えっ!?なぜだ?空いている時間なら自由だろ?それとも、塩を作るのに何か許可が必要なのか?」ユウキは慌てて聞き返す。
モハメッド「いやいや。休憩時間は自由だし、塩をつくるのに許可なんていらないよ。ただ、君はさっきの作業のように海水を煮詰めるつもりだろうけど、この燃料の薪は作業に必要な分しか渡されていないんだ。だから、君がいくら海水をもってきても君が使える薪は無いんだよ。」
ユウキはその言葉を聞いて安心した。
ユウキ「よかった。それならば大丈夫だ。俺は塩を作るよ。」
ユウキの予想外の返答にモハメッドは驚いた。
モハメッド「君は薪が無くても塩を作れるのかい?」
モハメッドは身を乗りだして聞いてきた。
ユウキ「実際にやってみないとわからないけど、前に覚えたやり方が合っていれば出来るはずだ。」
モハメッド「前に覚えた?君は前にも塩を作ったことがあったのかい?」
その言葉にマンゾウ達もびっくりし、ユウキに注目した。
ユウキ「いやいや!違う違う。前に塩を作ったことのある人から話を聞いたことがあるんだ。」
ユウキは慌てた取り繕った。
モハメッド「その人って・・・」
ユウキ「さぁ!時間がないから早く行こうぜ!やり方なら教えるから実際に自分で確かめてくれよ!」
ユウキは慌てて小屋の外に出た。
その後を皆が慌てて着いてくるのであった。
それぞれ、バケツ二杯の海水を手に持ち歩いている。
サチだけはバケツ一個を両手一生懸命運んでいた。
小屋までつくがユウキは中に入らず裏の雑林へ向かう。
ユウキは少し木々が開けた場所を探し手頃な大きさの葉がついている草の前でとまった。
ユウキ「それじゃあ、今からこの海水をこの葉っぱにかけてくれ。」
本当は海水を煮詰めて塩を作りたかったが燃料がない以上このやり方しかない。葉っぱに海水をかけて乾燥させ、塩を採る方法だ。効率は悪いがこの方法なら塩を採取できる。
マンゾウ「これで、塩が採れるのか?」
ユウキ「たぶん。あんまり、量は取れないかもしれないけどな。」
一同はユウキのいう通りに辺り一帯の草に海水をかけた。
シャチ「本当にこれで塩がとれるんだろうな?」
ユウキ「正直、わからない。ただ、やってみなければわからないだろ?」
シャチ「たしかにな・・・・・・」
一行はそのあと、夕のノルマをこなすために急いで小屋へ戻った。
夕のノルマの塩作りも順調に進んだ。
ほとんどユウキのお陰なのだが、慣れてきた新人達の活躍もあり、いつもなら陽が落ちる時間までかかるのだが、夕方のうちにノルマを終わらせることが出来た。
ギャバ「よし。お前ら今日の作業は以上だ!今回は優秀な新人達らしいな!俺はこれで帰るがお前達も明日に備え早く寝ろよ!」
門番のギャバは一人で大声で話すとさっさとどこかへ引き上げていった。
モハメッド「君たちのお陰で夕のノルマも早く終わった。今から食料を捕りに行くけど君達も一緒に来ないかい?」
モハメッドとシャチは自分達の小屋から色々道具を準備していた。
マンゾウ「いいのか?俺達も一緒に行って?」
シャチ「どうせ、お前らだけなら自分達で食料もとれねーだろ!?毎回、たかられる訳にはいかねーからな。自分の食いぶち分くらいは自分でなんとかしてもらわねーとな。」
シャチは口では悪く言ってるがどうやら、やり方を教えてくれる気らしい。
俺達はモハメッド達についていくことにした。
今回はエリーゼだけは小屋でサチと留守番することになった。
ユウキ「んじゃあ、エリーゼの分も沢山取ってくるよ。」
エリーゼ「うん。楽しみに待ってるね。」
エリーゼはちょっと頬を赤らめていた。
サチは不思議そうにエリーゼの顔を覗いているのであった。




