出来る男
モハメッド「ゴホン。ユウキ君、ノルマが終わったなら抜けてもいいんだよ・・・・。」
ユウキ「いや、今日の朝の分が終わるまでは手伝わせてくれ。少しでも早く終わった方が皆もいいだろ?」
モハメッド「そりゃー、そうだけど。・・・・本当にいいのかい?」
シャチ「本人がいいっつってんだ!!やらせればいいんだよ。」
シャチはそう言うと浜辺へと戻った。入れ替えぎみにコウシロウがヨロヨロと小屋に入って来る
コウシロウ「こ、これで6回目。」
ユウキ「俺は大丈夫。さあ、早く終わらせてしまおう。」
ユウキはコウシロウの背中を軽く叩いた。
ユウキの活躍もあってお昼頃には朝のノルマを達成した。
ユウキ達の運んだ海水は小屋でサチが煮詰めており完全に水分が抜ければ塩の完成である。
モハメッド「ギャバさん。これで、朝のノルマは終わりです。」
ギャバ「おう。今日はだいぶ早かったな。よし、お前ら、夕のノルマまで一時間休んでいいぞ。」
ギャバは塩の出来具合を確認すると皆にそう告げた。
皆「やったー!!!」
とりあえず、これで一休みできる。まずは、昼食だ。
モハメッド「君達!昼御飯はあるのかい?」
モハメッドが俺達に話しかけてきた。
マンゾウ「あぁ。俺達はその・・・なんだ、・・・」
元々俺達は昼御飯を食べることは少ない。
だいたい普段は、朝・夕、食べれれば御の字なのだ。
モハメッドはその様子で察したようだった。
モハメッド「よかったら僕たちと食べないかい?少しだけだけど・・・・・・」
シャチ「お前!!、!何言ってるんだ!!こんな、よそもんに、分けてやる物なんてねーだろ!!!」
シャチはとても怒っていた。
モハメッド「いいよ。僕の分を彼らに分けてあげるから。さっ、皆!こっちに来なよ。」
モハメッドは先程まで塩を煮詰めていた囲炉裏へ皆を招いた。
モハメッド「こんなものしかないけど・・・」
モハメッドが笹のような物に包まれた物を広げる。中から小魚の干物のようなものが20匹程入っていた。
それを見て俺達南エリアの子供達は皆驚いた。
コウシロウ「すげー!!!兄ちゃん!魚だろ!?これっ!?」
マンゾウ「・・・あぁ、たぶん、そうだ。」
アイン「間違いないですよ!見てください!足がないですもん!」
エリーゼ「こんなに沢山!凄いわ!」
皆、見るだけで大興奮である。
その様子に東エリアの子供は目がキョトンとなっていた。
シャチ「ちぇっ!こいつら魚も知らねーのか、田舎もんどもが!!!」シャチはさっさと自分の分の魚を取っていった。
マンゾウ「おい。本当にこれ、食べていいのか?」
モハメッドはニッコリ微笑む。
モハメッド「今日はあなたたちのお陰で早く終わったし、歓迎ということでどうぞどうぞ。少ないですが、召し上がってください。」
ユウキ(なかなか、このモハメッドという男。人間が出来ているといか、計算高いのか。元々リーダーの器があるというか・・・初日にこんなことされれば俺達もこいつを自然とリーダーと認めるだろう。まぁ、シャチの様子からすると昔からこんな性格なんだろうな・・・。)
サチ「私のも食べていいよ。」
モハメッドの後ろからそっと、サチがこちらを覗いていた。
モハメッドは少し驚いた後、サチの頭をクシャクシャに撫でていた。
シャチ「へっ!!!!」
ユウキ「んじゃあ、この魚は遠慮なく頂くね。代わりと言ってはなんなんだけど良かったら僕のスープを飲まないかい?」
ユウキは自分のリュックから出す振りをして異空間収納から事前に作った熱々のスープが入った鍋を取り出す。
ユウキ「はいっ!どうぞ。」
モハメッドが鍋の蓋を取り中を覗く。
モハメッド「すこい!こんなに沢山、具材が入ったスープなんて!!!!初めて見たよ!!!!」
周りの皆も鍋を覗く。
エリーゼ「すこいわ!ユウキ!こんなに沢山のキノコや野草がとれたなんて。」
コウシロウ「ユウキ君、すごいんだな!!!」
マンゾウ「流石だせ!ユウキ!」
俺は鍋を囲炉裏の火にかけて温めるふりをする。
ユウキ(本当は熱々なんだけどね。)
あっという間にグツグツ煮え始めたのすぐに、皆の器によそう。
モハメッドがドキドキしながら渡されたスープを一口すする。
モハメッド「うまいっ!!!!なんだ、これ???凄くおいしい!!、」
サチも熱いスープをふーふーしながら早く飲もうとしていた。
マンゾウ「ホントだ!こりゃ、いつもより、うめーや!!!!」
アイン「本当ですね。それに、こんなに沢山の具、初めてですよ。」
ユウキ(そうだろ、そうだろ。まずこのスープの革新的な所はしっかりと出汁をとっているところなのだ。沢山の茸はアクが出るが長い時間丁寧に煮れば濃厚な出汁がでるのである!昔から茸は旨味の強い・・・・・・)
マンゾウ「うめー!!!この魚もスゲー、うめーよ!!!」
小さな魚だがきっちり乾燥している。
俺もひとつ頂こう。
うん、小魚だね。まさしく、前世の「○○ごのみ」の小魚の味ですな。
モハメッド「あの~・・・ユウキ君・・・・・・」
モハメッドがモジモジしながら恥ずかしそうにユウキを呼んだ。
あぁ、このスープが気にったくれたか・・・。
ユウキはモハメッドにお代わりをよそった。
モハメッドは飛び上がるように喜んでスープをすする。
少し離れたところでシャチがこちらを直視していた。
数分前からユウキは視線に気づいていたが少しイジワルをしていた。
ここでようやくユウキがシャチに声をかける。
ユウキ「良かったら君もどうだい?」
シャチは最初こそ少し迷ったが急いで自分の器を取りに行った。
・・・ドタドタ。
シャチ「・・・・・・わりーな、そんなに言うなら。」
ユウキはクスっと笑うと彼の器にもスープをよそった。
シャチはまるで宝箱を見るようなキラキラした目でスープを見ていた。彼はすぐにスープを飲まずにずーと眺めている。
ユウキ「シャチ君、熱いうちに食べた方がおいしいぞ。」
シャチ「おっ!おう。そうだな。んじゃあ。」
シャチはやっと、スープに口をつけた。
シャチ「うっ、うめーよ!!!すげー、うめー。」
シャチは熱いのを構わずに一心不乱にスープをすすっていた。




