塩作り
モハメッド「では、ギャバさん行ってきます。サチの事、宜しくおねがいします。」
ギャバ「おうっ!気を付けてな!無理しないよーに無理しろよ!」
ギャバはガハハと一人笑っていた。
モハメッド「んじゃあ、皆、それぞれこのバケツを持ってくれ。一人2つだ。」
モハメッドからそれぞれバケツを渡される。
モハメッド「んじゃあ、早速ついてきてくれ。」
モハメッドとシャチは慣れたように浜辺へ向かった。
モハメッド「それじゃあ、仕事の説明をするね。俺達は塩を作るのが仕事だ。朝と夕で大鍋4回分の塩を作らなくちゃならない。そこで、君達には海水をさっきの小屋まで運んでもらう。海水ってのはここの水の事だ。」
モハメッドは先程持って来たバケツを俺達にかざす。
マンゾウ「おう。わかった。んじゃあ、ここの水を今から集めるんだな?」
モハメッド「いや、ここの浜辺の海水だとゴミなんかが多く混じっているからあそこの道を渡って壁の近くまで汲みにいくんだ。」
モハメッドが指差す方はここから更に2キロ程の所だった。
マンゾウ「あそこから、小屋までか・・・。そりゃあ、なかなか大変そうだな。」
モハメッド「朝の分だとバケツ300杯必要なんだ。運ぶのが俺達男で六人だと・・・・・・」モハメッドは頑張って指で数えようとしている。
ユウキ「一人50杯だね。」
ユウキの答えに皆ビックリして注目される。
モハメッド「君!本当かい!?たしか・・・」
ユウキ「ユウキだよ。」
モハメッド「そうそう。ユウキ君。一人あたり50???あんな、すぐに、わかったのかい?」
前世の記憶がある俺にしてみれば簡単な割り算だ。だか、この時代の子供達、とくに、自由エリアの子供達は学校になんか行っていない。なので、小学生レベルの計算でも大人でさえわからない事であった。
ユウキ「たぶん、合ってると思うよ。でも、一人50杯だと一回で二杯運べてもかなり時間がかかっちゃうね。」
モハメッド「であれば、急ごう!早く終われば終わるほど自由時間は多くなるんだから!」
モハメッドは皆に発破をかけてるようだった。
ユウキ(ノルマが早く終われ自由時間が貰えるのか・・・。時間に余裕があれば個人用で塩を持って帰れるな。よしっ!頑張ろう!)
間もなくお昼頃だろうか・・・・・始めてからまだ2~3時間しかたってねえ・・・。
いつもより運ぶ量が多くなったが人手も増えたことを考えると同じくらいの時間がかかるはずだ。
ましてや今日は仕事になれていない新人達の初日だ。朝の仕事が終わるのはもっと後だと思っていた。
30分も昼休憩がとれればよいほうだと考えていたが・・・・・・・。
原因はあいつだ。 たしか、ユウキっていったか・・・・・俺と同じくらいの年なのにあっというまに小屋まで往復しやがる・・・・・。
俺は気づいていなかった。見た目の年齢とはかけ離れた力と速さ。スキルによって補正された今の体のことを・・・・・。
自分でも気づいていなかったが、一刻も仕事を終わらせこの未知なる東エリアを謳歌したいという気持ちがあったのだろう。そう、単純にうかれていたのだ・・・・・。
前世から数えれば今年で93歳となるがいくつになっても海は心を躍らせる・・・・(自分に酔う)
モハメッド「・・・・ユウキ君??君、すごいね・・・・。」
モハメッドは呆れたようにユウキに話しかけてきた。
ユウキ(しまった。ちょっと、はりきりすぎた・・・・・。)
ユウキ「そうですか?俺に合ってるんですかね?この仕事・・あははっ。」
我ながら下手すぎるごまかし方だと思う・・・・・。
シャチ「合ってるとかの問題かよ・・・・!俺でさえまだ10報復なのにテメー何回往復したんだよ!?」
ユウキ「えーと・・・・12回くらい????」
シャチ「嘘つくんじゃねー!!!!!20はいってるだろーが!!!」
ユウキ(はい。その通りです。実は次で30回目です。しまった・・・・こんな形で目立ってしまうとは・・・・・早くノルマを終わらせることばかり気にしてて・・・・)
サチ「・・・・・・・その人、次で30回目・・・・・・・。」
その場の全員の視線がユウキに向けられた。




