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エジプト忍者、異世界を行く  作者: ヴィクトール
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プロローグ

 1582年1月、エジプトのアレクサンドリアに住む木曽 六郎はその土地における草であった。


「草」と呼ばれる忍びは文字通りその土地に根付く草のように潜伏し、死ぬまで現地の情報を探る役割を担っていた。


 六郎は忍びとして真面目に働く最中目立たぬよう、暗殺といったような仕事は任されることはなかった。こんな土地で暗殺する対象などそもそもいないが。


「街での労働と、草としての仕事なんて退屈で死にそうだ」


 夜、酒場で酒を飲みながら六郎は語った。


「それは先週も聞いたぞ、死にはしないからもっと実のある話をしろ」


 そう返すのは六郎と同じ忍びでありながら身長2メートル70センチの巨漢、三菱(みつびし) 清海(せいかい)である。


 六郎と清海は現地で住人と共に働きその土地の情報を日本へ伝える役割を担っていた。


 だが草としての毎日を繰り返している六郎にはどうも退屈でならないのだ。


「そういえば信長公がピラミッドの探索員を忍びの中から募集しているらしいぞ」


「なに、それはもしかして噂に聞く古代の神秘という話か?」


「そうだ」


 エジプトのピラミッドには宝を守るために危険な罠や亡霊の呪いなどが満載であることは周知の事実である。古代の失われた技術を手に入れられる可能性を考えるに権力者はこぞってその神秘を暴きたがるだろう。


「ただの噂じゃあないのか?」


 六郎は訝しげに言った。


「噂であってもお偉いさん方は可能性にかけたがるのさ、謀反の疑いがあれば証拠がなくても殺すような人たちだからな」


「上のやつらの考えはよくわからんな」


「俺は面白そうだから参加することにしたよ、エジプトでの仕事にも飽きてきたんでね」


 清海はその屈強な肉体を生かし、治安維持部隊として働くことで現地人や有力者から大きな信頼を得ていた。しかし元来冒険を愛していた彼は自らを閉じ込める檻でもあるエジプトから抜け出したいと考えていたのだ。


「六郎、お前もどうだ?どうせ忍術を使ってナイル川の水汲みでもしてて暇なんだろ?」


「水汲みを馬鹿にするな、俺の水汲み技術は芸術だぞ。俺は暇だがここを離れようとまでは思わない。そもそも古代の神秘なんて眉唾にしか思えないな」


 六郎は言った。


「まぁいいさ、気が向いたら志願してみるといい」清海はテーブルにドラクマを置いて立ち上がった。 「じゃあ六郎、またな」


「馬鹿め、忍びが「また」なんて言うべきじゃないだろう」


 六郎は去っていく友人の背中にそう言った


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