作戦会議。
「それで、どんな作戦にしますか?」
「簡単には、基本的にはさっき言った通り、残り4ペアぐらいまではこっちからは動かない様にする。で、仕掛けられたら仕留める」
「それは良いですけど、具体的には?どういった処に身を隠しておく、とかは?」
その質問に、コイツは考える気がないのかとイラついてしまう。
そのまま伝えてはダメだ。落ち着け。アイツと比べてはならない。まずはコイツの思考パターンを探るべきだ。
「……それじゃあ、悠真はどうするべきだと思う?」
一つ呼吸を置いて問いかける。
焦ってはいけない系統落ち着いて、慎重に。笹原麗亜らしくあれ、そう自分を叱咤する。
「そう、ですね……一ヶ所にとどまり続けるのはマズイと思います。かといって動き続けるのも、体力が減るので避けるべきかと。隠れるのは背後に逃げ場があり、なおかつある程度周りが見える場所。あるいは敵が攻撃してくる場所が限られている場所。ってところですか?」
「そう、それが妥当だね。動くのは1日2回。仕掛けられたときに相手を仕留められたら、あえて移動は行わない。どう?」
「そっか、そうですね。周りは戦った場所に、勝ったペアが残っているとはなかなか考えませんもんね。さすがです!!」
一体何がさすがだというのだろうか。わからない。彼の思考パターンが読み解けない。
さすがなのはアンタだよ。そう思うと口角が上がりそうになって、必死に抑える。
悠真の思考はよくわからない。言っていることは、この殺し合いを生き残るには真っ当なことだ。
言っていることは普通のことだ。ただ、普通だからこそ、彼の思考の根底を知る手がかりとしては薄い。
こんな相手は初めてだ。
もっと、もっと、もっと。
こんなにも惹かれるのはアイツ以来初めてだ。
面白い。単純に面白く感じてしまう。
こんな状況で無ければ良い友になれていたかもしれない。この状況が素晴らしく残念だよ、吉野悠真。
「あ、あの……どうかしましたか?」
どうやら不自然な沈黙を作ってしまっていたみたいで、悠真が不安そうに尋ねてくる。
それに対し思考を切り替えて何でもないと告げ、話題をそらす。
「それより、悠真の弾数はいくつあった?」
「えっと、フルで入れるとして4回入れ替えられます。両方ともそうです」
「てことは他のヒトたちもそうだと考えるべきだろうね。だとすると厄介かな……」
「え?どうしてですか?」
「連射も単発も出来る10発装填の銃と単発のみ可能な6発装填の銃があるとする。どう?」
急な質問に対して、少し戸惑った表情を見せる悠真を注視しながら答えを待つ。
すると、彼は恐る恐るといった風に口を開いた。
「連射も単発も出来る10発装填の銃が4回入れ替えられるとなると50発。けど、6発装填の銃が4回入れ替えられるとなると30発。つまり、10発装填の方が全て単発で使い切れば、6発装填の銃で8回ちょっと分撃てるって事ですよね?」
「そういう事。撃てる弾数が多ければそれだけ有利に進められる」
そう答えると、彼は大きくため息をついて、ベッドに横になった。
「あー!もう無理ですよ!!レイは刀オンリーだし、ヤバいですって!!俺たち負けますよ⁉︎」
「……噂、知ってるんじゃないの?」
「いや、知ってますって!黒い長髪の人間の美少女と茶髪の吸血鬼の美青年が去年、たった2人で最難関と言われた戦場の最終局面を制覇したって噂なら!!でも、それがなんだって言うんですか⁉︎」
「それ、刀と二丁拳銃でやったから」
「……は?」
「だから、刀と二丁拳銃」
沈黙が流れる。
知っていたのではなかったのか?詳しくは知らなかった、と言うところだろうか。
「美少女かどうかは知らないけど、その時というか基本刀1つで戦ってるし」
唖然といった表情を浮かべた悠真の顔が其処にはあった。
「それに、使い方さえ間違えなければ弾丸も斬れるから。だからさ……」
そのときの表情はどうだったのだろうか。想像することしか出来ないが、不敵な笑みとでも言うべき表情だったのではないだろうか。
「諦めるのは早いよ。最後までやんなきゃわからない、違う?」
空が明るくなっていく。其れは、まるで人工物かの様な色合いをしていた。そんなどうでも良いことにまで気が向いてしまう。
もうそろそろ下に降りるよ。そう悠真を急かして部屋を出る。背後から待って下さい!と慌てる音が聞こえ、緊張が少しだけ解れる。
あぁ、緊張していたのか。そのとき始めて自分の身体の強張りに気が付いた。
でも、もう大丈夫。笹原麗亜なら、私なら出来ると言い聞かせて階段を降りる。
私はアイツの、九条壱夜の為にも最後まで生き残らなければならない。例え、壱夜が死んでしまっても。
さぁ、殺し合いが……いや、ゲームマスターの意向に従えば、殺し愛が始まる。
まだ島を出るには早すぎる。