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サバイバルゲーム  作者: 玄峰 峡。
What is the meaning of this game?
3/5

同室者。

「あ、笹原さん!」


自分に振り分けられた番号、17番の部屋の扉を開けると、そこに居たのは吉野悠真だった。何故コイツが。

まあ良い。誰が相手でもやる事は変わらない。


「吉野さん、だっけ?貴方がペアなんだ」


言いながら部屋に入り、後ろ手に扉を閉める。

そして、吉野のいない側にあるベッドに腰掛けた。


「そう、みたいですね。僕、なんだか凄くドキドキしてて……凄く緊張してます。あ、でも笹原さんがペアの相手で良かったです!」


「そう。でも、よくそんな笑っていられるね。明日……4時間後には殺し合いが始まるってのに」


「え?だってゲームなんですよね?」


「そうやって甘く見てると痛い目見るんじゃない?」


ひとつため息をついて、ベッドの脇に立てかけてる、長いアタッシュケースの様な物に手を伸ばした。

袋から得物を取り出して立ち上がり、軽く振ってみる。感覚は悪くはない。もう少し重くても良い気はするが。


「あのー、それって……」


「日本刀。アイツが言ってた各自の得物。それが何?」


「いや、接近戦特化じゃないですか。不利そうだなぁって思って」


「そういう貴方も遠距離じゃなくて中距離型の銃。違う?」


「驚きました!そうですよ!どうしてわかったんですか⁉︎」


別にどうってことは無い。

コイツの場合、風向や、重力の影響まで正確に考えるのは多分無理。そこまで早く考えられないだろうし、何よりそもそも其の計算が出来ないだろう。島、というか森の中で扱うことになる訳だから、より計算が必要になる。

断言しよう。コイツにはライフルの類いは扱えない。


「別に。それより、森ん中で使うんだから、跳弾に気をつけて。身内の所為で死にたく無いから」


「わ、わかりました」


沈黙が流れる。

刀をケースの戻して、ベッドに腰掛ける。チラチラと吉野の視線を感じる。

再びため息をついて、吉野に向き直って口を開いた。


「明日からは人数が減るまではこっちからの攻撃はしない。下手に動くと近くにいる奴に勘付かれて殺られる。そうだね、残り4ペアあたりまではそれでいく。ただし、攻撃を仕掛けられたら全力で応戦する。

異論は?」


「ありません」


「そう。だったら、吉野さんの武器を見せて。ペアの武器を知ってた方が作戦を練りやすいから」


「わかりました」


そう言って彼が取り出したのは、サブマシンガンと、ハンドガン。

サブマシンガンの方がメイン、ハンドガンの方をサブとして使うのだろう。


「両方ともソ連の、か……」


「凄いですね!どうして分かったんですか?」


「それくらいの知識はあるし、アイツが……


「アイツ?アイツって誰ですか?」


「いや、なんでもない」


壱夜の話をするのは得策ではない。直感的にそう感じて口を閉ざす。コイツは、壱夜の話を聞き出そうとしている。

コイツは馬鹿の初心者を装っているだけだ。話すべきではない。壱夜と2人で勝つ為にも。


「まぁ、良いですけど。それより、笹原さんのメインアーツはさっきの刀だとして、サブアーツは何ですか?」


刀をケースから再び取り出して吉野に投げ渡す。鞘に収まった刀は綺麗な弧を描いて吉野の手に収まった。

へ?と間抜けな声を出す吉野に3度目のため息をついて答える。


「貴方が言ったよ、サブが見たいって。メインの武器もなにも、それ」


「エェッ⁉︎笹原さん、刀だけなんですか⁉︎嘘でしょ⁉︎」


4度目のため息をついた。

吉野はそれを肯定と取ったのか、僕が頑張りますね!!なんて言って笑った。

少なくとも、コイツは緊張なんてものを知らないんだろう。羨ましい。初めて吉野悠真という男を羨ましく感じた。


その感情を振り払う為に、吉野悠真にこれ以上感情を抱かない為に、もう一度深く息を吐き立ち上がった。


「どうしたんですか?」


その問いに答えずに、彼の手から刀を奪う様にして取ろうとすると、なんの抵抗もなく彼は刀を手放した。

そのまま刀を握り、鞘から抜いて切っ先を向ける。


「油断するな。ペアと言っても、仲間じゃない。油断を見せてみろ。その瞬間、斬るから」


彼に、というよりかは、自分に自分に向けて言った言葉。それを心の中で反芻する。

忘れるな。コイツはペアなだけであって、仲間でも、ましてや味方でも何でもない。敵だ。吉野悠真は、ペアという名の敵なのだ。心を許すべき相手ではない。

笹原麗亜の仲間はアイツだけだ。笹原麗亜が信用するのはアイツだけだ。笹原麗亜が心を許すのはアイツだけだ。笹原麗亜が背中を預けるのはアイツ……九条壱夜ただ1人だ。

そう、壱夜だけ。


表情を変えずに首元を真っ直ぐに狙う様子に、コクコクと慌てて首を縦に振る吉野。

それを見て刀を鞘に戻し、再びベッドに深く腰掛ける。


それじゃあ、ゲームを始めよう。まずは、残り2ペアまで残ること。そこまでの作戦を考えよう。コイツとともに。

そこから先に、コイツの行動は不要だ。そこから先は壱夜がいるから。コイツに中身を伝える必要は無い。それどころか、伝えたら此方が潰れる。


「じゃあ、改めて。よろしく、悠真。今からゲームが、どちらかが死ぬまでは名前で呼ぶから、貴方も好きなように……なるべく短い音で呼んで。あと、敬語もいらない。情報伝達にロスが出るから」


「分かりました!あ、いや、わかった……です」


「……無理な様なら別に良い」


「すみません。えっと、じゃあ、レイって呼んで良いですか?」


よりにもよってアイツと同じ呼び方か。まぁ良い。やることは変わらないなら、その程度は甘んじて受け入れよう。


「良いよ。それじゃあ、作戦について話そうか。最後まで2人で残らないと生き残るのは難しいだろうから、裏切りの心配はいらない」


「さっき、油断を見せたら斬るって言われましたけどね……」


「悠真が好きありすぎだからでしょ。その話はもう良いから。細かい作戦を早く決めよう」


そう、時間はもう少ない。あと3時間と15分で日付が変わる。

それまでに作戦を練らなくては。



コイツを殺して、アイツと2人で勝つ為に。

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