Are you ready?Let’s start .
その洋館には既に16人が揃っていた。
服装や人種は様々で、共通点があるとすれば、人間も吸血鬼も、ゾンビもそれぞれが6人ずつであるということくらいだ。
「それじゃあ、また後で」
壱夜にそう告げて、人間用の食事の並ぶ長テーブルへ向かった。
勿論彼は、吸血鬼用の食事の用意されたテーブルに。
「今日は。貴女が噂の方ですか?」
「どんな噂かは知らないけど、そうなんじゃない? 笹原。笹原 麗亜。貴方は?」
人懐っこそうな笑みを浮かべて話しかけてきた、茶色の瞳をした人間の彼は、慌てたように自己紹介をした。
「僕は 悠真。吉野 悠真です」
彼……吉野は柔らかく微笑んだ。
「そう。よろしく、吉野さん」
「僕、こういうのは今日が初めてで……しかも、日本名の方が僕以外いなくて。ちょっと不安だったんです。でも、貴女も日本名でよかったです。貴女のこと噂でしか知らなくて……でも、ちょっとだけ親近感が湧きました!」
「よかったね。じゃあ」
こういうヒトは嫌いだ。
こっちの気も知らないで、勝手にズカズカと近づいてくる。
「あ、待ってください!一緒に食事をしませんか?」
「もうそんな時間ないと思うけど」
突如、部屋のライトが落ち、壇上にのみ灯りが集められた。
そこに居たのは……
人形だった。
それも可愛らしい真っ白なウサギの。
『レディースアンドジェントルメン!!こんにちは。
ボクは君たちに手紙を送ったゲームマスターだよ。』
ボーカロイドを彷彿とさせる機械音で、ソレは名乗った。
きっかり30分。
最後の1人……否、2人がこの洋館に足を踏み入れてから、きっかり30分後の出来事だった。
『早速なんだケドー……ゲームの説明を始めるよー!!
まず、皆さんにして貰うのはコロシアイゲームです!!あ、殺し合うんじやなくて、ちゃんと殺し愛してね!!』
ハートでも飛んできそうな忌々しい言葉に声。
ソレは何度聞いてもイライラする。
『ルールはとっても簡単!まず、2人1組になって貰って……
最後の1人になるまでヒト殺しをして貰いまーす。勝者はたった1人でーす!つ・ま・り、最後はペアった仲間を殺すっつーことです!!』
ペアで戦い勝者は1人。
壱夜を盗み見ると、向こうも視線を合わせてきて、小さく頷いた。
『最初に殺しちゃダメだよ!
ペアの片方が死ぬと、他のペアに生きてる方の位置情報を送っちゃうからね!!
まぁ、質問ごとはないだろうし、ペアを決めましょー!!
ささ、くじを引いてー!!』
くじを引かずとも、結果は既に決まっている。
半ば諦めたように、人形の前にある人間用のくじを引気に入った。
もちろん壱夜も、吸血鬼用のくじを引きに。
『みんなくじをちゃんと引いたかな?
それじゃあ、今日はその人と親睦を深めてね!二階に、番号の付いた部屋があるから、自分の引いた番号の部屋に行ってね!!
それで、今夜はその人と仲良くなってね!!
協力して殺すのも、相手を裏切るのにも、ペアの相手を知ることが重要だからね』
人形がニヤリと嗤った。
あたりが静寂に包まれる。
一人、また一人と、大広間の出口へと歩き出す。
そして、最初の一人が、
いつのまにか閉じられていたその扉の取っ手に触れた。
『あ、そうそう。言い忘れてたよ!部屋番号が1から9のヒトはこの部屋を出て右の階段、10から18のヒトは左の階段を使ってね!!あとね!』
次の言葉は知っている。
『「「君たちの最も得意な得物は、部屋にちゃんと用意しているからね」」!!』
人形と一緒に小さく呟く。
もちろん、壱夜も一緒に。
ここからは別行動。
でも、大丈夫。
絶対に、2人で勝つ。
その方法は存在する。それに、2人なら出来る。
勝者が1人?
そんなこと知るか。絶対に2人で勝ってやる。
みんなが大広間を出終わって、最後に残ったのは壱夜と2人だった。
「やってやろうね、レイ」
「勿論」
小さな声で会話を交わし、2人で笑みを浮かべた。
同じタイミングで大広間を抜けると、背後で扉が大きな音を立てて閉まった。
互いに背を向けて自分たちの引いた部屋へと向かう。
口元には笑みが浮かんでいるだろう。それも、不敵な。
止めようにも止められない。笑みが抑えられない。
きっとそれは、壱夜も同じだろう。
壱夜もきっと抑えられない笑みを浮かべているだろう。
さぁ、ここからは個人戦だ。
2人で勝つ為にお互い頑張ろう。
そんな思いも込めて、口を動かした。
壱夜も何か呟いた気がしたが、何も聞こえなかった。きっと壱夜も同じく、聞こえなかっただろう。
しかし、そんなことはどうでも良い。
2人の思いが同じであれば、それで良いのだ。
「Are you ready?Let’s start. 」