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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

DVにアイを

作者: 夢野亜樹

向かう電車で人身事故があり、美香はタクシーで目的地まで向かった。間に合うかな。白く細い腕を傾け時間を確認する。この腕時計は彼氏の雅人が誕生日プレゼントに買ってくれたものだ。美香にとっては高校3年生になって出来た初めての彼氏で4つ上の雅人は顔が整っていて雑誌とかに出てる人みたいで私にはもったいない。今日はそんな雅人と一週間ぶりに会うのだった。

「ここらで止めてください。」

会計を済ませていつも待ち合わせに使っている喫茶店に向かう。金曜日のこの時間には仕事終わりのサラリーマンや大学生が溢れている。居酒屋やクラブが立ち並ぶ通りを少し離れるとその店が見えてくる。昨日買ったばかりの黒のヒールが踵に擦れて痛い。けど雅人に会うのだからこんなつまらない事でシラケさせてはダメだ。店の扉を開けると奥の席に銀色の髪が見える。コツコツとタイルを鳴らしていくと同時に鼓動も少し早くなる。横顔も相変わらず格好良いなと改めて思う。

「お待たせ」

スマホでゲームをやっていた雅人が顔を上げ座った私を見る。

「3分遅刻。」

私は机の下で時計を確認するとやはり遅れてしまっていた。

「じゃあ、俺ん家行くか?」

「うん」

もう2年も付き合っているけど彼の家に行くのはいつも緊張する。コーヒーを飲んだ雅人立ったのを見て私も腰を浮かせる。店から10分もしないで着くアパートが雅人が1人暮らしをしている家だ。

「お邪魔します」

部屋入ると雅人の目付きが鋭くなる。まぁいつもの事だ。

「3分遅刻だから、3回でいい」

左頬に痛みがはしる。痛いよと心の中で叫ぶ。次は右の大腿部。ここはもう何ヶ所もあざがある。最後はどこだろう。どこだとしても避けてはダメだ。肩を殴られた衝撃でソファに倒れる。

「ごめん、美香。」

「良いんだよ、雅人は悪くないもん」

雅人の薄い唇が私の頬、それから唇に移った。

学生や社会人にとっての金曜日の夜は長い。

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