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夢物語

白の領域

作者: 五月憂

 部屋に取り付けられた趣のある木製のアウトスイング窓。不思議と温かさと落ち着きを与えてくれるそんな窓は、誰がそうしたのか全開に開けられている。そして、そこから吹き込む風は、白いレースのカーテンを優しく揺らす。

 まぶしっ

 外から差し込む光を顔に受け、僕はゆっくりと目を覚ます。

 ……ここ、どこだ

 ベッドから半身を起こして思う。

 床も壁も天井も真っ白の部屋。その白さは、床と壁の境界線すら見分けがつかない程、無限の空間が広がっているように錯覚する程の白さだ。そんな部屋には、一つの木製のアウトスイング窓と自分が眠っていた白いベッドのみ設置されている。

 全く知らない部屋。来たことも見たこともない部屋。それなのに、なぜか長年暮らしてきたかのように落ち着く

 そんな不思議な感覚に私は囚われていた。

 「うーん」

 不意にすぐ隣から小さな声が上がり、ごそっと掛布団が動いた。

 横を見ると、一人の少女が私に背を向ける形で眠っていた。

 少女は、小柄で細見、褐色の肌と肩まである白髪がとても印象的だ。

 ちなみに、肌は焼いたというよりは地が黒い感じで、肩まである白髪は寝癖なのか癖毛なのか外側にたくさんはねている。なんというか、子供っぽい印象を与えられた。

 この子……誰だ

 見たことのない少女。しかし、自分はこの少女を知っている。あったことがないはずなのに、長く一緒にいたような感覚。

 曖昧で、おぼろげで、不鮮明な感覚。

 だからだろうか、こんなシチュエーション普段の私なら焦るだろうがこの時は落ち着き払っていた。

 「……寒っ」

 少女は、ぶるっと体を震わせながら小さな声で言った。

 少女の格好は、薄水色のタンクトップとショートパンツのラフというか無防備というか、とにかく全体的に薄着で露出の多い格好だった。

 それに加えて、私が起きた時に掛布団が一部逸れた状態になっていた。

 そりゃ、寒いわ

 私は、すっと掛布団を少女に掛けてあげた。

 「……ありがと」

 意識的に言ったのか寝言なのか、少女は消え入りそうな声で短く言った。

 その言葉を聞いて、私は今まで感じたことのない衝動に駆られた。

 胸がじんわりと熱くなっていった。まるで彼女の言葉を咀嚼し、ゆっくりゆっくりと全身に駆け巡らせていくかのように。また、それとは相対し体中の熱は一気に上昇した。自分で見ることはできないが、おそらく顔は真っ赤になっているだろう。

 なんなんだろうこの気持ち

 理性という名の抑止力はドロドロに溶け、ただ少女に近づきたい。少女の近くに居たい。そんな気持で私は染まり満たされていくのを実感した。

 私は、すっと横になって掛布団の中に入り、後ろから少女を優しく抱きしめた。

 華奢な少女の体は、力を入れたら壊れてしまいそうなほど柔らかく、そして温かかった。

 ……落ち着く

 ふわふわと柔らかな感覚に全身が包まれ、安心する

 母親に抱かれた赤ん坊はこんな感覚なのだろうかと、ふとなぜかそんなことを考える。

 そんな私に対して、少女は少し擽ったそうにしながら言った。

 


 「……あったかい――」


 はじめましての方が多いと思います五月憂です。

 白の領域は、私が見た夢を忠実に書いた作品となっています。目的としては、見たもの感じたものを表現する練習として(練習と言っても一生懸命)書きました。

 今後も、不定期ですが、実際に見た夢について書けたら書こうと思っているのでよろしくお願いします。

 また、他作品も書いているので読んでいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 不思議な一幕でした。何というか、癒されるような感じです。 [気になる点] 途中、「僕」だった一人称が「私」になってたのは意図してのことでしょうか。 私自身も執筆中によく悩んで付けたり消し…
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