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第4話 大和サラ(1)

あ~あ、今朝は失敗しちゃったなぁ……

よりにもよってこんな地味な下着の時にお兄ちゃんに見られるなんて。

私だってもっと可愛い下着ぐらい持ってるんだから。

それを見たらお兄ちゃんだって絶対メロメロになるに決まってるわ!

ま、まぁ……あんな恥ずかしい思いはもう懲り懲りだけど……


それよりも、私が学校の男子達から告白されてるって聞いた時のあの薄~いリアクションは何!?

可愛い妹のことが心配じゃないわけ!?

私がどこの馬の骨とも知らない男を家に連れてきてもいいっての!?


いや、まぁ、3人から告白されたっていうのはちょっと盛ったんだけどね。

それでも1人に告白されたのは本当だし!

まぁ、女子なら誰にでも声を掛けるようなチャラ~いサッカー部の先輩だったけど……


な~にが「俺のオンナにしてやるよ」よ!

こっちから願い下げだっつーの!


あんなチャラ男なんかより、お兄ちゃんの方がよっぽど……って、何考えてるの私!?

ち、違うわよ!

別にお兄ちゃんのことなんてなんとも……!


そりゃ、これからしばらく2人っきりになるわけだし、今朝みたいに喧嘩ばっかりなのもアレだから仲良くしてあげようかなとは思うけど。


って、別に何も意識するようなことじゃないじゃない。

今晩のおかずはお兄ちゃんの好きなコロッケにするつもりだけど、別にそれだって特に意味は無いんだから!

いつも通り、いつも通り。


「ただいまー……って、あれ?」


玄関を開けると、見覚えのあるお兄ちゃんの靴の他に知らない靴が2足。

友達でも来てるのかな?

でも、これって女物の靴だよね……


「お兄ちゃん? 誰か来てるの――っ!」


リビングに入った私は眼を疑った。

何、この状況!?

2人の女の人がお兄ちゃんの両腕を掴んで引っ張り合っている。


「ええい! いちいちベタベタと抱き付きやがって! いい加減タケルから離れろ!」


「貴方こそ、毎度毎度邪魔ばかりして! タケル様は私と夫婦になりますの!」


「ふざけんな! タケルはアタイと一緒になるんだよ!」


「そんなこと言って、貴方自身はタケル様を愛しているんですの? わたくしはタケル様を愛しておりますわ!」


「うっ……それは……」


「分かったらその汚らわしい手を離しなさい!」


「う、うるさい! 別にあ、愛してなんかなくても、お前みたいな淫乱腹黒女にタケルを渡すわけにはいかねーんだよ!」


「痛い痛い痛い! 2人とも離してくれよ~! あ、サラ助けてくれ~!」


もう一度言うけど、何この状況?

なんか昔、再放送の大岡越前でこんなシーンを見た気がする。

確か、産みの親と育ての親が子供の両腕を引っ張り合って争っていた話だ。


でも話の内容からすると、これっていわゆる『三角関係のもつれ』ってやつよね。

思いっきり修羅場ってる状況よね。

え、誰が?

お兄ちゃんが?


しかもよく見たら1人は金髪ですごくスタイルも良くて、びっくりする程の美人だ。

赤毛の女の子は私と同い年ぐらいかな。

でも可愛らしい顔立ちをしている。

で、その2人が取り合っているのがお兄ちゃん?

なんでぇ!?


「助けてくれよサラ~!」


お兄ちゃんが苦悶の表情を浮かべている。

2人がヒートアップし過ぎて、本当に痛いみたいだ。

これが大岡越前なら、苦しむ我が子の姿に耐えられなくなって手を離した方が勝者みたいな感じになるけど、この2人は一向に手を離す気配がない。


「あっ、お兄ちゃんから離れ――」


はっと我に返った私は、慌ててお兄ちゃんを助けようと3人に駆け寄ろうとしたけど、その時何かに躓いて思いっきりバランスを崩してしまった。


どうやら床に転がっていたお兄ちゃんの鞄のようだ。

完全に体制を崩した私が倒れていく視線の先にはテーブルの角!


あれ?

なんでこんなに景色がスローモーションなの?

もしかして私、このままテーブルの角に頭をぶつけて死ぬ運命!?

死ぬ瞬間って走馬灯が見えるっていうけど特に何も見えないな。

っていうか、走馬灯って何だろ。


「サラっ!」


あぁ、お兄ちゃんの声が聞こえる。

お兄ちゃんとの最後の会話が今朝の喧嘩だなんて最悪。

そして最後に見たお兄ちゃんの姿が女の子に囲まれてる姿だなんてもっと最悪!


テーブルの角がもう目前に迫ってる。

私のたった十二年余りの人生がこれで儚く終わってしまうのね……

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