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第9話 寺田ケンジ(1)

やぁ、俺の名前は寺田ケンジ。

超絶イケメンのプレイボーイだ。

どれくらいイケメンかって?

そうだなぁ、向井理と佐藤健を足して2で割りつつそこに斎藤工と福山雅治のエッセンスを加えて全体をトム・クルーズ風味に仕上げた感じを想像してくれ。


そんなイケメンの俺は今、ミカエラちゃん・天宮・(かんなぎ)という、学年でも間違いなくトップクラスであろう美少女達に囲まれて昼休みを過ごしている。

おっと、ベルちゃんを忘れていた。

確かにベルちゃんも可愛いが、残念ながら俺にはそっちの趣味はないんだ。


何故俺がこんな羨ましい状況にあるのか、それを説明する前にこの男を紹介しなければならないだろう。

今、俺の隣で黙々と弁当を食べている……振りをしながらチラチラと横目でこのグループの中の1人を見ている男(こっそりやっているつもりなのだろうか?)、大和タケルだ。


この男、俺の小学校以来の親友なのだが、超絶イケメンプレイボーイの俺様と違って、今まで女子に全くと言っていいほど縁がない。

それどころか、こうして女子と普通に話している姿を見るのもここ最近の事だ。


我が友ながら情けない限りだが、しかしこの平凡が服着て歩いているような男に信じられない事件が起こった!


一週間前、突如として我が校に転入してきた謎の美少女ミカエラちゃん!

……と、もう1人ベルちゃん。


ミカエラちゃんを観た瞬間、ビビっときたね。

もう間違いなく運命の出会いだと感じたわけさ。

俺のこれまでの人生はこのコに出会うためにあったんだと!


当然クラスの男達は大騒ぎ。

待て待てお前ら、このコはもうすでに俺と付き合うことが決まっているんだよ。


「心に決めた方ならおりますわ」


ミカエラちゃんのこの言葉に、男共のテンションが急激に下がっていく。

当然だ、彼女は俺の運命の人なんだから。


ほら、彼女の潤んだ瞳がこっちを向いてる。

悪いね、モブ共。

恨むならこの超絶イケメンと同じ時代に生まれたことを恨みな。


彼女の視線に優しく微笑みを返す。

しかしよく見ると、彼女の視線は俺のすぐ隣に座る男に向かっていた。

そう、大和タケルだ。


どういうわけだか知らないが、彼女はタケルの許嫁だという。

ちなみにもう1人のベルちゃんもタケルの許嫁だと主張するが、それは別にどうでもいい。


クラスの男共が一斉にタケルに殺意を抱く。

10年近い付き合いのある俺ですら、さすがに今回は殺してやりたいと思ってしまった。


ま、俺は他の余裕のない男共と違って、いつまでも嫉妬に狂うなんてみっともない真似はしないけどね。

何より、気苦労から日に日にやつれていくタケルを見ていると、嫉妬よりもなんか同情の方が強くなってきたのだ。


俺は長い付き合いだからタケルの性格をよく知っている。

ミカエラちゃんのような美女に毎日のように迫られながら、なんだかんだ言ってその誘惑を拒み続けているのは、天宮に対する一途な想いからだ。


中学時代からずっと片思いし続けて、未だに告白もしないのはヘタレ以外の何物でもないのだろうが、それでも易々と他の女の子に(なび)かないんだから大したものだと思う。

しかも普通の男だったら2秒で落ちてしまうだろうミカエラちゃんの誘惑まで振り切っているのだから、感心というよりちょっと引くほどだ。


そんな馬鹿みたいに純情で一途な奴だからこそ、俺はこいつの恋を応援したくなるんだ。


まぁ、しかし本当は応援なんかする必要ないんだけどね。

タケルは全く気付いていないけど、実は天宮の方だって密かにタケルに想いを寄せているのはバレバレだ。

なんでお互いに気付かないのか不思議だけど、それを教えてやるなんて野暮な真似はしないぜ。

こういうことは、悩みに悩んで自分達で答えを出さなければ意味がないからね。

……なんてね、本当はこっちの方が見てて面白いからなんだけど。

あと、こいつに彼女ができるのはなんかムカつく!

おっと、つい本音が漏れてしまった……


「……おい……おい!」


ん?


「何、自分の世界に浸ってんだよ? 俺の話聞いてたか?」


ああ、タケルか。

ごめん、全く聞いてなかった。


「頼むぞ、おい。俺だけじゃこの空気は手に負えないからお前を連れてきたんだぞ」


確かに同じ輪の中にいるものの、奥手で女の子の扱いなんて全く心得てない童貞ヘタレ男のタケルには、今目の前で繰り広げられているガールズトークに割って入るなんて芸当は到底到底――


「おい、そこまで言うことねーだろ」


そこで、この超絶イケメンのプレイボーイである俺様に助けを求めてきたってわけだ。


「誰が超絶イケメンのプレイボーイだって?」


もちろん、この俺だが?


「…………」


そんな呆れた顔で見るなよぉ。

ちょっと盛っただけだろ?


「いや、ちょっとじゃねーだろ。お前が女子と仲良くしてるところなんて見たことねーよ」


おいおい、親友のくせに俺のコミュニケーション能力を知らんのか。

仕方ねーなぁ、ちょっと親友のために一肌脱ぎますか。

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