8話 特別編 【少年のモノガタリ】
-あそこの奥様お亡くなりになられたらしいわね-
-また能力者のしわざらしいわよ-
-物騒な世の中ね-
病院で少年は死んでいた
心臓は動いている…脈も正常…
体は生きている…心が死んでしまったのだ
少年の目は色を失い虚空見つめていた
彼が事件のことを聞かされたのは寒い冬の日だった
警察が家まで来て丁寧に淡々と説明をして帰っていった
警察がいなくなってもしばらく動けなかった
正体不明の能力者による犯行
少年はもう何も考えれなくなっていた
目の前が真っ白になり膝から崩れ落ち…
そのまま気を失った
少年はもうこんな世界のことなんてどうでもよかった
…母さんに会いたい…
少年は呟いた
コンコン…ノックの音が響く
『失礼するよ…君が能力者のせいでお母さんを亡くしたっていう子だね…?』
見たことのない男が入ってきた
メガネをかけた細身の高身長な男だった
服は黒いコートを着ていた
『まずは自己紹介から…私の名前はウエムラ…君の名前は…?』
少年に声は届いていなかった
本能が聞くことをやめていた
『…こまったなぁ…まぁ話を進めるよ…?僕はあるグループを持っているんだけどそのスカウトに来たんだ』
”能力者のグループ”…君はそれに選ばれた
ピクッ…少年の体が少し動いた
『君のお母さんを殺めたのは能力者だ…能力者のことは憎いと思う…だが君にも能力があったんだ…』
お母さんの仇がとりたいかい…?
ウエムラは手を差し出してきた
『私たちのグループに入ってくれるかな…?』
少年は口を開いた
『…そのグループにはいったら…お母さんを殺したやつに会えますか…?』
『それは君次第じゃないかな?君の未来は君が作るんだ』
少年も弱々しい動きで手を差し出す
『交渉成立だな…ところで君の名前を伺えてなかった…よければ教えてくれないか?』
『ムツキ…僕の名前はムツキだ!』