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009

拳銃どころか、警棒すらロクに扱えなさそうな少女にライフルを持たせてどうにかなるものでもない。だが、丸腰よりはましだ。

ちなみに彼女は既に軍の戦闘服に着替えている、いくら最近のボディアーマーがサイズ調節可能とは言え、非常に小柄な彼女にサイズを合わせるのは苦労したが、そこそこサマになっていた。

AR15のハンドガード前方を掴み、見様見真似のコスタ撃ちで数発放ってみる。使えている気は微塵もしないが、少なくとも、思ったより反動は少ない。

「おうおう、戦車兵様が似合わねえ事やってんな?」

そんな声と共に鼓膜に届く、スプレーのような発砲音。MP5SD系の火器?という事は……。

「SWATがやっと来た様っすね……」

「やっとこさ出動許可が下りたもんでな。作戦通り行くぞ!展望塔を確保しつつ展望デッキへ向かう!」

駆け寄ってきて威勢良く喋る宮前先輩。後半は彼の小隊へ向けての指示だろう。

「俺達も行きますよ」

「中尉殿がそんな歩兵の真似事演じる必要は無えんだぜ?」

「軍人はオモチャ壊されて警察の後ろで震えてました、なんて噂立てられちゃ敵わないっすよ。一応陸軍代表としてここに居るんで」

「止めねえが、迷惑は掛けんなよ?」

「勿論!笹原、椎名、行くぞ!間違っても味方撃つんじゃねえぞ」

こんなことなら降車戦闘のイロハでも学んでおくんだった、と後悔が頭をよぎる。だが今更言ったところで始まらない。

SWAT隊員の動きを観察する。遮蔽物から遮蔽物へ、可能な限り姿を晒さず素早く移動。怪しそうな物体には容赦なく銃撃を。味方同士でカバーし合い、決して死角を作らぬよう行動する。

展望デッキとターミナルビルを接続する巨大な円筒状の展望塔内部には、エスカレーターが互い違いに四本走っている。封鎖されているのではないかと懸念したが、意外にも障害物ひとつなく、綺麗なままだった。恐らくテロリスト側も、ここを通路として利用していたのだろう。

現在俺達は、先頭を切るSWAT隊員の一〇メートル程後方にいる。MP5より大威力のアサルトライフルで彼らに援護射撃を与えつつ、彼らが撃ち漏らした敵を排除することを目的とした配置だ。

階段での強固な抵抗が予想されるとのことで、最終手段としてグレネードランチャーも携行していたSWATだったが、意外にも階段の制圧はあっさり済んだ。テロリスト数人を射殺したのみで、大した被害を出すこともなく、展望デッキ入口まで到達できた。

「問題はここからか……」

デッキ入口を閉ざす防火扉を見た瞬間、なんとなくそんな言葉が漏れた。

「ああ、何が仕掛けられてるか分からん上に人質がいるからな。爆破班・耐爆楯・スタングレネード前へ、用のない者は下がれ!」

彼の指示に従い、見るからに頑丈そうな楯を持った隊員が数人、防火扉の数メートル前で陣を組んだ。そしてその陰に隠れるように、三人の隊員が閃光手榴弾片手に中腰姿勢を取る。別の隊員が、防火扉のロック部分に爆薬らしきものを設置し始めた。無論、俺達に出来ることは何もないので、他の隊員と共にエスカレーターへと身を潜める。

階下からは、SWATの別働隊が出発ロビーを制圧する銃撃音が聞こえていた。

これまでに倒したのが約二〇名。787に一〇名、ターミナルビルに伏兵として一〇名と考えて、この先にいるのは一〇名ほどか?

「目ェ瞑って耳塞げ、発破ッ!」

バガン!

轟音が一瞬だけ響く。こじ開けられたドアの隙間から閃光手榴弾が投じられ、凄まじい閃光と轟音が辺りを埋め尽くした。

敵がひるんだこの一瞬を逃すわけには行かない。SWAT隊員が立ち上がり、室内へと駆け込む。

次の瞬間、今度こそ鼓膜が破れるのではないかと思うほどの大音響が轟いた。埃が舞い、辺りの視界が完全に奪われる。

煙の向こうから銃撃が始まった。だが、さすがにAKのマズルフラッシュは眩しすぎる。SWAT隊員数人がMP5を叩き込む。それで火点は沈黙した。民間人の悲鳴が煩い。

少し視界が回復し始めた。防火扉のあった辺りに目を凝らす。

SWAT隊員が数名、折り重なるように倒れていた。床に広がる夥しい量の血液。そして、九〇度開いた防火扉に刻まれた無数の穴。

散弾銃?いや、クレイモア地雷だ!

完全にブービートラップに出鼻を挫かれる形となってしまった。が、万策尽きたわけではない。

「先輩、スモークグレネードを」

「言われんでもやるさ!」

生き残ったSWAT隊員は一〇人ほど。各員が一発ずつ携行する発煙手榴弾を投じる。白い煙が吹き出し、回復しかけていた視界がさらに悪化した。

「負傷者から暗視ゴーグルを借りてきました、何なら使ってやってください」

一人の隊員が、暗視ゴーグルをいくつかヘルメットごと持ってきてくれた。有り難く借り受けておく。これは無傷で返さねば。

「GO!」

その一言で全員が動いた。軍用のものと違い、SWATの発煙手榴弾は赤外線を透過する。お陰でスモークの中でも、通常と変わらない視界を確保できた。

膝立ちでAKを構えていたテロリストへ数発叩き込む。人質の中で銃を持っているような、対処の難しい敵は無理せずSWATに任せた。俺が撃っても人質を殺傷するだけだ。

自販機の傍を駆け抜けようとした瞬間、その陰から何者かが殴りかかってきた。咄嗟に出した左腕が運良く拳を受け止める。

格闘マンガの主人公ならここで“銃なんて捨ててかかってこい”とばかりにファイティングポーズを取るところだろうが、生憎俺はそんな熱い性格ではない。右手のAR15で腹に数発撃ち込んだ。

倒れ込んだ相手を見下ろす。東洋人系の顔だ。

リーダーは日本語を喋ると聞いていたが、ひょっとして、こいつが首謀者か?


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